リージアの思いと母の形見
リージアを医務室に運ぶと、リージアが目を覚ました。
「私……負けた」
リージアが状況を確かめて呟く。
いつも以上に深刻そうだ。
一体何故だろう?
「師匠から教わった武術のおかげで、確実に刀の扱いや体捌きは上手くなっていたはず……。それでも、当てることが出来なかった……」
「リージアの戦闘スタイルとバリウスさんの高速移動は相性が悪いから仕方ないよ。そういえば、リージアは、なんでアイスエッジに拘っているんだ?」
氷の刃を作り出すリージアのアイスエッジ……
確かな練度で繰り出されるその魔法は非常に強力なもので、当たれば一撃必殺と言っても良いほどだ。
しかし、その戦闘スタイルは魔法使いの中では珍しい。
遠距離から攻撃できるというアドバンテージは何者にも代えがたい。
それを捨ててまで近接スタイルに拘るのであれば、リーチの差を埋めるだけのメリットがなくてはいけないだろう。
もちろん、少し考えれば、アイスエッジにいくつかのメリットは思いつく。
例えば、手から直接作用させる魔法であるため、注ぎ込む魔力を調整しやすいことなどが挙げられる。
ほとんどの防御魔法を無視できるだけの威力が出せるだろう。
とはいえ、リージアはアイシクルシュートのような魔法だって十分に扱える。
アイスエッジに頼らない道だってあったはずだ。
現に、同学年同士の戦いでこそ負け知らずではあるものの、飛行魔法を使うフレイアに負けているし、高速移動を使うバリウスにも負けている。
「私は……幼い頃から刀の魔道具を使って魔法の鍛錬をしていた」
「刀の魔道具を使っているのは、見たことがないけど……」
「私がこの学院に来る2年ほど前、大事にしていた魔道具”ゼラム・グラシエ”はなくなってしまった。犯人は恐らく……いや……なくしたという事実のみが大事」
「じゃあ、代わりの魔道具を用意しないの?」
「”ゼラム・グラシエ”は、魔欠病で亡くなった母の形見。私は決して”ゼラム・グラシエ”以外の魔道具を使う気はない。”ゼラム・グラシエ”をなくしてしまった、私の管理の甘さを戒める意味もある」
そう語るリージアの瞳はとても真剣だった。
きっと、大事な魔道具だったのだろう。
では、一体その魔道具はどこへ行ってしまったのだろうか?
「”ゼラム・グラシエ”の行方は探したんだよな?」
「ええ、色々情報を集めていた。でも、もうその必要はなくなった」
「……どういうことだ?」
「魔導頂上決戦の優勝賞品リスト……そこに”ゼラム・グラシエ”があった。どういう経緯でソティアスの国庫に収まったのかは分からない。きっと、盗品として流れたものが、どこかのルートから貴重品としてソティアスに渡ったのだと思う。でも、大事なのは、私が優勝すれば、”ゼラム・グラシエ”が取り戻せるということ。もちろん、チームとして賞品は話し合って決めないといけないけれど……」
「”ゼラム・グラシエ”はリージアにとって、大切なものなんだよな?」
「もちろん。私は、これまでずっと”ゼラム・グラシエ”を探してきた。あれは、母から受け継いだ大切なもの。私は絶対に魔導頂上決戦で優勝する」
リージアは、俺から見ても分かるほどに闘志を滾らせていた。
チーム戦だと言うのに「私が優勝する」と言っていることからも、リージアの”ゼラム・グラシエ”に対する並々ならぬ思いが伝わってくる。
「分かった。バリウスさんにも話してみよう。優勝して、”ゼラム・グラシエ”を取り戻せるように」
もらえる賞品はチームで一つだけ。
俺は別に賞品に興味はなかった。
そりゃ貴重な品々を見て、欲しいと思わないわけではないが、そこにリージアのような特別な思いがあるわけではない。
「ありがとう……師匠」
無論、魔導頂上決戦は国の威信を賭けた戦い。
そう簡単な戦いとはいかないだろう。
だが、弟子の頼みを叶えるのが師匠の役目だ。
「頑張って優勝しよう!」
絶対に、魔導頂上決戦で優勝する。
俺は、気合いを入れ直すのだった。
作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。
当然、【評価ptの数だけ戦闘力が上がる】チート能力を保持しています。
というわけで、広告の下にある☆☆☆☆☆より評価をしておいてください。
約束ですよ。




