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浪矢の異世界転生旅行記(改)  作者: 無なる者
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神願術


4 神願術しんがんじゅつ


「闇照、次はどちらに向かわれるつもりですか?。」


時渡津見の宮殿をでて巨大な池を通りすぎ。浮遊する天界の土地の境目に出る。

矢座霧乃君(俺)と闇月乃姫ジュネそして闇照とその犬耳の頭上に乗っかている蚤童子は森野珎女に送り迎えされていた。


《南方の村に行ってようと思います。噂ではその村に瘴気が充満し穢れがたまっていると。もしかしたら穢れ神がいるやもしれませぬ。》

「穢れ神?まあ、大丈夫なのですか?。」


森野珎女は心配そうに緑の眉を寄せる。

穢れ神の単語は何度か聞いたけどそれほど恐ろしい者なのだろうか?。穢れ神というから良いものではないし。悪神、邪神、魔神の類いかなあ。でも普通の神が穢れに染まると穢れ神に変わると言っていたし。少し意味合いが違うのかも。

矢座霧乃君(浪矢)は隣にいたラベンダー色の髪を靡かせる少女に視線を注ぐ。


「どうかしたの?ろうや。」


下瞼に目皺と隈を帯びた幼い顔が眉を寄せる。

ジュネは純粋な女神であったがとある悲劇に逢い。闇に堕ちて邪神となった。穢れ神もまたジュネと同じ境遇なのだろうか?。まだこの世界の穢れといものが何なのか解ってない。ただ神社で遭遇したあの歪な黒い塊。この瞳で直視した時何か絶え間ない程の絶望と哀しみと苦痛、強い念が込められた情というものが離れていながらも微かに流れ込んできたのだ。あの歪な黒い塊はまるであらゆる負の感情が寄り集まり宛もなくさ迷うそんな感じがしていた。


《心配せずとも無事に帰って参ります。私が穢れ神に何度も祓ってきたのをこ存知でしょうに。》

「ですが闇照、貴方に穢れにたいして耐性があるといっても限界があるのですよ。本来穢れは神格が高い神々が浄化するもの。闇照、貴女も神格は高い神ではありますが。しかし穢れを吸収し溜め込むことは本来神の責務としてはあってはないらないことなのです。」


女神森野珎女の穏やかな顔が今は悲痛に歪む。

闇照の黒い犬顔が困った顔を浮かべる。


《しかし森野珎女様。お言葉ですがこれは時渡津見様から承ったお役目でございます。私は多忙な時渡津見様に成り変わって穢れ祓いを行い。穢れを集めているのです。私の体内に穢れが溜まりきったら浄化する段取りになっております。》

「なればこそおかしいのです。本来戻った時に浄化を行えばよいものを。時渡津見は何故か溜まった穢れを放置したままにしているのです。」

《時渡津見様にも何が考えがあってのことでしょう。では私共はお役目がありますので。》


そう闇照が告げると俺とジュネに闇照が黒鼻をくいくいと動かし早く背中に乗るようにと合図をされる。

森野珎女の執拗な早々に立ち去りたいのだろう。

矢座霧乃君(俺)と闇月乃姫ジュネは闇照の黒毛の背中に飛び乗る。


《では森野珎女様、私共はお役目に行って参ります。》

「闇照っ!!。」


森野珎女の制止を聞かず闇照は地面を蹴り空へと駆け上がる。

空中を四足歩行の犬足で蹴りながら天界の浮遊大陸上空を駆けていく。


《全く森野珎女様にも困ったものだ。役目だと告げてもあまりにも心配症でなあ。過保護過ぎるのだよ。》


闇照は不服そうに長い牙の口が曲がる。

闇照は天界の雲を横切り下界に出る。


闇照の背中から下界の景色を堪能できた。

下界の景色には道路や自動車が通ってるところを上空から確認できたので人間界はある程度文明が進んでいることが判断できた。最初に降りたときも家々を確認できたが古風な造りの家々だったので近代的なのかどうか判断材料が足りなかった。ただこの辺りが古い感じなのはここが山奥の単なる田舎だと解ったからだ。異世界といっても自分とさほど変わらない世界を見ると違和感を感じる。ずっと異世界を旅して今のところファンタジーのような世界、勇者や魔王、竜、司祭のいるような世界にしか巡っていないのだ。これから巡る異世界にもファンタジー以外の世界を巡るのかもしれない。


『浪矢様お伝えしたいことがあります。この異世界で直ぐにクリエイスが見つかったので必要ないかと思われたのでがどうやら浪矢様この世界に永く滞在する可能性のようなのでお知らせします。』


突然闇照の背に乗っていた矢座霧乃君(浪矢)にラーシアの声が頭に響く。


何だ?。

『浪矢様、この世界では魔法、聖剣、魔剣という概念は存在しません。故に魔法を扱えませし。聖剣魔剣を出すことも不可能です。』


いきなりラーシアはチート武器使用不可否発言がとびだし。浪矢は大いに顔をしかめた。

魔法も聖剣、魔剣使えないってどうするんだよ!!。ほぼチート能力も皆無に等しいのにチート武器が扱えないんじゃ。かなりの全力ダウンになるだろうに。


『後、この世界には龍の概念があっても竜の概念が存在しないので竜にも転身できません。』


竜に転身とは竜に変身することである。前の世界の一つに竜に転生し竜騎士の騎竜になったことがあった。。竜に転生したことにより他の竜が存在する世界では竜に変身もとい転身できるのである。

竜まで転身できないなんて。いよいよ持って手持ち無沙汰な状態になった。。この世界の穢れというものと戦う羽目になるだろうが。効き目あるにせよないにせよ手持ち無沙汰な状態は正直本当に心許ない。


「ろうや、大丈夫。私がいる!。」


ラーシアの思念の会話を盗み聞きした前に座る闇月乃姫ジュネが自信満々に呟く。

そういえばジュネが一緒だった。

存在自体チート最強キャラそのものであるジュネ。どんな敵もジュネが入れば大抵負けない。寧ろジュネにかなう奴がいるとすれば神や始まりの世界位である。


『浪矢様、たった一つだけこの世界で使える力があります。』


ラーシアの声が頭に響く。

使える力?何だそれは?。

幾つかの異世界で会得した力などそう多くはない。大抵はチート武器とかで何とかやっていたのだ。


『因果術です···。』

「········。」


矢座霧乃君(浪矢)の瞼が大きく見開く。

因果術とはジュネのいた世界でとある女神に教わった神術である。


「因果術か·····。」


よりにもよって因果術とは····。

浪矢は因果術を教えて貰った今は亡き女神のことを想う。

彼女と司祭になることはなかった。約束したわけではない。未来を垣間見ることができた女神だった故に彼女は俺がジュネの司祭になることを知っていたふしがあった。

哀しい別れをした。

彼女の最期の言葉が浪矢の胸にズキッと痛みを与える。


「ろうや?。」


目の前に座るジュネは心配そうに顔色を窺う。


「大丈夫····。」


矢座霧乃君(浪矢)は作り笑いをする。

因果術はあるその物質の因果を併用する術である。術単体に意味はなく。何かと掛け合わせることによってより強力な効果を発揮するのだ。主に因果術は聖剣と魔剣に使っていた。現状聖剣、魔剣、魔法さえも扱えないのだから因果術は使えたとしてもあまり意味はない。となればこの世界の特有の力を覚えるしかない。

神社で穢れと対峙したときに闇照が使っていた術のようなものを思い出す。呪文の詠唱というべきか、或いは経文を唱えていると言うべきか独特な術であることが印象に残っていた。


「闇照様。穢れに対峙した時に使っていた術のどのようなものですか?。」


とりあえず闇照に術の内容を聞いてみることにした。

闇照の黒毛の獣耳がぴくと動く。


《?、面妖なことを聞くな。神願術を知らぬのか?。形は違えど根本的なところはさほど変わらない筈だが。》

「そうなんですか····。」


どうやら闇照のあの空中に文字が浮かばせるような術は神願術と呼ぶらしい。天界の新米の神で教育受けていたときに習っていたのかもしれない。だが転生して我にかえるまでの記憶がないので神願術を覚えていたとしても記憶がないから使えないのだ。


「全く!新米の神にくせして神願術も知らないとは神の修行の中何していたんだか?。」


闇照の犬耳の頭に乗っかりながら蚤童子は偉そうにしていた。


《神願術とは神だけが使える術だ。我々神々は想いを紡ぎ願い叶えることを生業としていることを知っているなあ。》

「はい。」


矢座霧乃君(浪矢)は深く頷く。


《神願術とはその想いを形にする術である。願言がんげんという想念を込めた文字を浮かび上がらせ。それを形として武器や技として使う。我々神々は想いを形に成し力を得ることが可能なのだ。》


想いを力にするそれが神が扱う神願術なのだと浪矢は理解した。


《神願術は私のように人形ひとがたでないものが行使すると炎や自然界の元素を操ることだけで手一杯だが。お前達のような人形の神なら自然界の元素だけでなく武器としても想念を体現することが可能だ。》


つまり神が扱う神願術とは想念、想いの力で魔法のように放ったり。剣や槍、弓など臨機応変に作れる術ということなのだろう。何か聞く限りかなり万能のような術のようだ。一つ術で多種多様な戦い方できるのだから。


《そのぶん強力な力を得るにはそれだけの想念が必要となる。どんな強いを想いを抱き。そしてどんな想いを神願に置くかでその体現する力が決まる。》

「想いを置く?。」

《言うならば感情だな。願言の文字を浮かび上がらせるときにどんな想いを込めるかで神願の力は決まるのだ。願言はあくまで依り代その文字にどんな意味と想いをもたせるかで力の性質やその威力が決まる。想念で強い想いと言えば怒りや憎しみだがこれに関してはあまりお薦めしない。》

「何故ですか?。」


強い想いと言えば確かに怒りや憎しみという感情があげられるけれど。


《怒りや憎しみという想念は主に穢れによくあるからだ。穢れは人間の負の想念が具現化したものだ。これに対抗する神願術に同じ怒りや憎しみを置くと干渉しあって逆に取り込まれかねないのだ。穢れは神に影響を及ぼす。穢れに身を宿せば穢れ神になってしまうからなあ。祓うことも可能だが完全に同化すれば滅するしか救う方法はない。》


矢座霧乃君(浪矢)は難しげに眉を寄せる。

神願術が想いを形に成す力なら穢れもまた想いによって生まれた存在想念しだいで諸刃の剣にもなりかねないということか。


《神願術の仕方は人の身をした森野珎女様から教わっている。時間があれば教えよう。》

「宜しくお願いします。」


この世界での戦いにはどうやら神願術を会得する必要があるようだ。魔物と言うよりは穢れは悪霊に近いのかもしれない。戦い方も経文を唱えるようで独特である。


《目的の村についたようだ。》


闇照は南方の穢れ神がいる可能性のある村の前へ降りる。

俺とジュネは闇照の背中を降り地面に足をつける。


《だいぶ瘴気が濃いなあ。穢れが大分漂っている。》


よく視覚すると確かに空気中に黒い霧のようなものが垣間見える。黒い霧は村の家々の周りに漂っていた。


「この村には子女思兼神シメヤカネという学業成就で有名な学問を司どる女神がすんでいた筈だぜ。身なりが小さなわらしの姿をした女神様だ。人間達から親しまれている聞いてるぜ。」


蚤童子は見た目に反してかなり博識があるようだ。


《何やら嫌な胸騒ぎがする。早く村に入った方がいいなあ。矢座霧乃君と闇月乃姫は村で情報収集を頼む。私の身なりでは驚かせるだけだからなあ。》

「?、私達の姿は人間には見えないのでは···。」


ジュネから神と人間の間の境界は聞いていた。


《希に見える人間もいる。私が人間達に術で見えるようにするから聞き込みを頼む。》

「分かりました。」


俺と闇月乃姫ジュネは頷く。


《御身願い奉るはその身に写し身を与えよ》

神願『神体現世しんたいげんせ


闇照が神願を唱えると矢座霧乃君(俺)と闇月乃姫ジュネが身体がポオッと光はじめる。


《さあ、行こう。》

「はいっ!。」


闇照と矢座霧乃君(俺)と闇月乃姫ジュネさ穢れの瘴気が漂う村へと入っていく。

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