howling 2-3
本文中の解説に基づき、2-2の後書きを改変しました。
遅くなってしまってすみません!
次回はもっと早く上げます……(フラグ)
それから暫く皆で話していると、遂にサンダーとファイアの順が回って来た。
「じゃ、行くぜ」
「また後でな、2人共」
彼らは白虎とローグに挨拶し、下の階に瞬間移動した。
そのまま10リメル(1リメル=1メートル)ほど離れる2人。
「嫌な視線だぜ」
自分に突き刺さる視線に気付いたファイアが、そう呟く。
サンダーの能力は既に割れているが、ファイアはまだ未知数だ。
だが、先の弱そうなハーフエルフとの戦闘では拮抗していたので、直ぐに決着がつくだろう。_____と、その視線の主達は思っていた。
好奇心半分、嘲笑半分。そんな視線が、上の生徒達から注がれていた。
「えー、2人共。準備は良いな?」
「勿論だぜ」
「大丈夫です」
そう言って、2人は武器を構える。
対峙したサンダーが余り余裕の無さそうな表情をしているのは、観ている大半の興味を引かせた
サンダーが下段に構え、ファイアが上段に剣を引く。
その中間点にウィンドウが発生し、10秒のカウントダウンが開始された。
少しずつカウントが減っていくが、2人は微動だにしない。
そして、カウントが0になってウィンドウが
消えた_____
瞬間、ファイアがサンダーの目の前に迫っていた。
そのまま下段から斬り上げるが、霞む速度で動いたサンダーの剣に阻まれた。
反動を利用してファイアが後退し、サンダーがそれを追従して右の剣を放つ。
しかし、先程とは比べ物にならない速度で跳ね上がった刀に弾かれ、サンダーは後ろに跳んだ。
一瞬前に彼がいた場所を、炎を纏った水平薙ぎが通る。
振り切る前に軌道を反射させ、放たれた袈裟に近い上段斬りは、交差した双剣のちょうど交差点に当たった。
鈍い金属音と共に、双方の動きが止まる。
「手を抜くな、ファイア」
「只の演習で殺し合いなんかしたくねえよ」
「そういう甘えは油断に繋がると前に言ったはずだ」
ファイアはそれに溜め息をつくと、急に獰猛な笑みを浮かべた。
「仕方ねえな、ちょっとだけだぜ」
そう言い、ファイアが一歩前に踏み出す。
それだけで、サンダーが吹っ飛んだ。
空中で1回転して着地し、そのまますぐファイアの後ろの空間に瞬間移動するサンダー。
その彼が一瞬前に居た所を、ファイアの放った轟炎の柱が焼き尽くした。
振り向くと同時にファイアが刀を振り抜くと、激しい金属音と共に剣を交差させたサンダーが壁に向かって吹っ飛ぶ。
どうにか転倒を回避したサンダーは、そこから1歩で距離を詰めて反撃する。
しかし、斜め斬り上げを回避したファイアは、次の瞬間右手の剣を吹き飛ばし、返す刀をサンダーの首に突きつけた。
後ろに下がろうとして、そのままの姿で固まるサンダー。
「……俺の負けだ」
「まだまだだな」
数秒後、サンダーが諦めてそう言うと、刀を首に突きつけたままのファイアがニヤリとして言った。
「凄いです、ファイアさん!」
観戦席に戻って来たファイアに、早速ローグから称賛の言葉が飛んで来た。
「どうしても速さで勝てねえからな。力で崩すしかねえんだが……。
上手くいって良かったぜ」
そう言うファイアは、少し照れくさそうに頭を掻いた。
「しっかし、2人ともとんでも無いな~。
俺達じゃ敵いそうにねえな。どうやったらあんな強さになるんだ?」
白虎が何気なくそんな事を聞く。
彼自身としては、ただその強さに純粋に興味があっただけだ。
「いや……それは言えない。悪いな」
歯切れ悪くファイアがそう拒否する。
「お、おう。……変な事聞いちまったな」
「気にすんな。何時もの事さ」
空気が少しぎこちないものに変わったが、すぐにファイアがフォローして話題の転換を図る。
「どうしたの、ファイア」
タイミングの良い事に、そこへスティリアが入って来た。
「ファイアさん、この方は……?」
ローグがファイアに尋ねたのを見て、スティリアが名を告げた。
「スティリア•グレイシゼルです。よろしくお願いしますね」
「ローグ•リゼラスです。こちらこそよろしくお願いします、スティリアさん」
「どうも、黒蓮白虎です」
2人が名乗ると、スティリアはニッコリと微笑んだ。
「ええ、もちろん。ローグさん、白虎さん。
それはそうと、ファイア?」
「何だ?」
「あなたの『影』に隠れているのは何かしら」
刹那、焦りの感情が波紋のように影から漏れ出た。
「後にしてくれ。今ここで出したら大変な事になる」
が、ファイアのセリフに殆どが安心感にすり替わった。
「……分かりやすい事。ただ漏れよ」
今度は畏怖と羞恥が半々。
「仕方ないぜ、こいつヘタレなんだからな」
そして、ファイアの二度目の発言に、すねるような感情に変わった。
「……まあ、良いわ。反応が面白いから、悪い子じゃ無さそうだしね」
_____ちなみにこの時点で、ローグと白虎は笑いを抑えるのに必死だった。
「まあ、取り敢えず後でな。それより……」
話題を変える前に、ファイアは下の戦闘に目をやる。
「あれ、そろそろ10分経ちますよ……」
復活したローグが信じられないというような口調で呟く。
「ここまで来ると最早修羅よね……」
下では、サンダーが教師達を相手に激しい戦闘を繰り広げていた。
(……温い)
3人で魔法の波状攻撃を仕掛けようとする教師達を見据えながら、サンダーはそう思った。
どうやらサンダー達で最後だったらしく、戦闘が終了して戻ろうと思っていたサンダーは、1人の教師に呼び止められた。
何でも、『サンダー君の戦い方は非常に参考になるから、この後先生方と手合わせしてみて欲しい』と言う事だった。
他の教師達はサンダーの強さを知っているので余りやる気が無いようだし、正直面倒なので辞退しようと思ったのだが、何故かそこにアストラが来て教師達と話し始めた。
断片的に聴こえてきた会話によると、「魔法には耐性が無い」とか、「彼の精神値は極限まで低い」とか、要するに「魔法を使えば勝てる」という事を他の教師達に教えていたようだった。
そして、今。
サンダーは、アストラを含めた教師5人と戦闘していた。
大量の魔法を避け、防御し、相殺する。
「くそっ、何故魔法が効かない!」
始まる前まで余裕綽々だった男性教師が、焦った様子で呟く。
確かにサンダーの精神値は低い。だが、それは決して『全属性の魔法耐性が低い』という事を表してはいないのだ。
ある魔法の系統を除けば、
サンダーの魔法耐性は非常に高い。アストラ自身も良く知っているはずだ。
_____アストラだけは。
不意に、額に衝撃が走った。
それが精神干渉系魔法の作用だと気付いた時には、途方もない激痛が精神に直接届いていた。
突然過去のフラッシュバックが起き、すぐに見えなくなったが、それでもサンダーを狂化させるには十分だった。
※追加説明※
◎ステータスについて•補足
MNDの表す魔法耐性と心の状態は、それぞれ相互に関係している。
例えば、ある人物Aが水に関するトラウマを持ったとする。
そうすると、Aの心の状態が不安定になった時、Aの水属性魔法耐性は急減し、結果として水属性の魔法の効き(ダメージ)が通常時よりも多くなる、といった具合だ。
反対に心の調子で魔法を全く受けないという事もある。
また、少しではあるがMAGにも繋がっているため、場合によっては相手に魔法が効かない、ひどくなると全く魔法が撃てない、などの事例もある。




