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33/122

33:俺のバイト先にいるアイツ

一途の心に徐々に芽生え始めた遥に対する不思議な感情。

モヤっとする中、バイト先で再び鷹野仁とシフトを組むことになる。

最近エルちゃんにスパチャ投入しすぎて金がなくなってきたからバイトのシフトを増やしてみるものの、そのほとんどで、あの鷹野仁という人間とシフトが被ってしまっている。

バイト先に向かうと、コンビニのスタッフルームで休憩する鷹野は気味の悪い笑顔を浮かべてスマホを眺めていた。


「ハルちゃん、かわいいよねぇ......。ほんと、女の子みたいに」


そこにはゾンビメイドのVtuber「冥土みやげ」のコスプレをした遥の写真が写っていた。ゾンビメイクとはいえ、あいつの美形は隠せない。写真に映ったムスッとしたような顔は確かにかわいらしい女の子のようだった。


「それ、コミケの時の」


「そう。僕は彼のネット友達みたいなものなんだけど、リアルでも可愛いとなるとちょっとこじれちゃうよね」


「ネット友達......ですか。遥もそんな友達いたんだな」


ネット友達? ただのネット友達ならどうして遥=エルちゃんってことを知ってるのか余計に気になる。彼の声をどこかで聞いたことがあるような感じもするけど、違うような気もする。


「執拗に僕とハルちゃんの関係を聞きたがるけど、そっちこそ君とハルちゃんの関係ってなに? 彼氏とか?」


「違いますよ! ただの友達と言うか、親友というか......」


なんだろう。いままではスッと友達って答えられたはずなのに今、こいつに聞かれるとなぜか答えを鈍らせてしまう。こいつが遥にとって何者かは分からない。それでも、気になっているのはコミケでのこいつ自身の行動が原因なのか、それともこいつ自身に嫉妬しているか......。


嫉妬? 俺が? なんで? ありえない。きっと前者だ。ネットの友人がストーカー並みにうろついているから心配なんだ。


「親友ならはっきり言っておくけど、僕とハルちゃんの仲を詮索しないでほしいんだよね。正直、邪魔。僕は君みたいな器の小さい男は嫌いでね......。できれば君からハルちゃんと距離を置いて欲しいけど、僕は心が広い。僕とハルちゃんの仲をこれ以上詮索しないと約束したら一緒にいさせてあげる」


この人はなにを言っているんだ? 友達といることを他人が決められると思っているのか? それとも、それほどの権力が自分にはあるとでも思っているのか?いずれにしても気が狂っているとしか言いようがない。彼の言動を飲み込めずにいると一人の客がコンビニの自動ドアを通った。ダボっとしたズボンに学生が着てそうなクマのぬいぐるみが大きく描かれた長袖を着て、あいつは現れた。


「いらっしゃいま、って遥......!?」


「おう、一途か」


いつもより少しだけ歯切れが悪いようにも感じる話し方に違和感を覚えつつも彼を目線で追う。レジに人が入ってきて邪魔だ。早く帰って欲しいと祈りつつ俺はバーコードリーダーを客が持ってきたサンドイッチに当てつける。


「以上3点で1032円になります」


「はい」


「2002円おあずかりします。970円のお返しになります。ありがとうございました~」


要約対応が終わり遥の様子を見ると、丁度遥が鷹野と出会い、話し込んでいるのがレジ際からギリギリ見える。遥は俺には見せないようなうれしそうな笑顔で話しているのがなにげに悔しくてなぜか怒りさえ感じる。こんな風にモヤモヤするのは初めてだ。一緒にゲームして遊んでる時も、アニメの話して盛り上がってる時でもあんな風じゃなかった。あの人との関係は友達ってだけじゃないのは見てるだけでもわかる。


「一途、レジお願い」


「お、おう......。って今日発売のVtuberチップス! 買うの忘れてた」



ぽとチップスの外袋には多くのVtuberたちのイラストが描かれていた。そして銀色の包装紙に包まれたカード。そこにはエルちゃんを含む所属事務所の枠を超えたVtuberたちが描かれたカードが入っている。


「オレと仁さんは箱買いしているけど、オレはコンビニでも売ってること確認したかったからこれくださいな」


「はい。250万円ね」


「じゃあ300万円からで」


子供のやりとりのような昔の駄菓子屋とのやりとりのような会話をしてみる。遥とのいつものやり取り。悪ノリしている笑顔はこんな風にいたずらっぽく笑っていたのか......。いつも見ていた笑顔のはずなのにいつも以上に気にして隅々まで意識してしまう。歯並びから口角の上がり方まで......。自分でも気持ち悪い。


「じゃあ、また学校で!」


「おう。またな」


手をあげて見送る。あいつの姿は今まで通りでありながら少しうれし気にステップを踏んでいた。


「やっぱりなんだかんだ言ってハルちゃんは僕の虜なんだね。最高じゃないか」


「はぁ、どういうことです?」


「両想いってことさ。僕はハルちゃんが好きなんだよなぁ......。君は邪魔しないよねぇ?」


好き? そう言われた時、頭を鈍器で殴られたかのような衝撃が走った。こいつが、こんなやつが遥と両想いなのか? ほんとにそうなのか聞かなくちゃ。でもどうして聞きたいんだ? なぜ気になるんだ? あいつのことをいろいろと知り始めてからというものの、あいつの周りにいる人間が気になってしょうがない。人の恋路を邪魔したいわけじゃない。男同士だからという理由だったとしてもそれは価値観が古すぎる。友達として、俺はどうすれば......。



遥は仁との関わりが増えたことに喜びも感じているが、少し不安もあった。

二人の好意がすれ違う......。

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