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第八話 morietur…?

 日本 神奈川 地下基地内―― A.M11:46 11月 28日




「……」


 真実。それはいつも人を狂わす。

 今突きつけられた真実もまた、狂気。


 思考が止まった。体が動かない。出るのは何とも言えぬ感情だけ。


「かつて、貧困層の殆どは普通の町の市民だった……」

「だが、天使の襲来により……家と財産を失い、家族も失った……」

「そして天使は力を得るためにそういう人間に漬け込んだんだ!」


 コイツは…おぞましい顔で…


「“人を取り込んだんだよ”……」


 またも狂気に還る。嘔吐しそうなのに……そこに更に狂気を足される。


「しかし、だ、逆に“天使を知らず知らず取り込んだ者”いるのさ……それこそが……!」 

「使人さ! そこにいる君とトウマ君以外は貧困層では無かったが……ある理由で天使を取り込み、使人となったがね……」



 聞いていく内に心が狂っていく。



「だからこそ政府は今の普通の市民に対し、」

「貧困層に対する暴力を許したのさ……」

「そして天獄に送れば……天使同士の共鳴により、使人に覚醒するかもしれないと言う機密付きでね……」



  許せない。そんな感情が溢れ、自然と拳を握りしめ……


「黙りやがれ!」

「俺だけならまだいい……なのに……」


「お前ら政府が知ってる事だけで……直接見てもない人間まで化物扱いすんじゃねえぞ!」


 怒り。今度こそ本気の憤り。感情が昂ぶる。


 コイツのデスクを殴る。……ふと見れば殴った箇所にヒビが入っている。どうでもいい。


 しかし、コイツは、こちらに、静かに顔を向け、こう言い放ったのだ。



「一言言わせてくれないかね……?」

「私は飽くまで安直に事実を告げているに過ぎない……それは何故か? 簡単だ……」

「全ては……君達に生きてほしいからだ!」


 ※※※ ※※※


 生きて、ほしい?

 今、コイツは、そう言ったのか?


 ……俺は、認識仕切れなかった。何故か? 簡単である。“彼は”強い眼差しで、そう答え、こちらに意思を表明した。それは、分かる。けれども理解出来なかった。これまでの事を考えれば、尚更…。

 

 思わず俺は拳を収めた。後ろを見れば恐怖した顔でこちらを見つめるトウマ、アスカ。

 笑顔を崩さない“老人”と“少女”。そして無関心なのかこちらに目を向けない“メガネ野郎”。 


 “彼は”、俺にもう一度言葉を送った。



「君は! 拒む事が出来たのだ! おぞましい真実も! そして!」

「自分も、他の人達も天使でも、使人でも無い! 人間だ! と」

「その口で表明したのだよ! それこそ人間の証!!」

「決定付けられた運命を変える! それこそが……」

「“人間”!!!」



 強い励まし。その様に聞こえた。間違い無く…


 彼は、俺に、生きろと言っているのだと…そう感じた…。


「……。」


 俺は、思わず無言になってしまう。


「フフ……人類はいつか滅びる。その時は今では無いのさ……」

「ましてや天使が人類を滅ぼすなど言語道断!!」

「それと残酷な事実に対し、笑顔のままだった事……それは謝罪させてもらう」

「だから……我々を信じて欲しい!!」


 信じよう! としか言えない程の説得力。


 それは、正しく一人の“英雄”の様な、素晴らしい言の葉の数々…。


 俺は、首を下げる。


「此方こそ……スンマセン」

「分かってくれたか……」

「こちらこそ……本当にすまなかった」


 だが、まだ疑問が残っている。

 

 それだけ、最後に問う事にした。そうでなければ、前に進めない。そんな気がしたから。


「俺が……なんで“天使”なんだ?」

「使人ならば…まだ分かるんだ」

「現に変な状態になってたから分かるんだ……」

「どうして俺だけ天使って言われたんだ?」


 “特異天使” ――頭に残る歪なそのワード。


 これが、この事実さえ分かれば…何か…変わる事が出来るのでは無いかと、期待していた。


 だが……その事実は



「それは……」



 重い口調で、手を組んだまま、告げられる事実。



「“君が天使に、完全に食われた存在……いや……”」

「“もう、死んでいる筈何だよ……君は。”」



  ――後の“黙示録”を…


 歪に改変させてゆくなどと…誰が考えていただろうか?



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