現在
そこから約10年間。
ひたすら引越しを繰り返してきた。人の何倍も、転居を重ねてきた。
電話番号も何度も変えた。誰にも知らせなかった。
その結果、学生時代の友人とは誰ひとりとして繋がっていない。
連絡手段も、記憶も、すべてを断ち切った。
その10年の間に、ユリの心は壊れていった。
眠れず、食べられず、自分を傷つけずにはいられなかった。
何度も、何度も、死のうとした。
でも、死にきれなかった。
それでも生きていたのは、“死ぬ勇気すらなかったから”かもしれない。
精神科に通い、ついには障害者手帳を持つことになった。
「もうまともに働けない」と医師に言われた時、安心と絶望が同時に押し寄せた。
ああ、これでもう“普通”には戻れないんだ、と。
それでも今、ユリには結婚を考えたい相手がいる。
支えてくれて、理解してくれて、「一緒に生きよう」と言ってくれる人だ。
でも、アラサーになっても貯金もなく、仕事もできず、引越し続きの人生を送ってきた自分には、堂々と未来を語る自信が持てない。
幸せになりたいと思っているのに、その幸せを掴んでいいのか、わからない。
だから願う。
もし、これを読んでいる人の中に、過去の自分のような境遇にいる人がいるのなら。
お願いだから――私のようにならないでほしい。
誰かに助けを求めてほしい。
逃げられるうちに、心が壊れる前に。
「誰も最後まで助けてはくれない」
それでも、救われる“途中”には、ほんの少しだけ光があるかもしれないから。




