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19/122

19:俺たちだけのコスプレ大会

コスプレが届いて早速着こなそうとする一途いっとたち。

彼らによるファッションショーがいつの間にか始まった。

 大学ではいろんなことがあったけどだいぶこなれてきた気がする。会うたびに3人で話すことも増えてきたし、それこそコミケに向けてお互いの趣味も理解できるようになった。休みの日で時間が空けばアニメの映画も見に行くこともあったし、本屋に行って漫画を買いに行くこともあった。日が増すごとに雨が多くなってきたことだけが季節と時間を理解できた。


「お、荷物だ」


 玄関を開けるとある荷物が届いていた。中身はもちろん知っている。これが届いているということは他の3人も届いていることだろう。俺は荷物を部屋の中に入れた。


 音のしない割には中身が詰まっていて重い段ボール。中に衣類が入っているだけなのに重さがある。中を開けるとそこには画面の中で見た男の人の衣装が入っていた。予想通り、Vtuberジンくんの紳士的でありながら艶やかな衣装がビニールに包まれていた。


「結局自分で買ったから相違はないんだけど、ちゃんとしたコスプレなんて初めてだから緊張するなぁ」


 ワンルームで一人ぶつくさと独り言を言いながら洗面台の鏡ごしにハンガーを持ってコスプレをしている自分を想像してみる。いや、想像できんわ......。遥はふだんからコスプレしてるようなもんだし慣れてるだろうし、こないだ押崎さんに話したら結構男装とかもしてる写真見せてくれたから二人ともその道では先輩なんだけど、これは大丈夫なのか? その押崎さんが大丈夫と言っていたから大丈夫と信じてはいる。


「......。着てみて押崎さんに相談してみるか」


 何事も挑戦だ。これまでの俺だったら友達を誘って何かをしようって思わなかった。誘った時もめちゃくちゃ緊張したけど2人ともこころよく受け入れてくれた。むしろ、俺よりやる気になってたりしているときもある。この間だって女装した遥と押崎さんのツーショットが送られたときはドキッとしたものだ。2人を仲良くさせようとしたのは紛れもなく俺なんだけど、こんなに女子会開くほどになるとは思わなかった。自分を変えるために実家から遠くの大学で独り暮らししてまで通った大学で、まさか他人の行動をも変えてしまったのは申し訳ない反面、その人たちがその人達なりの人生を謳歌できるようになっているのを見れるようになったのがとても楽しい。


 新しい服に袖を通してキッチリ決めてみる。遥から教えてもらった理髪店に通い始めてからか、スーツを着こなせている自分に自信がついたのか、もさっとした自分の印象からこざっぱりとしたように感じて気持ちが高ぶった。


『コスプレ届いたよ! どうかな?』


3人のグループラインに一言加えて画像を添付してみるとすぐさま返信が来た。


『保存しました。』


『早くない!? ていうか意外と冷静?』


『冷静なわけないでしょ!! 今スマホの前で五体投地してるよ!! ありがとうの極みなんだけど!?』


 いつもの荒ぶっている押崎さんだ。冷静を装った冷静さを欠いた文章がだんだんと可愛らしく見えてきた。彼女の初対面のふるまいとは変わり果てた姿を見てなんとなく俺たちは友達になれたんだって気づける。遥はまだ連絡に気づいてないようだ。配信はまだなはずだから見てるとは思うんだけど......。


しばらくすると既読の数字が2に増えた。遥が俺たちのやりとりに気づいたみたいだ。


『俺も届いた~』


そういうと彼のコスプレ写真が届いた。今回はメイド系Vtuber『冥土みやげ』のようなコスプレの写真が届いた。


『別にVtuber縛りじゃなくていいって言ってたじゃんw』


俺がうれしさを隠しながら彼のコスプレに突っ込むと遥がぶっきらぼうに答える。


『だめなのか』


『別に嫌いじゃないけど......みやげちゃんもホラーゲームうまいし』


『ふーん』


含みのある言い方。あいつはラインになるといつも不器用な話し方になる。3人のグループなんだからもうちょっと書き方とか気を付けて欲しいとは思うけど、もう押崎さんも慣れているのだろう。


『ラインになると書き方がクーデレっぽくなる遥君尊い』


『別に、そんなんじゃないけど』


遥はまたも表情のない切り返しをする。彼なりの表現なんだろうと受け入れられる分にはこちらも別に変えろと口をすっぱく言う気はない。


 しばらくは俺と遥の衣装合わせに加えて、押崎さんの衣装であるVtuberの『彪雅ひゅうがなつ』のガチコスを見ながらみんなでコミケの参加を楽しみにした。それにしても押崎さんのガチっぷりには頭が上がらない。遥も俺もコスプレの分野でいうと彼女は師匠だ。師匠のコスプレ指導がラインに連綿と指摘されていく。彼女の熱意が本物だってことがわかる。押崎さんと俺のツーショットを取りたいがために彼女の言葉は深夜まで止まらなかった。

衣装も届き、いよいよコミケ本番も近くなってきた。

霜野遥は神野エルとしてさらなる躍進のため新衣装に変えてゾンビとホラーゲームをするのであった。

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