第六十一回 バナーメ(3)
真夏の強い日差しの中、僕とバナーメは道を歩く。
すれ違う人は皆、好奇心と恐怖心が入り混じったような視線を、僕たちへ向けてくる。だが、それも無理はない。個性の「こ」の字もないような人間と、水色とピンクという派手な色遣いの怪人が、隣り合って歩いているのだから、奇妙な光景だろう。
しかし、さすがにもう慣れた。
怪人と隣り合って歩くことは平気だし、道行く人々から視線を向けられるのにも、もう慣れっこだ。
気になんてならない。
そうして、歩くこと数分。
目的地であるゲームセンターへ到着した。
近所だがここへ来るのは初めてだ。だが、入り口の前に着くと、二階建ての建物の一階だけをゲームセンターとして使っているということが、すぐに分かった。
「まさにゲームセンター、という感じですね」
入口の自動ドアの上にはGAMEという大きな文字。今は昼間だから光っていないが、夜は光っていそうな作りだ。
「おぉーいいねー。中はどんなか、楽しみだヨ!」
「入りましょうか」
「うんうん!」
バナーメは元気よくそう言ったのだが、まったく動かない。
僕は困惑してしまった。
「……バナーメさん? 入らないんですか」
少し待ってみたものの、やはり動きそうにないので、恐る恐る声をかけてみる。するとバナーメは、ゆっくりと、僕へと視線を向けた。
「い、い、岩山手サン……先に……入ってくれ……ないか、な……?」
いきなり途切れ途切れになっている。何があったというのか。
「え。僕が先に、ですか?」
「う、うん……」
よく分からないが「分かりました」と返す。そして、自動ドアを通過して、ゲームセンターの中へと足を進めた。するとバナーメは、五秒ほど遅れて、ゲームセンター内に入ってくる。
「どうなさったのですか?」
中へ入ってからそう質問すると、彼は恥ずかしそうに「おら、自分から入る勇気がないんだァ」と問いに答えてくれた。
どうやら、ただそれだけの理由だったようだ。
「なるほど。確かに、いきなり入っていくのは緊張しますよね」
「分かってくれるー?」
バナーメは元気を取り戻してきている。
「はい、もちろん。僕も積極的な方ではないので、そのお気持ち、分かります」
「分かってくれる人で良かったァ!」
真っ白な顔に生き生きした笑みを浮かべるバナーメを見ていると、こちらまで元気になってくる。
不思議なものだ、笑顔とは。
「では撮りに行きましょうか」
「うんうん!」
入口付近で話をしていた僕とバナーメは、ゲームセンターの奥に向かって歩き出す。プリクラの機械を探すためである。
「それにしても、バナーメさんはどうしてプリクラを?」
「いやァ、実は、二十年ほど前から撮ってみたかったんだよー」
二十年ほど前って……。
その頃といったら、僕は、覚えていないくらい小さい頃だ。
バナーメはそんなに高齢には見えないが、かなり年上だったりするのだろうか。
「そうだったんですね」
「でも、一緒に撮る友達とかいなくてさー。しかも、おらの地元のゲーセンは出入り禁止になってしまって、困ってたんだヨ」
「出入り禁止?」
「あーやっぱり気になるよねー」
聞いてはならないところだったのか、と、一瞬焦る。
しかし、バナーメは自ら話し始めた。
「友達がいなかったからさァ、その辺にいた女の子に声をかけて『一緒に撮ろうヨ!』って誘ってみたんだ。そしたら、入るのを禁止されちゃったんだ」




