雑多な短歌
わろき日と 思い煩う かの君と見知らぬ娘の笑い合う昼
きのこなら 育ちに育ち 五メートル 中に住めるか試みている
薬草を むしりて食みて健康になりし気のせし プラセボなれど
髪断ちて 露わになりし襟足に二つ並ぶは小さなほくろ
愛なりと 告げし唇 わが耳に 触れ合う指の溶けてひとつに
黒髪を 梳く指の先 われに触る 首筋寒く ぬくもりを抱く
朝の陽の われを照らして 乱れ髪 直して恥じて唇落とす
心から 慕いておりぬと告げぬれば ならばさらばと笑まれて涙
星空を 見上げる時の とこしえに 感ぜられつつ 傍らに君
明日ならば 君に逢えよう 学舎の隅で語らう それだけなれど
瞬きぬ まぶたの向こうに見えつるは ひとつの扉 招く異世界
空見上げ 雲上の都市 流れゆく 夢を見しとて うつつは厳し
抱擁を 交わす男女を見てしまう 男のほうはわたしの彼氏
渦巻いて 圧力増してく嫉妬心 あなたの「好きだ」できれいに消える
愛しいと 思えた人は 皆無だが 死んだ飼い犬だけは愛しい
君の着た 白いコートは黒い染み いらぬ埃を嫌うだろうね
傍らに 君がいればと思うけど 君の横にはあの娘がいるね
爪を染め 濃い紫の服を着て 音楽聴いて ドライブしよう
初めての スカート穿いて 姿見の前で微笑みピルエットする
昨日見た 夢の中では 私が木 あなたの役はラスボスだった
楽しいね 君は笑って言うけれど 僕の頭は秘密でいっぱい
お父さん 五人帰ってきたけれど うちには一人も必要ないよ
人間は 汚い怖いと君が言う 僕には君もきれいに見えない
寒空に ごめんと言ってももう遅い とっくの昔にあの子は逝った
思い出す 過去のあやまち 鼻歌で誤魔化せばほら 少し忘れる




