第六十五回 ナヤ・ミオオ(2)
善行を積んでゆく組織なのに、悪の組織とは。
それでいいのか、ワルザス。
確かに、不正をするという意味では、決して明るい組織ではないけれど。でも、人のためになることをするという心があるならば、完全な悪であるとは思えない。
なのに「悪の」などという単語を自らつけてしまって良いのか。
「善行……をなさっているんですね」
「そうじゃぞ! 悪の組織にも色々あるからのぅ」
「なるほどなるほど。組織について説明して下さって、ありがとうございます」
すると、急に注意される。
「なるほどは一回じゃぞ!」
面倒臭い。
正直、そう思ってしまった。
「あ、はい。すみません」
「その『あ』は何じゃ! 『はい、すみません』だけで良いじゃろう! わしを舐めとるのか!?」
またしても怒られてしまった。
「いえ、舐めてはいません。が、失礼な態度を取ってしまってすみませんでした」
「……ふん。これだから最近の若造は甘いんじゃ」
ナヤの怒りは収まった。
取り敢えずひと安心、といったところか。
「ま、口答えせんだけまだ利口じゃがな」
しかし、彼と話すのは苦労しそうだ。
今まで出会った怪人は、わりと心の広い怪人が多かった。性格に差はあれど、細かいところを注意してくるような雰囲気ではなくて。だが、今回の怪人——ナヤは、神経質そうだ。それに、注意するのが好きそうである。
僕個人の傾向としては、ハイテンションな怪人が苦手だ。
しかし、ナヤのような口煩いタイプも、苦手なタイプの一つである。
仕事でなかったら、関わろうとはしなかっただろう。
——その後も僕は指摘され続けた。
「聞いとるのか、若造! もっと真面目に聞かんかい!」
「えっと……すみません」
「何じゃ、その態度! えっと、は要らん!」
軽く頷きつつ聞いていたにもかかわらず、「聞いているのか」と叫ばれる。真面目に聞いていただけに、一方的に言われると苛立ってしまう。
多分、イライラをぶつけているだけなのだろう。
「まったく、最近の若造ときたら、こんな者ばっかりじゃな。わしらの頃は、そんな甘ちゃんなんぞおらんかったわ」
早く帰ってほしいな、と、少し思ってしまった。
「わしらはな! 厳しい環境でしごかれて成長したんじゃ! ……最近の教育環境は甘すぎる。じゃから情けない若造ばかりが増殖するんじゃ」
散々当たり散らし、しまいに教育環境に対する文句を言い出す始末。
「そうじゃろう!?」
「は……はい」
「もっとキビキビ返さんか! ハイ! とな」
キビキビ返す、か。
無理だ。
僕にはできない。できるわけがない。
「分かったか?」
「ハイ!」
嫌み混じりに、はっきり返事をしてやった。
するとナヤは満足そうに頷く。
「そうじゃ、それでいい。いつもそういう返事をするようにせい」
「ハイ!」
「若造よ、甘い環境に甘えて弛んどるんじゃないぞ」
「ハイ!」
もういっそ、この「ハイ!」だけで行こうか。
「わしの基地に今年配属になった若造共もな、甘い社会で育ってきたやつらばかりでのぅ……」
「ハイ!」
「まったくなっとらんのじゃ。じゃから、わしが、きちんと教育を施してやっとる」
「ハイ!」




