第十六話 人間
日本 神奈川 荒廃したビル街―― P.M3:00 11月 28日
(……なんだ?)
(何が起きたんだ!?)
ソウマは困惑した。カマエルが槍を取り出した瞬間、世界は激変し、炎がすべてを包みこんだからだ。
その世界は余りにも異質だった。今にも全てを焼き尽くさんとする炎が燃え盛っているのに、一緒に飲み込まれた建物は一切燃えていないのだ。それに熱さも感じない。
「―――― さぁ、来いよ」
カマエルは空から手をクイクイとしてソウマを挑発する。
「貴様ぁ……!」
「……ソウマのお兄ちゃん」
「!? ライハ?」
「駄目だよ……勝てないよ」
「何?」
ライハは、静かに口を開く。
「私の中の“ソレ”が、そう言ってる」
「お兄ちゃんだって、そうでしょ?」
―――― ―――― ―――― ―――― ―――― ――――
「ハァ……ハァ……」
――――リョウは走っていた。それは彼自身にも分からない。いや、それはまるで動かされるかのようだった。
(何だ!? この感覚!?)
(間違いない……あの場所に……何かがある!)
向かう場所は、“中華街”。ソウマとライハが向かった場所だ。
「!!」
(着いた……!)
そこは、中華街、“だった”場所だった。中華街全体は、炎に覆われ、入ることは不可能に近いだろう。
だが、リョウは“呼ばれている気がする”と感じた。確証があった。
リョウは拳をパキパキと鳴らす。何故かは分からないが、今のリョウには、謎の高揚感が感情が支配していた。
(呼ばれている、ここに)
(誰か、知っている気がする)
リョウは炎に手を延ばす。すると、炎は彼を避けるように消えていった。
(!? 通れる……)
不思議と感じない炎の熱さに、疑問を感じるが、その世界に入り込んだ。
「……あれは」
リョウが見たのは、ライハとソウマの二人、そして……カマエルであった。
―――― ―――― ―――― ―――― ―――― ――――
「――――誰かが俺の世界に入り込んだか」
カマエルは、視線を西の方へ向ける。
「……何?」
「――――見に行ったほうがいいんじゃねえか?一応仲間なんだろ?」
「……覚えてろよ……行くぞ! ライハ」
そうして、ソウマとライハはカマエルが視線を向けた西の方角へ走り出す。
それから ――――
「貴様は……」
「リョウ……さん?」
三人が、その場所で、合流した。ソウマが腕を組みながらリョウに近づく。
「どっから入ってきた!」
不機嫌な表情と、怒りに満ちた声が、このばに木霊す。
「どうって……炎が勝手に」
なぜ怒鳴られたか分からないリョウは、少しオドオドしながら返事をした。
「勝手にだと……? フザケてんのか?」
「フザケてなんかねえよ」
ソウマの言葉を、適当に返すリョウ。
そうしてると……
「――――合流中悪いね……」
「!? 来やがったか……」
槍を持ち、少し笑顔になったカマエルが空から現れたのだった。
「――――ソウマ? だったか?」
「……」
「その、リョウ? って野郎、人間か?」
「人間だよ……!」
リョウは、その言葉に少しカチンときたのか、ソウマが何かを言う前に口を開いた。
「――――ほーう? いいじゃねえか」
「――――確固たる信念ってやつか?」
挑発と賞賛の入り混じった声で、リョウに問いかける。
「そういうこった……! 俺はれっきとした、人間だ!!」
大声で、ハッキリとした声で、リョウはカマエルに返事を返した。
「――――いイネェ!! 最高だ! お前!」
「――――リョウ、俺を倒してみせろ!」
「!? 何を言って……」
「――――ハ! まだ気づいてないか? まぁいい」
「――――地獄の決闘だ……楽しもうぜ!」




