番外,優位部分を作る
チート主人公には2種類存在する。
オールマイティ型のチートと一点突破型のチートである。
前者は、イケメンで喧嘩が強く金持ちで家柄も良いという全部盛りである。
女達の発明してくれた言葉を使おう。
「スパダリ」である。
後者は、器用さだけが凄いとか、素早さだけが凄いとか、集中力だけが凄いとか。
秀でた一芸によって突破口を見出すタイプの主人公である。
本章で私が貴方に推奨するのは後者の再現である。
(別に自信があるのなら前者の振舞をして頂いて結構である。)
「一芸があるのなら、こんな下らない人生を歩んではいない。」
と貴方は反論するかも知れない。
だが、その反論は的外れである。
貴方は無芸な訳でも無能な訳でもなく単にアプローチが間違っているから、その歳になっても吹聴できる強みがないのだ。
才能や技芸は天や神が与えるものではない。
戦略によって組み立てるものである。
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例えば、スキル【料理】の話をしよう。
ラノベ主人公には男女を問わず料理に長けた者が多い。
彼ら(彼女ら)は卓絶した料理の腕前で、周囲の歓心を買い、徐々に己の地歩を固めて行く。
人間が何かを食べなければならない以上、実に汎用的なスキルである。
結論から言えば、このスキルさえ備えてしまえば、貴方の人生は劇的に改善する。
当然だろう、誰だって美味しい食事はしたいのだから、それを作れる人間とは仲良くなろうとする。
だがハードルは高い。
料理は奥が深すぎるからである。
達人と呼ばれる料理人ですら、時には苦悩し迷走する厳しい世界なのだから。
だが、結論から言えば貴方でも達人になれる。
何か一品だけ狂ったように練習するのだ。
例えば餃子。
毎晩自宅で餃子を作っていればどんな無能でも、そのうち人に出せる物が作れるようになる。
今はインターネットで簡単に情報収集可能な時代なので、世界中の餃子系統料理を調べてることも可能だ。
中国でしか流通していない餃子用の食器や調理器具を取り寄せるのも面白いだろう。
誇張抜きで一ヶ月真剣に取り組めば専門家を名乗れる。
無論、餃子はレッドオーシャンだ。
そこで競争に勝てそうにないならヒンカリを作れば良い。
かつてグルジアと呼ばれていたジョージアの料理である。
形状は… 餃子に酷似している。
餃子名人を名乗るのは困難でも、ヒンカリ名人なら名乗れる。
知っている者が少ないからである。
本場のヒンカリを食べた経験のある者も我が国では少ないだろう。
つまり、貴方がヒンカリを型通りに作れるようになれば、それだけで近隣における第一人者になれる。
これが優位性の作り方である。
練り上げれば、【スキル】と言っても過言ではない域に達する。
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タイトルには優位部分と書いたが、更に掘り下げると商品価値という意味である。
商品価値さえ作ってしまえば、貴方にようやく値段が付く。
需要が多ければ競り効果が発生し、その値段は釣り上がって行く。
今まで貴方が貧しかったのだとすれば、商品価値が無かったからである。
もしくは、貴方個人で換金困難なスキルしか身に着けてこなかった場合である。
例えば、核物理学は人類の技術水準を大きく飛躍させた高度な学問だが、それを個人でマネタイズするのは困難かも知れない。
だが、料理や散髪やマッサージであれば日銭が稼げるし知名度を高めたり上客を掴む事で収入は増える。
貴方の身に着けた学問・ノウハウが換金出来ていないのなら、それは市場に対する優位性がないのだ。
カネになる技術を占有しなくてはならない。
世の初代金持ちというのは、こういう局地的成功を積み重ねて労働者階級から這い上がっている。
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カネの話ばかりしてしまって恐縮だが、我々が現代資本主義社会を生きている以上、ライフハックを語るならカネに焦点を当てざるを得ない。
多くの異世界ラノベでも、成功は女以外では得てして金額で表現されるので、社会というのはそういうものなのかも知れない。
「ヒンカリを上手に作れる事が何の優位性か?」
と貴方は首を捻るかも知れない。
確かに小細工だが、特技・異能は人を評価する上での指標とされるのだ。
自分が知らない知識や技術を備えている者は、どうしても偉大な存在に写るし、多分野でそれを備えている相手には自然と畏敬の念が湧く。
この湧いた畏敬こそが【優位】なのである。
人生が上手く行かない者は、この【優位】を勝ち取った経験が圧倒的に不足している。
異世界ラノベの主人公がやたらと周囲にマウントを取るのも、【優位】を経験したことのない読者に充足感を与える為の文学的工夫に過ぎない。
私は、こういう麻薬で人生を麻痺させる事には反対だ。
建設的ではないし、何より男らしくない。
スペックは遺伝子が決める。
劣った者は優れた者に全面的に勝てない。
嘘だと思うなら大谷翔平と自己を比較してみれば良い。
だが、部分部分なら優位性は幾らでも産み出せるし、身に着けた部分的優位性を皆の為に行使するなら後発と競わずに済む。
(道徳的優位に基づくポジションの保全)
なので、誰も挑戦していない分野、それもカネになる分野に熟達してみよう。
マイナーであればあるほど、近隣のささやかな第一人者になれる可能性が高い。
それらのささやかな一番の繰り返しだけが、貴方に風格を与え、モブではない何かの役割を与えるのだ。
人が境遇から脱する為には、ただ一点の突破口があれば良い。
それを貴方に与える事が出来るのは貴方だけである事だけは覚えておいて欲しい。




