70:打ち上げは女子会のように
遥はミア、舞華とともに配信後の女子会へ行くのであった。
配信が終わり、オレとミアさん、そして舞華とで食事に行くことにした。日も暮れてきたし、夕飯にはちょっぴり早いくらいなので、混み合いがちょうどいい。
「席、空いてるかしら」
ミアさんが指で3を出して店員に聞くと、店員は笑みを浮かべてオレ達を案内する。
「こちらの席へどうぞ」
二人が向かいに座ると二人は速攻にメニュー欄のデザートのコーナーに夢中になっていた。
「ミアちゃん、これ言ってた期間限定パフェじゃない?」
「ほえー、おいしそー!! 私、ご飯の後これ食べよ」
「いや、まずメシ選ぼうよ」
思わず突っ込んじまったけど、彼女らの言うパフェはおいそうなのは伝わるが、相当大きそうだ。
食えるのか? これからパスタとかピザ食うけど
「確かに。とりまピザたのも」
舞華がメニュー欄のピザ欄に戻していくと、ミアが少し眉を顰める。
「えー太るじゃん」
「一枚で3人シェアしたらそんなじゃない? それに、別に太ってもウチらは平気っしょ」
確かに女優やアイドルではあるまいし、人に見られる仕事ではあるが本体というか、本人はそこまで体形なんて気にする必要もない気もする。それでも、彼女らはそうである以前に乙女なのだ。
「見られてないとはいえ、普通に太りたくないんだけど。でも、今日くらいはいっか! 頼んじまえ。私、たらこパスタ。ピザどうする?」
「オレは普通にマルゲリータでいいと思うんだけど。あと、カルボナーラかな」
「それでいっかな。うちは、ジェノベーゼってやつ」
「じゃあ、押しまーす」
オレは、机の端にあるインターホンを押した。そうしてしばらくすると、店員が現れた。オレは彼女らの言っていた通りの注文を頼んだ。
「あ、あと食後にこの限定パフェください」
「2つー」
「かしこまりましたー。少々、お待ち下さい」
品物が届く間、オレは少し周りを見た。家族、一人、カップルみたいな男女。いろんな人が幸せそうにピザやパスタを食べている。自分のテーブルを見ると、ミアと舞華はこのチェーン店によくある机に書かれた激ムズ間違い探しに夢中になっている。
「あ! あった! この子の服のボタンの数が違う!」
「ほんとだ!ちっさ! よく気づいたわね、マイ」
そういえば、間違い探しだけなのに少し話題になったゲームがあった気がするな。みやげちゃんがやってたのでホラーゲームなんだけども。
「お待たせしました」
彼女たちの微笑ましい姿を見ていたら店員が入ってきて、オレ達の頼んでいた品物が届いてきた。
人数分のパスタに、ピザが並びはじめてお腹が鳴り始める。それぞれが、いただきますをしてお手拭きで自分の手を拭いてピザに手を出し始める。
「いただきまーす」
久しぶりのピザはうまい。チーズの罪悪感をトマトと生地が少し抑えてくれる。一番まとまりがあっておいしい。
「ところでさぁ、遥ちゃんって好きな人いんの?」
ミアさんの鋭く唐突な眼光がパスタからオレに向けられた。オレは、驚きのあまり息を呑むようにカルボナーラを飲み込んだ。
「いきなりなんですか」
「なんですかじゃねえよ。マイが言ってたぞ、学校でおしとやかそうな女の子と話してたって」
もしかして、押崎さんのことか? おしとやかって
「舞華、なにを彼女に吹聴してんのさ」
「ええー、彼女じゃないの? つまんなー」
舞華は足をちょっとプラプラとさせて、頬を膨らませていた。
オレは動ぜず、ピザとカルボナーラを口に入れる。口を滑らさなければ彼女らは普通に戻るはずだ。
「おまえら恋愛脳とは違うの、恋愛脳とは......。それにそういうのは」
もう一途で十分だと言いかけた時にはもう後の祭りで、彼女らはテレビのインタビュアーのごとく質問攻めをする。 まったくもって悪手だった。自分で、地雷を踏んでいってしまった。
「”そういうのは”とはなんですか! もう心に決めた人がいるから必要ないということですか!」
「それとも、もうたくさんだからということですか! そんなにリア充だったのか!」
まだお酒も入っていないだろうにも関わらず、彼女らはオレの恋愛事情に土足で踏み荒らそうとしてくる。そう思っていると、急にミアさんがさっきオレが押していたインターホンを押して追加注文をしてきた。
「赤ワイン、一つ」
出たよ、酒。恋愛ネタをつまみにするつもりかよ。
「いやぁ、お姉さん楽しみだわぁ。男の恋愛話聞くの中々ないし! あ、どうも」
酒、届くの早! 用意周到かよ!
「それでぇ、あんた好きな人いるのぉ?」
ミアは、ワインボトルからグラス一杯に注がれていたワインをすぐに飲み干し、顔を紅潮させてすぐに出来上がっていた。
「いやぁ。そんなの、オレだけ言うのって不公平ってやつじゃありません?」
「そうね! ちなみに私は彼氏なし! 特に好きな人間もなし! 以上」
そういうと、今度はオレではなく舞華の方を向いた。無事にそれたのだろうか。
舞華はそれに対して、もじもじしながら語る。
「私は、ほら大学入ったばかりでまだわかんないっていうか」
「でも、モテるんじゃない? 有名人だし」
「あんたはいいのよ! 後できいてるから。さあ! 遥もいいなさいよ! 一緒にお昼食べてた女の子とどうゆう関係なのさ」
舞華には興味を示さずに、結局ミアはオレにバトンを渡してきた。なんなんだ、この茶番は! オレと押崎さんは......おしじゃきさんとは、そういうかんけーじゃねーろ!
「ちがいますー! かのじょじゃないれすー!! いっとのほうが、もっとすきなんですぅ!」
「え、あのモブ一号みたいな人?」
なんらよ、いっとのわるくちカァ? てめえいい加減にしろよぉ!? いっとのいいところもしらんおんながよー。
「モブみたいな顔は認めるけど、男は顔じゃないんですよぉ! 心なんですよ! わらしを支えてくれた最初のファンなんれす! 今では、推しなんれすよ?」
「なに。あんたそういう趣味なわけ? いいねぇ、酒がはかどるわ。そういう話好きよ? 普通の恋愛話にはちょうど飽きてきたのよ。どうなの? 同性同士の恋愛って」
どうせい? いっしょにすむって意味らっけ? わかなんないよあ
「まだ、いっしょにはすんでませんが?」
「は? いや、そっちの同棲じゃなくて! あ」
なんだろう、なぜか周りが暗い。誰もいない......。ミアさん、舞華......。だれか、いないのか?
一途、一途......。
突如、一途の携帯に遥から連絡がくる。
だが、その声は女性の声だった。




