20:二つの世界
いまさらタイトルの話数があっていないことに気づきました。
疲れてますね。
雨音が窓越しから聞こえる。今日もスカートに足を通して画面を見つめる。コミケに参加するための旅費とかも必要っていうのもあるけど今回ばかりはコラボ配信っていうのもあるからより一層緊張が走る。
「じゃあ、今日は話題のゾンビちゃんと遊んでいきたいと思いまーす」
「ゾンばんわ~。バーチャルゾンビメイドの冥土みやげデス。よろしくデス!」
「今日二人で協力型ホラゲー『ゴーストハンター』プレイしていきたいんですけど、私ホラー苦手なんだけど大丈夫かな......」
緊張しているのは他にも理由はある。オレはまじでホラゲーが苦手だ。お化けがこっちに危害を加えてくる系のホラーもびっくりさせるだけのホラーも苦手だ。これもみんなのためだ。一途もエールを送ってくれている。ていうか、ここで投げ銭とかすんなよ......。まあ、うれしいけど
「大丈夫、大丈夫! ゾンビでメイドであるアタシがついていますので、エルちゃんのことサポートします!」
みやげちゃんのチャンネルは、淡々としたホラーゲーム実況が有名だ。彼女の表情筋のゾンビっぷりと天然でホラーシーンを見逃してしまうところが受けているらしい。オレも彼女のような耐性がほしい。
ゲームが始まるといくつか幽霊を調査するアイテムをいくつか用意された場所からスタートした。このゲームはお化けをアイテム回収やらなんやらで倒すと言うより、そこにいる幽霊を特定するゲームのようだ。とはいってもそのお化けも襲ってはくるんだけど......。
幽霊がいるという家の中に入ると幽霊を探知する道具が音を出し始める。
ピ......ピ......ピ......ピ......。
場所に近づけば近づくほど音が早くなっていくのだが、この家は2階建てだから1階にいるのか2階にいるのか全然わからない。懐中電灯は幽霊を見つけてくれない。ただ、家具や周りを照らしているだけだ。
「エルちゃん、私2階行くね」
「ちょっと待って!! 一緒に行こうよ」
「仕方ねぇなぁ......。フヘヘ、じゃあ一緒に行こっか」
まるで怖がっている人を見るのが楽しいかのようにヘラヘラ笑いながらゲームのキャラを動かすみやげちゃん。男の俺より肝座ってんじゃん。
「なんでそんなホラーゲーム得意なの?」
「え? だってアタシゾンビだし。エルちゃん怖がりだからホラーやりがいあるよ。アタシの実況結構淡々としちゃってるから羨ましいよ」
みやげちゃんにはみやげちゃんの良さがあるようにオレにはオレの良さがある。だから、一人一人に推してくれるファンがいるんだよな。怖がってるところが面白いからといってオレは別にホラーとかやりたくはないんだけど......。今日のコラボも向こうからの誘いだったしまだ事務所に入りたてだから同期でもある彼女の遊びの誘いを断るわけにもいかない。
「そ、そうかな? 私は冷静にホラーゲームできるみやげちゃんカッコよくて好きだよ」
「エルちゃん!?」
二人でイチャイチャしていると今日もみんなの語彙力が昇天していく。今日もみんなの心を打ち抜いて行く。みやげちゃんの協力もあり、叫びながらもミッションを遂行することができた。
「エルちゃんやったね!! 幽霊調査できたよ!」
「いやぁ、ほんと怖かったぁ」
「怖いの苦手って言ってたもんね......。楽しめた?」
「うん! 達成感があってちょー楽しかった!!」
二人で仲良くゲームの配信が終わり、しばらく歓談した。
「お疲れ様です。改めてコラボしてくれてありがとうございます」
配信とは違う理知的で清涼感のある声に驚きながらもこちらは声を変えずに女性としてやり通す。これが正しいかはわからない。でも、正体を知るのはもっと先でいいと思う。
「こちらこそ! 同期として一緒に盛り上げましょうね」
「はい! またやりましょう!!」
彼女の方から通話が切れたころ、一途からラインが来た。きっと今日の配信の感想だろう。
『お前ビビりすぎだろw』
『こえーんだもん! ま、今日も配信楽しんでくれてたみたいで嬉しいよ。ていうか、コミケのために金貯めてんのに俺に投げ銭してどうしんだよ』
『習慣なんだからいいだろ! 一緒にいくんだから払ってくれてもいいだろ?』
泣き顔のスタンプが送られてくる。まあ、個々で払うか二人分で払うかの違いだから間違っちゃいないんだけど少し照れる。いままでも自分の友達が投げ銭してくれていたなんて世界の狭い話があるなんて夢にも思わなかった。 狭かったからこそ、不思議な絆が生まれたんだと思う。
コミケでは可愛いオレであいつをからかってやるぞ!
そう意気込んでコミケで着る衣装のしわを少し伸ばして寝床についた。
次回もお楽しみに!




