空間の支配者3
一応、話の筋は通っているように感じた。
エメスは俺の身体を研究したい。
しかし、何者かが幻覚系魔法を使い、俺のことを狙っている。
そして、エメスは研究のために俺の身に何かが起こるのは避けたい。
だが、そうなると、一つ噛み合わない部分がある。
「だとすると、何故エメス先輩は俺に天理外道教団の情報をくれるんですか? それって、俺がより危険に足を踏み入れることになりませんか?」
「お主、意外と冷静じゃな。強引に話をまとめてしまおうと思っておったが、中々よく話を整理できておるではないか。……そう、本来であれば、我が天理外道教団に拉致された二人を、さっさと助けるべきところであることは分かっておる。しかし、我もまた、すぐには動けぬ理由があるのじゃ。いくら強力な魔法が使えようと、我の身体は1つに過ぎん。天理外道教団の情報をお主に渡し、少しでも生存する可能性を上げることが、最善だと判断したわけじゃ。我が何を言っても、どうせ、二人を助けに行くんじゃろ?」
ふーっと息を吐いてから、エメスが続ける。
「無論、強引にお主を拘束するという手もないわけでもない。じゃが……お主の身体を研究する上で、お主とは友好的な関係を築かねばならんからのう」
そう言うと、エメスは手を差し出してきた。
その手の上には、小さな立方体の水晶のようなものが乗っている。透明な水晶の中には、魔力が込められているようで、魔眼で見ると色がついて見えた。
「これを渡しておこう。我は直接動けないが、いざというときはこれに魔力を流せば……おっと、お主は魔法が使えないんじゃったな。であれば、いざというときは水晶を割るが良い。お守り程度じゃが、ないよりマシじゃろう」
俺は水晶を受け取ると、ポケットにしまう。
エメスが何者だろうが、俺はマホロとリージアを助けたい。
取引を断る理由は、なかった。
「受け取ったということは、取引成立ということで良いのかのう?」
「ああ、それで構わない。天理外道教団の情報を教えてくれ」
「良い取引ができて、嬉しいぞ」
こうして俺は、謎の魔法使いエメスから、天理外道教団の潜伏拠点について教えてもらった。
どうやら、奴らは郊外の屋敷に地下室を作り拠点としているらしい。今から向かうには遠いが、明日の早朝に馬で発てば十分に調査できるだろう。
一通り話し終わると、カチリという音が鳴り、元々居た場所へと俺は戻っていた。
エメスも元の様子に戻っていて、「それじゃあ、あたしは急ぎますからー。ユウタくん、取引を忘れないでくださいねー。絶対に死なないでくださいよー!」と言ってどこかへ行ってしまった。
時間にすれば、全部で15分程度のことだっただろうが、感覚的には1時間か2時間くらい経ったのではないかと感じていた。
本当に、夢かと思うほど非現実的な時間だった。
しかし、ポケットに入った水晶が夢でないと告げている。
エメス……一体何者なのであろうか。
だが、そんなことを考えている暇はない。
俺は気合いを入れ直すと、自室へと戻り、明日に向けて準備を整えるのであった。
マホロ、リージア……無事でいてくれよ。
作者である自分は、今まで数々の世界を救ってきた勇者です。
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約束ですよ。




