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オランダさん  作者: yukko
オランダ
9/12

エリザベス

ヘンドリック・ドゥーフの乗る船は、本国オランダへの帰路、バタヴィア(インドネシアの首都ジャカルタのオランダ植民地時代の名称)に寄港した。


1818年、バタヴィアでヘンドリック・ドゥーフは一人の女性と出逢い結婚した。

その人の名は、エリザベス。

西洋人の妻だ。

妻を伴って帰国できる。

日本人の妻・瓜生野、そして息子・丈吉は連れて帰られなかった。

妻を連れて帰国できることの喜びを感じつつ、日本の出島に残して来た妻と息子を思った。


「元気にしているだろうか?

 困っていないだろうか?

 許してくれ。瓜生野、丈吉。

 君たちを忘れたわけじゃない。忘れられるはずもないんだ。

 許してくれ。連れて帰られなかった私を………。

 結婚した私を………。」


帰国の途中の船上で、妻・エリザベスの妊娠を知った。

嬉しかった。

おもんの顔が、丈吉の顔が……浮かんだ。


「大切にしてくれ。」

「はい。」


この短い会話の中に幸せがいっぱいあることをドゥーフは知っていた。


オランダへ向かう船が嵐に遭った。


「エリザベス――っ! 大丈夫か?」

「はい。」

「私にしっかり摑まって!」

「はい!」


嵐の船内は揺れが酷く、海水も入って来ました。

ヘンドリック・ドゥーフは妻をしっかり摑まえて離さないようにしていたが、大きな揺れがその手から妻を奪った。

妻は船内を弄ばれたように転がった。

その妻に船内のテーブルや椅子が襲い掛かった。


「エリザベス―――っ!」


やっと妻を抱きしめた時には妻は、もう息をしていなかった。


「エリザベス―――っ!」


ヘンドリック・ドゥーフは大きな声を上げて妻の名を呼びながら泣いたのだった。

妻とお腹の子をドゥーフは失った。

傷心のままのヘンドリック・ドゥーフを乗せた船はオランダに着いた。

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