第三話 israfel…
日本 神奈川―― A.M9:00 11月 28日
「―――さぁ……続きだ!!」
レリエル ―――リョウは確かにそう聞こえた。五感が研ぎ澄まされ、最早その集中力は人智を遥かに超えたものだ。
自分の視野は“そこ”を確実に見据えていた。今なら“くっきりと見える”。本来なら数キロ先なんぞ誰にも見えない。だが、今のリョウは“見えている”。
side change
「ああ……」
“それ”を美しく感じた。“戦い”が、彼女と天使の戦いが、余りにも美しい。パラパラ漫画のように一コマ一コマが綺麗に動いているかのようだ。
何と素晴らしい。彼女の吐き出す血が、綺麗に見える。天使の身体が、崩壊する。それが美しく見える。
だが、たまったものではない。そんな事で素晴らしさを感じるのは狂っている。
理解している。 其れが如何にイカれているかなんぞ、
「ぐはっ…!」
彼女は血を吐く。
「――――――っッ!!」
天使は身体が崩れてゆく。
そして俺はそれを見て…
「……綺麗だ…」
side change
「―――ムンッ!」
キツっ!!駄目……これじゃ……!!!
私はそう思いながら“コイツ”の攻撃を躱す。辛いにも“これが最善策”だ。余りにも早く、重い一撃はカスっただけでも意識が削がれそうになる。
だから慣れないとは言え、躱した所に蹴りを入れては、少し離れ…それを繰り返した。所謂ヒットアンドアウェイ。そんな奴……だった気がする…
「おりゃ!!!」
―――クリーンヒットした!
レリエルの顔面に蹴りを入れ、そう思った途端…
“後ろから壊れていたであろう重機械”が飛んできたのだ。
「キャア!!」
直撃した。……意識が朦朧としつつある。骨も5、6本は“砕けた”。身体が重い。光がパチパチと輝いて見えている。
「―――“種としての人の者よ”。痛いか?これが私に与えられた
<役割>だ…」
「……っ」
<役割>………“名無しの天使”は持たない力であり、『三階級』の中で『下位三隊』の『権天使』から持つ力の事だ。
事実、これまで現れた全ての天使は“キリスト教”の天使と『外見』以外は酷似した存在ととれる。それは、“レリエル”も例外では無い。
恐らく、こいつの <役割>は……
「……ハハ……思い出したわ」
「―――……?」
レリエルは首を傾げる 。
「あんた、“あの災厄”の時…まだ『大天使』だったわね……!」
「―――っ……!?」
絶句した。レリエルは驚いたのか、より一層身構えている。
「貴様……」
「そんときゃ、あんた私はまだ子供よ…記憶力がいいからねー私は……!」
「―――それがどうした?」
「ええ。関係ないわ。勿論そんな事はね…」
「あんたの <役割>…それは…」
「壊れた“物”や造られた“物”を新たに“起動”させる力……そうでしょう?」
「―――ほう……。」
ついでに言うと、これは単なる推測の域でしかない。だが、恐らく正しいだろう。これはさっき私に直撃した物すべてが“瓦礫に埋まった機械”や“放置された重機械”などだからだ。とは言え、どうやら……
“アイツ”の反応を見る限り、推測は正しかった。
「私も其れに応えてあげるわ……」
「―――何をするつもりだ?」
私は“隠し玉”がある。其れにそもそも私は見ての通り“人間では無い”。そりゃそうだ。
「“我が名を言う”……」
―――私は光に包まれる。桃色の光に。すべてを包み込む、優しい光だ。
「音を愛したペテン師へ!」
いつしか光は止む、私の外見は“人間では無くなっていた”。
「―――馬鹿な……」
その片手は機械の腕と化し、顔の一部もまた機械が覆っていた。少しグロテスクな機械の一部が身体を覆っている。背中には天使と同じ様な人の大きさ並みの翼が『六枚』生えている。
「―――貴様ァァ…!まさか“使人”だと言うのかァ……!?」
彼女はただこう告げる。
「さぁ、どうかしらね……でも…これだけは言えるわ……」
ただ“伝える”。
「私はあんたを……ぶっ飛ばす!!」
side change
何だ、あれは?
そう思う事でリョウは必死だった。ただただ不思議に感じていた“不思議な違和感”はこれだったのだと悟った。それと同時にある事も理解出来た。
争いは終わる
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「それとあんた、私に言ったよね……?」
「続きをしろって……じゃあ私からも」
「さぁ“続きを始めましょ”」