母娘の絆
9 母娘の絆
神願術を会得するためのつかの間の休みを終え。目的の穢れがある地へと着いた。山に囲まれた村に入ると特に穢れの異常は見受けれなかった。村の人も普通に農作業に勤しんでいる。
「何の異常もありませんねえ。闇照様。」
《ふむ····。》
闇照の黒い犬耳がピクッと動く。
「確かここの村の社に想根彦神という神が奉られているとはずだが。」
蚤童子は博識並みに説明する。
「想根彦神?。」
「縁結びの神様だ。あらゆる縁を繋いでくれる神様だよ。有名なのは恋愛成就かなあ。お参りするとお互い永遠に結ばれるという逸話がある。」
「永遠に結ばれる!?。ろうやお参りに行こう!。私達永遠に結ばれる!。」
闇月乃姫は鼻息を荒げやる気を出していた。
「いやジュネうちら神様だからご利益無効だろう。」
ガーン
「そうなの?。」
ジュネはかなりショックを受けたようで元々陰気で暗い素顔がもっと暗くなる。
《神だからご利益ないという訳ではないがなあ。他の神の特性が別の神に効かないという道理もない。》
闇月乃姫の落ち込みようをみて闇照は助言する。
ぱあっ
闇月乃姫は直ぐに笑顔へと変わる。
「ろうや、早くお参りに行こう!。縁結び縁結び。」
「いやうちらは想根彦神に用があるだろうに。」
「じゃ、ついでに想根彦神に逢いに行こう!。」
闇月乃姫がんぜんやる気をだす。
お参りが優先で逢うのはついでかよ。
矢座霧乃君(浪矢)は苦笑する。
想根彦神という縁結びの神様の社は竹林の中にあった。
竹林の並ぶ奥にこじんまりと建っている。前の子女思兼神様の社は山の頂上にあり。豪華な設備と整えられた社であったが想根彦神の社は特に豪華でもなく謙虚なかんじでひっそりと佇んでいた。
俺と闇照は想根彦神の社を確認する。
《ふむ、社に想根彦神がおられぬようだ。ただ社の穢れの名残が残ってある。悪い予感がする。急いで想根彦神を捜すぞ。》
「解りました。」
「ろうや、お願いするよ。」
闇月乃姫は会話の内容さえもお構いなく話を進める。
「ジュネ、神様いない社にお願いしてもご利益ないぞ。」
「じゃ、さっさと想根彦神とかいう神を捜す!。」
闇月乃姫は物凄いスピードで竹林を飛び出す。
「小僧、お前んとこの相棒の女神様なんつうか色々あれだな···。」
蚤童子は俺に同情するような眼差しを向ける。
「聞かないでください···。」
矢座霧乃君(浪矢)は大きなため息を吐く。
村中捜したが想根彦神様は見つけることはできなかった。
「見つかりませんねえ。」
《想根彦神様の気配はするのだ。この村にいるのは確実なのだかが···。》
闇照の獣の黒い瞳を細める。
「穢れも濃くはないが名残りの残りカスのようなものがあるなあ。想根彦神という神は村中移動しているのか?。」
蚤童子は気難しげに腕を組む
「もういい加減にしてよ!!。」
突然怒なり声が響いた。
怒なり声の方をみるとそこにはセーラー服を来た娘とその娘の母親と思われる親子が言い争いをしていた。
「京子!。」
娘の母親と思われる女性は娘の名を上げる。
「8年間もほったらかしにしといて!。今更、母親面しないでよ!。もう私のことはほっといて!。」
京子というセーラー服の娘はその場を駆け出す。
「京子!待ちなさい!京子!京子!。」
母親の静止を振り切って京子という名の娘は草の道を走り去っていく。
《········。》
その様子を闇照がじっと観察する。
「どうかしましたか?。」
《いや、あの母娘に穢れの気配がする。気になるなあ。あの人間の母娘を追ってくれないか?。》
「解りました。闇月乃姫は京子という娘は俺が追うから母親の方を頼む!。」
「ろうや、浮気は駄目だよ。」
「何でそうなる!。て言うか付き合ってもないだろうに!。」
ジュネの嫉妬深さに念押しされ二手に別れる
そして俺とジュネは村で目撃した親子喧嘩真っ最中の母娘を調べることになった。
ジュネ(闇月乃姫)視点
「はあ~。」
小川が流れる前で母親はため息を吐いた。
やつれた顔で目の前に流れる小川を疲れた眼差しで眺める。
「どうかしたの?。」
突然声が後ろからかけられたので母親はびっくりして後ろを振り向く。
そこには天女のような時代がかった和風の服を着た少女が立っていた。
ラベンダー色の独特な髪と瞳としており。寝不足なのだろうか目の下には隈と皺ができていた。
「貴女ここの村の子?。変わった格好ね。とてもかわいいわ。」
いきなり現れた少女に母親は取り敢えず天女のような格好した少女を誉めた。
「ありがとう。これコスプレ。」
「コスプレ?。祭りでもあったかしら?。」
母親は首を傾げる。
「何故ため息を吐いていたの?。話すといい。楽になる。」
短絡的な少女の喋り方に何故か母親はどこか安心感か安堵感を覚えた。
「私はねえ。母親失格なのよ。あの娘に私は何もしてやれなかった。私達は母子家庭でねえ。都会で出稼ぎの為に母に8年もあの子を預けていたんだけど。やっと都会で一緒に暮らす目処がたって京子に、あっ、京子は私の娘の名ね。京子に都会で暮らそうと言ったらあの娘は激しく怒りだして拒絶されたわ。当然よねえ。8年もあの娘にかまってあげられなかったんだもの。仕事で忙しくてあの娘が母の村で私のことをずっと帰りを待っていたことは知っていたわ。それでも私はあの娘の為を想い帰郷もせずに身を焦にして働いたわ。。それが仇となったのねえ。一度も帰らなかった私を。あの娘は深く憎んで拒絶したわ。当選の結果よねえ。
」
母親は力を抜けたように肩を落とす。
深いため息が漏れる。
闇月乃姫はそれをじっと観察する。
ジュネは母親のことを思い返す。父と母は別の世界では創造神であり。父神母神と呼ばれる創造神であった世界の大半を滅ぼしかけた自分を殺さずにそのまま深淵の山の底に封印する形で預けた。父と母を怨んではない。寧ろ父と母はまた元気な姿をして帰ってきてくれると信じていたのだ。こんな邪神にまでなりさがってしまった自分をまだ愛して信じてくれていたのだ。ろうやに連れ出され父と母と笑顔で再び再会を果たすことができたのだ。だからこそ目の前の人間の母の気持ちもそしてその8年も待っていた娘の気持ちジュネは理解できた。
「大丈夫だよ。京子は怨んじゃいない。私もずっと引きこもりだったけど私の父と母は私を信じて待ってくれたからきっとまた話せば解ってくれる。」
闇月乃姫は笑顔を浮かべる。
その笑顔には瞼にあった皺と隈も消えていた。
「そうね····もう一度娘と話してみるわ。」
母親は天女ような少女に励まされ。
娘との和解を決意する。
浪矢視点
京子という娘を追って竹やぶまできていた。
想根彦神の社を囲む竹林である。
竹林の中でセーラー服を着た京子という娘は鬱憤を晴らすかのように陰口をたたいていた。
「まったくあの女、今更何よ!。何年もほったらかしといて帰ってきたと思ったら「一緒に都会で暮らしましょう。」ですって?ふざけんじゃないわよ!!。」
浪矢は自分の母親のことをあの女と呟く時点で相当母親のことを怨んで憎んでいることを察した。
ざっ
地面に落ちて枯れた笹の葉を踏みしめたことで音が鳴る。
「誰っ!?。」
警戒するように京子という娘は竹やぶの竹林で怒鳴り声をあげる。
「どうも····。」
俺は姿を現し気軽に挨拶をした。
「あんた誰よ?。」
京子は眉を寄せ疑わしいげな顔色を浮かべる。
「神様です。」
相手の警戒感を和らげる為にも冗談を言ってみた。(冗談ではないけれど)
「ふざけてんの!?。用がないならあっちいってよね!。変な格好して。」
「これはコスプレだよ。気にするな。」
「そう、だったらどっか行って!。」
プイ
京子とかという娘に完全に邪険にされた。
矢座霧乃君(浪矢)は頭をかく。
「あんたと母親と言い争いしたの聞いたよ。」
「あんたには関係無いでしょ。ほっといて!。」
京子は冷たくあしらう。
このまま埒があかないので本題に入ることにした。穢れや穢れ神が関係しているか解らないが闇照が穢れの気配がすると言っていたので何かしら関係していると思われる。母娘問題に部外者が口を出すべきじゃないのは解るが穢れが関係している以上放っておくわけにもいかない。
人生相談なんて経験ないけれどやるしかない。
俺は了承もせずに身の上話を始めた。
「俺の親達は冒険家でなあ。いつも家を空けていたよ。他の親は遊園地とか家族旅行とか楽しんでいるのにうちの親は世界中飛び回って冒険ばっかでなあ。学校行事も祭日も家を留守にしたまま。ほぼ親と過ごした記憶もない」
「はあ~?あんたそれでよくグレなかったわねえ。」
京子は俺の身の上話にくいついた。
俺の親に関しては放任主義を通り越して放置主義であった。自分でもよくグレなかったのか不思議でならない。
「グレようかと何度も思ったけどなあ。それでも俺の親は世界中飛び回って。その数々の歴史的文化の遺物の品々を俺のお土産といって送ってきたんだよ。毎月なあ。民族品やら古代の遺物やらオーパーツ或いは失われた秘宝など怪しげなものまでこれでもかっていうくらい送ってきたんだ。最後に写真付きの手紙に冒険は良いぞ!と書かれたメッセージを見た途端何度かグレようと思ったことが馬鹿らしくなったんだよ。確かに俺は満足に親の愛情を育てられたわけじゃない。家の放置された状態だったし。それでも親が俺に対して愛がなかったわけじゃない。寧ろあそこまで熱心にお土産を送ってくるんだから愛されていたんだと今なら断言できる。」
「······。」
「あんたはどうなんだ?。8年も離れてて親はあんたに愛情を注がなかった時があったか?。」
京子は思い返す。
母へから毎週手紙を送ってくれていた。
最初は楽しみで読んでいたけど最後にゴミ箱に捨てるのが当たり前になっていた。
「私は····それでも··許せない!。ずっと待っていた。普通に甘えたかった。普通に愛して欲しかった····。」
京子は俯いて唇をかむ。
「ああ、そうだな。その辛さもその鬱憤もその陰口も全部母親にぶつけてやれ!。あんたがそれでも母親を許せないというのなら致し方ない。取り敢えず文句でも言って親子水入らずに語りあってみろ。」
京子は顔をあげる。
「解ったわ。母ともう一度話してみる。」
浪矢は久しぶりに親のことを思った。転生を繰り返してきた異世界の旅で母と父は今どうしているのだろうと帰るときは時間を調節して帰す約束であったがそれでも永く異世界の旅をしているのだから親は心配しているだろう。書き置きを置いていかなかったことも少し悔やむ。
京子は竹林を出ようとするがふと歩みを止める。
「そういえば貴方が本当の神様なら何の神様なの?。」
京子の問いに浪矢は首をまげ考え込む。
「縁結びかな。」
神という青年の言葉に京子の口元が緩み笑みがこぼれる。
「まるで想根彦神様ね。貴方が想根彦神なのかしら?。」
矢座霧乃君(浪矢)はフッと笑う。
「神様違いだ。」
京子は手をふり竹林を去っていった。
一人取り残された矢座霧乃君(浪矢)は神通力で闇照と会話する。
「あの母娘に接触しました。でも仲を取り持つような形になってしまいました。出過ぎたでしょうか?。」
《いや、それでよい。母娘にまとわりつく穢れはまだ晴れていない。引き続きあの母娘の様子を監視する。》
「解りました。」
浪矢はこの世界に転生して初めて神様らしいことをしたと笑みがこぼれた。




