大森羅僻覚法<だいしんらひがおぼえのほう>
「これくらいの距離なら、大丈夫だね」
すると、マホロは牙のような髪飾りを外し始める。
マホロがこの髪飾り外しているところは、見た覚えがなかった。
「そういえば、その髪飾りいつも付けてるよな」
「これは、巨龍の牙の先端だからね。あのときの思い出に、自分で作ったんだ!」
怒気を放っていたマホロの雰囲気が一瞬だけ柔らかくなる。
てっきり魔道具だと思っていたが、そうではなかったらしい。
マホロは髪飾りを外すと、それを地面に突き刺す。
ここらへんの土は柔らかいようで、あっさりと地面に刺さった。
「一体、何してるんだよ?」
「準備だよ」
そう言うとマホロは、指揮棒のようなものを取り出す。
それは、よく見ると小さめの杖だった。杖は、魔力の操作を補助する”魔道具”の一つで、時間をかけて自身の魔力を増幅する時に使うことが多い。
杖を使い、髪飾りを中心にして魔法陣のようなものを描いていくマホロ。
魔力が込められた魔法陣もまた、魔道具と同じように魔力の増幅に使われる。
「牙に蓄えられている魔力で記憶操作の魔法を使って、堂々と御祖父様に会うんだよ。記憶操作の魔法は強い力を持つだけあって、それに見合った特級触媒でなければ行使できない。もう牙に残った魔力は残り僅かだけど、1回だけならやれると思う」
「おい、あまり関係ない人の記憶をいじるのはマズイだろ。記憶操作が効かない人が居たらどうするんだよ!」
「最初から使われることを知っていたりしなければ、この魔法を防ぐ方法は存在しないよ。魔力を介して操作を行うからこそ、魔力が強い人ほどかかりやすい。常に自身の魔力を隠蔽し続けている人でもなければ、この記憶操作から逃れることは出来ないよ」
「記憶操作は色々と危険過ぎる。もうこれっきりにしてくれ」
「分かったよ……」
俺としては当たり前のことを言っているだけなのだが、マホロがしょんぼりとしているのを見ると、なぜかこちらが悪いような気がしてきてしまう。
マホロは魔法陣を書き終えると、魔法の詠唱を始める。
俺は、それを魔法陣の外から眺めていた。
詠唱自体は魔法を使うのに必須ではないが、イメージや思いが重要な構成要素となる魔法においては、詠唱があるほうが良いとされる。
魔法の名前だけを詠唱するパターンもあるし、長々と魔法の説明を詠唱する場合もあるが、肝となるのはその魔法をイメージしやすくすることだ。
――魔を持って伝えしは夢幻。ユウタくんの強さを世に知らしめたまへ。ユウタくんは最強。ユウタくんは最強。ユウタくんは最強――
なお、詠唱に決まった文句があるわけではない。
一部の広く知られた魔法では、イメージを共有しやすくするために特定の詠唱が付けられている場合があるが、基本的には詠唱は自由だ。
しかし……今回の場合……どういう詠唱だ……?
もしかしたら、最初にこの魔法を使ったのが『俺の強さを誤認させる目的』だったから、この詠唱になってしまったのだろうか……?
よくわからないが、深くは突っ込まないことにした。
そんなことを考えている間にも詠唱は進み、ついに詠唱の最後が紡がれる。
「大森羅僻覚法」
作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。
当然、【評価ptの数だけ戦闘力が上がる】チート能力を保持しています。
というわけで、広告の下にある☆☆☆☆☆より評価をしておいてください。
約束ですよ。




