表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の怪人☆お悩み相談室  作者: 四季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/105

第六十七回 ストレス発散していたら怒られた

 僕の脱出から十分ほどが経過した頃、ナヤは由紀と共に部屋から出てきた。


 ナヤは由紀をすっかり気に入ったようで、デレデレだ。僕に接していた時のような厳しさをまったく感じさせない、間抜けとも言えるような顔をしているナヤを見ると、少し笑えてしまう。


 他人(ひと)にはやたらと注意するくせに、自分は女性にメロメロじゃないか。


 上機嫌なナヤは、現金での支払いを済ませると、名残惜しそうに由紀を見つめながら出ていった。


「お疲れ様です、由紀さん」


 ナヤが完全に去ったことを確認してから、僕は由紀に声をかける。


「フォローしていただいてしまって、すみません……」

「いやいや! 気にしないで!」


 由紀は笑顔を崩さず言葉を返してくれる。


「こっちこそ、厄介な怪人を任せちゃってごめんねー」

「いえ……」

「あの人、あたし相手だと善いおじいさんだから、岩山手くんでも大丈夫だと思ったんだけどねー」


 そういうことだったのか。

 異性には優しいが、同性には厳しい——ということなのかもしれない。


「由紀さんには優しい方なんですね」

「そうなの!」

「けど……僕の仕事だったのに……任せてしまってすみません」


 由紀は優しい。だから僕を責めたりはしないだろう。それは分かっている。が、分かっているからこそ、罪悪感がある。


「いいっていいって! 困った時はお互い様!」


 由紀はそう言って笑う。

 でも、申し訳なさは消えない。


「そうですか……」

「真面目だねー、岩山手くん。そんな重く考えなくていいんだよっ」

「でも……何だか自分が情けなく思えてきてしまいます」


 すると、由紀は歩み寄ってきて、僕の肩をぽんと叩く。


「情けなくなんてないよ」


 それだけ言って、彼女は自分の机の方へと歩いていった。



 その日、僕は、家に帰ってからゲームをした。

 リモコンを握りつつ動くことでスポーツをしている気分になれるゲームを、である。


 家に帰ったのはまだ明るい時間だった。しかし、気づけば日は沈んでいて、窓の外は暗くなっていた。


 それでも、僕はゲームを続けた。


 テニスやら、ボーリングやら、カヌーやら、ロッククライミングやら。選択肢は色々あるので飽きない。だから、いつまででも続けられる。


 ……もっとも、日頃ならそんな長時間ゲームを続けることなんてないが。


 ただ、今日は違った。

 ナヤに理不尽に叱られたストレスを発散したかったから、ひたすらにゲームを続けたのだ。


 その結果どうなったかと言うと……母親に怒られた。


 母親は寛容な人だ。それゆえ、小さなことでは怒らない。僕がまだ幼かった頃も、母親が厳しく怒るのは「本当に駄目なことをした時」だけだった。


 そんな母親だから、今日も、ゲームをしていることに怒ったわけではない。


「少しは休憩しなさい!」


 そう言われてしまったのである。


 無我夢中でゲームを続けていた僕は、母親の言葉で正気を取り戻し、すぐに休憩を挟んだ。


 でも、一度休憩すると再びやる気にはならなくて、僕はそのままベッドに入り眠った。その夜は、運動したからか、よく眠ることができた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。 ポイント・ブクマなど、いただければ嬉しく思います。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ