第25話 大賢者"イフリート"
春の訪れ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(ノースタウン)
5月のノースタウンは雪が溶け始め、昼間はようやく温かさを感じるようになってきた。
緑聖国での事件後、シヴァが目覚めてから1週間ですぐにノースタウンへ帰還した。
シヴァの共同住宅では今日も明るい話題で盛り上がっていると思われた...。
「ソフィア!死ぬなー!」
ソフィアの部屋でシヴァは大袈裟に泣きながらベッドにしがみついていた。
「ちょっとシヴァ!?ふざけたこと言わないでよ!」
シヴァの横で、運転手を任されているカリティアも同じように泣いていた。
「俺...、俺、何か作ってくるっス!」
エドは涙を拭いながら部屋を飛び出して行った。
「ちょっと落ち着け、お前ら。ただの熱だろ?安心しろ」
ゾロロはソフィアの部屋の隅で腕組みをして立っている。
紅覇は氷を詰めた袋でソフィアの頭を冷やし続けていた。
ソフィアは布団の中に入ってかなり顔を赤くして弱っていた。
「大丈夫です...。少し体が熱いだけですから...、動け...」
「ねえ、動かないでって言ったよね?」
希麗は笑顔の奥に怒った目つきでソフィアの肩を抑えてベッドから起き上がらせないようにする。
「はい、すみません...」
ソフィアは黙ってベッドの中にいることが賢明だと判断する。
そう、これは何気ない日常に起きた事件である。
ここ数日、ソフィアの様子がおかしいと言い続けたシヴァが、部屋の扉を開けると顔を真っ赤にしたソフィアが信じられない汗をかいて寝ていたのである。
そこで急遽、希麗がソフィアの体温を測ると"40度"という信じられない高温だったことが判明して今に至る...。
カリティアと紅覇は希麗の指示に従ってソフィアの体を拭くことにする為、男どもは一旦部屋を退室する。
リビングのソファに座ったゾロロは、部屋の前でそわそわするシヴァに話しかける。
「落ち着け。ただの熱だ、お前もあるだろ?」
シヴァはゾロロに向かって首を横に振る。
「ある訳ないさ。風邪も引いたことない」
ゾロロは健康過ぎるシヴァに、少し恐怖を感じる。
ゾロロは少し考えてからシヴァに話しかける。
「シヴァ、お前何かしたか?」
シヴァはゾロロの目を見て尋ねる。
「えっ...?何かしたとはどういうことさ...!?」
ゾロロはシヴァに指さして話し始める。
「お前は炎の精霊魔法使いだ。つまり、ソフィアはシヴァと濃厚な接触があった場合...、分かるか?」
シヴァはゾロロに両手を交差させて憶測を否定する。
「な、な、何を言っているのさ!?ぼ、僕は何も知らないさ!濃厚な接触?何考えているのさ!」
ゾロロは立ち上がってシヴァの目の前まで近づく。
「もし、ソフィアの体に変化が起きているのだとしたら...。これは大問題だぞ?」
シヴァはゾロロのことを呆れた顔で見つめる。
「いや、何考えているのさ。そんなこと、するはずがないだろ?」
ゾロロとシヴァが話していると、ソフィアの部屋の扉が開く。
部屋から出てきた紅覇が2人に話しかける。
「入っていいよ」
シヴァとゾロロは紅覇の言われた通りソフィアの部屋の中に入る。
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(ソフィアの部屋)
シヴァは右手でソフィアの右手を握りしめる。
「ソフィア、どうだい?」
ソフィアのシヴァの手を握る力はかなり弱かった。
「いえ、問題ないのですが、少し体が熱くて...。任務には行けます...」
希麗はシヴァの反対側からソフィアを笑顔で睨みつける。
「はい?行かせませんよ、ソフィアさん」
ソフィアは一瞬ビクッと体を震わす。
ゾロロはソフィアに話した。
「ソフィア、体調が治るまでは俺が監視記録を継続する。仕事の心配はせず、今はとにかく体を休めろ。君の仕事は今はそれが優先だ」
カリティアもゾロロの話に頷く。
「そうよ。ソフィちゃんはつい頑張り過ぎるところがあるからきっと疲れが溜まっているのよ。今はゆっくり休んで!」
ソフィアはゾロロとカリティアに礼を言う。
「ありがとう。カリティア、ゾロロ」
そこへエドが何かを持ってやってくる。
「ハチミツ入りのオレンジティーっス。ソフィア、良かったら飲んでくださいっスね」
エドはソフィアの部屋の机の上に置く。
紅覇はハチミツ入りのオレンジティーを1口飲みたい気持ちを堪えてソフィアに渡す。
「はい、ソフィア」
ソフィアはゆっくりとベッドに座る。
「ありがとう、紅覇」
ソフィアは紅覇から貰ったオレンジティーを飲む。
「美味しい。エド、ありがとう」
エドは顔を赤くして両手を上げて喜ぶ。
「やったっス!ソフィアに食べて欲しい食べやすい料理、たくさん作ってくるっス!」
エドは意気揚々と部屋を出ていき、即座にキッチンに向かった。
「希麗、この熱は何からきてるか分かったかい?」
シヴァは希麗に尋ねる。
希麗は難しい顔をしてシヴァとソフィアに話す。
「それが...。体は恐ろしいくらい健康なの...」
シヴァとソフィアは首を傾げる。
「アタシの予想だと、シヴァの魔法が何か影響を与えたって考えるのが妥当ね」
部屋の中に平然と現れるギルドマスターのユグレッド・クリスタル。
見慣れた光景なのかもはや誰も疑いすらしなかった。
シヴァはユグレッドに尋ねる。
「ユグ姉、ソフィアの熱を下げる方法、何かないかい?」
シヴァがユグレッドに尋ねた時だった。
ソフィアの窓を開けて1人の男が部屋の中に侵入してくる。
「シヴァー!それなら1つ方法があるぞー!」
シヴァたちは部屋の中に入ってきた男の姿を見て驚愕する。
「ええーー!!!"大賢者イフリート"!?!?」
大賢者イフリートは部屋の中に入るなり、ユグレッドの前に跪いて手を握る。
「どうも、美しき天才よ。貴女の使い魔、イフリートがここに参上致しました」
ユグレッドは思いっきり回し蹴りをイフリートの顔面に入れる。
「キモいわ、ボケ!」
イフリートは蹴り飛ばされたが何故か嬉しそうな表情を浮かべる。
「あっ、幸せ...」
「師匠、何しに来たのさ?」
シヴァは大賢者イフリートに平然と話しかける。
ソフィアは戸惑いのあまり、シヴァに尋ねる。
「シヴァ、彼と知り合いなのですか...?」
シヴァが答えようとしたのを遮って、大賢者イフリートはソフィアのベッドの傍へと近寄っていく。
「おっ、何と...。美しき金髪の少女が...、可哀想に...。こんな芋男と一緒に過ごさなければならないなんて...」
シヴァは大賢者イフリートのことを思いっきり殴る。
「誰が芋男さ!あと、ソフィアにだけは色目を使わないでいただきたい!」
大賢者イフリートはシヴァの頭に頭突きを入れる。
シヴァが頭を痛そうに押さえているのを見て嘲笑う。
「ふんっ、馬鹿小僧。何をカッコつけてやがる。そんなことより、その腕はどうした?」
急に真面目な話を始めたイフリートにシヴァは戸惑いながら腕について説明する。
「あっ...、これは...。巨大な樹化異を倒す時に力を出したら腕が燃えたのさ...。今はまだ動かせない...」
シヴァはあの日から左腕を全く動かすことができなかった。
イフリートはシヴァの腕を触って状態を確認する。
「なるほど、錬金し直した方が良さそうだな。それにこのままだとかなりまずい展開になりそうだな...」
シヴァたちは首を傾げる。
ユグレッドは大賢者イフリートに問いかける。
「イフリート、何が言いたい?」
大賢者イフリートは答える。
「シヴァくんの左腕を直さねば、"ソフィアの命"が危ないと言ったのだよ」
イフリートから告げられる衝撃発言!?
新章開幕!┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




