表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/18

第十一話 狂え。

 日本 神奈川 荒廃したビル街―― P.M00:40 11月 28日



「――――殺人鬼は霧に踊る(バルディエル)……!」


 紺色の閃光と共に、バルディエルはその姿を変え、現した。


 一本角より下の顔は、完全な、若い男性そのもの。しかし、右半分は機械に覆われ、体も、一部は骸骨で歪な姿をしている。


 翼は、“八枚”


「――――俺は“レリエル”と違って…慢心はしない」

「――――ここで殺してやる……“使人共よ”」


 抜かりは無い。ここで殺す。


 その意志表明を済ませたバルディエルは、空間を歪ませ、そこから斧を取り出し、構え、ソウマとライハの方へ目線を向ける。


 殺す、とその意思をギラつかせており、その殺気は最早尋常では無い物へと至っている。



side change



「―――― 愛するものは海の中へ(ガギエル)……」


 水色の閃光と共に、ガギエルはその姿を現した。


 顔から上半分は、かなり端正だが、下半分はまるで、 “ピラニアの牙の様な物”と機械を、 無理矢理繋ぎ合わせたかの様に見える。


 その上、右腕は、ヒレが付いた青い腕となっており、背中からもヒレが生えている。それは、宛ら機械と魚の中間体にも見える。


 翼は、“八枚”。


「――――老人と少女よ、ここで終わらそう……」



  side change


「――――ムンッ!」

「クッ……!」

 

  ――――ソウマは追い詰められていた。


 バルディエルの斧は、的確に、正確に、ソウマに当てられている。ソウマが回避しても、リーチが長いので掠り傷が出来上がってゆくだけ。


 だからと言って、攻撃しようとしても、バルディエルの <役割>(role)によって、視界を遮られる。


 バルディエルの <役割>(role)は、その名の通り、“白い霧を放ち続ける力”なのだ。


 その為、無理に攻めたり、防御しても何処からバルディエルの攻撃が来るか分からない。


 ソウマは防戦一方であった。


「――――ハハハ!」

「糞が……!」


 一閃、一撃、必ずどれかはボディか、顔に入る。その苛立ち、憤りは益々昂ぶる。


 そして、遂に


「分かった」

「――――ん? 降参でもしたいか……?」


 バルディエルは、手を休め、ソウマを煽るつもりで問う。


「嫌、違うな」

「――――ならなんだと言うのだ……」

「お前が全力を出してるんだ……。こっちも出さなくてどうする?」

「だから、少し待って欲しいんだが?」


 ソウマは、バルディエルに対し、不敵な笑みを浮かべる。


「――――いいだろう」

「フッ。ありがとよ“クズ”」


 バルディエルの方に一旦向き直してからの、“クズ”発言。


 その言葉は、バルディエルをイラつかせた。


「――――何だと?」

「まぁ、いいだろ? 時期に死ぬんだぜ? お前は」



 そして、 ――――

 


「我が真名を告げる」


 青い閃光はソウマを包む…。その閃光は、少しずつ、“凍りついている”。


氷の中では愛は育たず(ザドキエル)……」


 静かに告げた。 そして、閃光は完全に凍りついて、砕けた。


 その姿は、余りにも歪だった。


 機械の翼……“十枚の翼”の内、五枚は凍りついており。


 機械化した右腕も、凍りついていた。


「――――十枚!? ……そうか、貴様…“上位三隊”の天使を……!」

「ああ、そうだが?」


 “上位三隊”。天使の最上位種であり、最高クラスの力を持つ存在。


 その一体一体が、その気になれば世界を破壊せしめん力を持つと推測されている存在だ。


「――――お前は……あの方々の一柱を食らったと言うのか?」

「あいつから食ってきたんだぞ? だから」



「俺が逆に食らった。それだけだ」


(懐かしぃなぁ……ククク)


「教えてやるよ……俺の事」



※※※ ※※※

  


 ――――嘉山 ソウマ、彼は、自分より上の存在はいないと、信じて疑わなかった。


 彼は、財閥の御曹司として、この世に生を受けた。


 彼は、学校でも成績優秀、スポーツ万能。


 スクールカーストの最上位に常に君臨していた。


 彼は、人を見下し、媚を売る人間も、全て汚らわしく思った。


 それは、母親も、父親も、彼からすれば低能のクズでしか無かった。


『ああ、そうだ。どいつもこいつもクズばかりだった』

 

 そして、十六の春。5月2日、運命が動いた。


 目の前で母親と父親は、“上位三隊”の青色のローブを身に着けた骸骨の様な天使、ザドキエルによって殺されていた。


 執事も、メイドも、皆、その場で、血塗れとなって、床に倒れており、


 その場には、壊れかけのレコードプレーヤーから、交響曲第九番が流れていた。


「――――人の者の餓鬼か」


 不思議と恐怖は沸かない。

 むしろ、笑う。


『あれは衝撃的だった! まさに歓喜! ああも喜べたのは初めてだった!』


「――――狂ったか? まぁ、いい」

「――――食らわせてもらうぞ。“俺の姿を取り戻す為にな”」


 ザドキエルは冷酷に告げ、ソウマに歩み寄る。


 そして、機械の腕は液状化していき、ソウマの口から入ろうとするが…


「――――!? や、止めろ!」


 ソウマは、“自らザドキエルを食らっていく。”


『使命感の様に、食らえ! って、思ったんだよな、あの時……』


 グチャリ、グチャリ、と咀嚼音を上げながら、それ等を食らっていく。


「――――ガァァァァァ!! 痛い! 止めろ!」


 天使は、完全に液状化していた為、動けなくなっていた。


 段々と、段々と、貪り食われる。


「――――イタイ! イタイ! イタイ! タスケテ! タスケテクレ!!」


 何処から出ているかわからない声で、叫び続ける。


 それに対して、ソウマは笑顔のまま貪り続ける。


 やがて、完全に食らったと同時に…


 交響曲も、流れ終えた。


 ソウマは喜んだ。


 自身の豪邸も、思い出も、周りの死体も、全て凍らせて、喜んだ。


『そうさ……あれこそ真の“芸術”だった!』


 その後、彼は外に出た。


 惨劇の後を見ても、気にせず、唯我独尊の如く、満天の夜空の下を歩き続ける。


 そして、夜の荒廃したビル街で彼はリュウジと出会い、対天使部隊に所属する事になった。



    ……


  ※※※ ※※※



「――――お、お前……ほ、本当に人の者なのか……?」

「ククク、天使の癖して怯えてるのか?」


 狂気。バルディエルは恐怖していた。


 ジリジリと歩み寄る、ソウマに。


「――――う……」


 一歩 ――


「――――うぅ……」


 一歩 ――


「――――う、ウワァァァァ!!」


 斧を振り上げ、ソウマへ突っ込む。真っ直ぐに。


「フンッ!」


 斧を当てる前に、バルディエルの腕を掴んだ。


 掴んだ箇所は凍りついてゆく。


 段々と、全身が凍てつく。


 その温度は-1808.68度。


 周りの地面、ビルも一瞬で凍てつかせる。

 

 しかし、仲間達は、凍てつく事は無い。彼が、バルディエルだけに力を集中させているからである。


 しかし、その影響は、このビル街全域に広がり、止まった。


 バルディエルは、声も出せず、完全に、氷の氷像となってしまった。


「範囲はここ迄……」

「終わりだ」


 裏拳で、“バルディエルだった氷像”を壊した。


 壊れた氷は、塵芥に還った。


「ヒヒ……これで終わりだな」

「ライハ、終わったぞ」

「う、うん」


 ライハも、その光景の一部始終を見ていたため、ソウマに恐怖していたのは、言うまでもない。


side change


「凄え……」


 リョウは1km遠くのビルの近くから、双眼鏡を使って、その戦いを見ていた。


 此方側も凍てつき始めた時は、声を出して驚いていた物の…


 段々と、ある事が分かりつつあった。


(……この感覚だ、もう双眼鏡は要らないな)


 双眼鏡を捨て、その視力だけで、遠くの光景を見る。


 アスカと出会った際に、発生した力を、今、自分の力で引き出せたのだ。


 そして、ソウマの方向から、テツヤの方向である北西の方向へ目を向ける。


(あっちはどうだ?)


side change


「――――バルディエル……」


 ガギエルは、哀しんだ。


 同胞の死は、ガギエルの心を締め付けた。


 ガギエルはテツヤに言う。


「――――同胞が……死んでしまったよ」

「そうか……」

「ちょ、ちょっと、別に天使の事よ!? 気にしなくて良いじゃない!」

「……同胞の死は、天使も人間も共通じゃよ」


 テツヤは、寂しい感じで、アスカに言った。


 テツヤは、それでもガギエルに構え…。 


「それでも戦いは戦いだ……。

「最後まで…戦り合おうじゃないか!」

「――――それも、そうだな……分かった」


 ガギエルも、又構えた。


「――――最後まで……正々堂々とな!」


 戦いが始まろうとした、その時……。


「――――駄目だぜ? そりゃあ?」


 その声が、その場に響いた。


 ガギエルは、声の主の方向に見向き、驚愕した。


「――――あ、あなたは……!?」

「――――ガギエルゥゥ……変われ」

「――――戦いの場は、また作ってやっからさ……?」


 その存在は、赤いモヒカン頭、赤いジャケット、機械仕掛けの翼、そして、顔の下半分を覆う機械……。


「――――この、“カマエル”にぃぃ、任せとけよ〜……」



 “四大天使”の一柱が、この場に君臨した。

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ