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浪矢の異世界転生旅行記(改)  作者: 無なる者
5/13

穢れ神


5 穢れ神


村に入ると通りのすれ違い様村人を見かけた。

しかし村人は誰一人として顔を上げておらず。肩から手をだら~んと垂らしたまま俯きぶつぶつと何やら一人言をつぶやいていた。


「ああ~だりぃ~今日も農作業か~。」

「仕事行きたくない。何で仕事いかなきゃいけないんだよお?。」

「はあ、商売してもこんな村じゃ。儲けなんてたかがしれているのに。店閉めたい。」

「毎日毎日、家事、洗濯、掃除私の人生って何なのかしら?。」

「何で生きてるんだろう。死ねば楽になるのかなあ?。」


様々な人が無気力で力が抜けたように愚痴を吐き。時には何やら物騒なことを言い出す者もいた。


「こいつはかなり穢れの瘴気に充てられるなあ。本来なら穢れという想念は人間が発するものだが。これはどうみても村人全体に影響を及ぼしている。」


闇照の犬耳頭上に座る蚤童子が険しい顔を浮かべる。


《予想が的中したな。穢れ神がいる可能性が高くなった。》


闇照の指示に俺とジュネは村人達から聞き込みを始めたが誰一人無気力状態というか喪失感にまともな会話ができなかった。

最後に村の中でボロアパートに辿り着く。入居して無さそうなほどボロアパートだったが人の気配があったので訪ねてみる。


ピンポーン


「は~い。」


チャイムは正常に鳴り一人の青年がアパートの扉から現れる。


「どちら様ですか?。押し売りはお断りです。集金ならもう少し待って貰えませんか?。というか二人とも変な格好してますね。今日は祭りか何かですか?。」


ボロアパートから出てきた青年は何処かやつれていて顔の血色もいいほうではなかった。しかし他の村人と違って会話が成立していた。


「ええ、まあコスプレのようなものなので気にしないでください。」


神の衣服は古風な衣と袴や天女、仙女のような格好なので今の時代の下界の人間には奇異に見られる。


「はあ~そうですか。」


ボロアパートの青年は特に疑う様子もなく会話を続ける。


「いえ、この村に奉られている神様について知りたいのですが?。」

「神様?もしかして子女思兼神シメヤカネ様のことですか。この村では有名な学業成就で学問の女神様です。」

「その女神様について知りたいのですが。」

子女思兼神シメヤカネ様は本当に素晴らしい女神様ですよ。」


ボロアパートの青年はまるで本当に子女思兼神シメヤカネという女神を実際に見たような口ぶりであった。


「失礼ですが少し顔色悪くありませんか?。」

「ええ、体調が悪い訳じゃないんですよ。実は私五回も大学受験失敗して。もうこれで私もう6浪ですよ。はは、もう笑うしかないですよ。はは、はあ~。」


ボロアパートの青年は肩を落とし。 

力が抜けたかのようにため息を吐く。


「何か、こいつ····。穢れの影響を受けてるおもいきや。この人間の男そのものが負のオーラを発してるせいで穢れの影響を受けてないようだな。幸か不幸か知らんが····。」


蚤童子はボロアパートの玄関前で闇照の頭上に一緒に控え後方で呆れ返っていた。


「あれ?何か変な声が聞こえませんでしたか?。」


ボロアパートの青年はキョロキョロと辺りをみまわす。


「声が聞こえる?。」


矢座霧乃君(浪矢)は眉を寄せ困惑する。


《どうかしたのか?。》


ぬっ

闇照の巨大な黒い犬顔が扉の枠の隙間を覗きこむ。


「わわっ!?何だっ!!この巨大な黒い犬はっ!?。」


だだ どしっ

ボロアパートの青年は驚きアパート内の扉前で後ずさって尻餅をつく。


「見えてる?。」


玄関前にいだ神一同は騒然となる。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「そうですか····。皆様は神の方々なのですね。」


青年は玄関で礼儀正しく正座していた。

自分達と素性と事情を話すとボロアパートの青年はすぐに納得してくれた。


「俺達が見えるってことは子女思兼神シメヤカネ様と面識あるんだなあ?。」


闇照の頭上座る蚤童子は遠慮せずに話しかける。


「ええ、子女思兼神様には何度も受験落ちて、落ち込んでいるときに励ましてくれましたから。」


ボロアパートの青年は力のない顔が仄かに口元が綻ぶ。


《私達はこの村に穢れが蔓延しているという噂があってきた。子女思兼神様の様子を伺いたい。案内して貰えぬだろうか。》


玄関に入ることができない大きさなので玄関外からお座りしながら闇照がお願いする。


「分かりました。私も子女思兼神様のことが心配です。子女思兼神の社に案内致しましょう。」


ボロアパートの青年に案内され子女思兼神様の社までの農道を進んでいく。


「嗚呼~辛い辛い辛い~。」

「生きたくない生きたくない生きたくない。」

「俺は駄目だ俺は駄目だ俺は駄目だ。」


すれ違う村人の帰路につこうとする参拝客から阿鼻叫喚まじりにマイナスな言葉を発せられる。


「何か村の人達の様子が可笑しいです。落ち込む人も見かけたりしますが。参拝客にしかも帰り際にあんなに悲嘆にかられ落ち込んで帰るなどあり得ません。子女思兼神様は学業以外にも元気を与えてくれる神様として有名なんですよ。」


ボロアパートの青年は困惑顔を浮かべる。

整備された道を進んでいくと大きな森林に囲まれた山が目の前に現れる。

山の頂上には石垣の階段が伸びるように山の天辺まで連なっていた。


「この先が子女思兼神が住まう社がある境内です。」


闇照は石垣の階段の先を眺め黒毛の犬顔が険しく目を細める。


《穢れが漂っている。濃いなあ···。矢座霧乃君、闇月乃姫用心せよ。穢れ神であるならば祓う準備せねばならない。。》

「解った。」

「解ったよクロ。」


矢座霧乃君(俺)は闇月乃姫ジュネは素直に頷く。

村につくまでに穢れと穢れ神の対処法を教わっていた。まだ神願術に関してだけは教わる時間もなかったので教わってはいない。戦闘に加入できないが遣いとしてバックアップくらいはできる筈だ。サポートに珠とミュルもいるし。ジュネに関しては神願術を普通に使えるようだし。


石垣の階段をのぼっていく。長い階段ではあったが神になっているせいか疲れることはなかった。

長い石垣の階段が終わり。区切るように境内の敷地へと足を踏み入れる。鳥居を潜ると目の前には立派な社があった。整備され掃除もいきとどいており。村の人達からも本当に大切にされているのがうかがえる。。

ふと境内の敷地、社の前の真ん中にふわふわと浮かぶ小さなお人形サイズ位の少女の姿が目に止まる。

人形サイズの少女は長い黒髪を垂らし。振袖のような朱い着物を着ていた。ふわふわと浮かぶ着物の少女は顔を伏せ俯き。ぶつぶつ何やら呟いていた。


「あっ!?、あの方が子女思兼神シメヤカネ様です。子女思兼神様!同じ神の方々をお連れしました。」


青年は嬉しそうに石床を踏み駆け寄ろうとする。

闇月乃姫ジュネは眉を寄せ険しい顔しながら警戒していた。


「······。」


蚤童子もいつもの減らず口は一切発せず沈黙を保っていた。

ぐるうぅぅぅ

闇照の黒毛犬耳が逆立ち低い唸り声が上がる。


子女思兼神シメヤカネ様?。」


青年は声を嬉しそうにかけるが宙に浮く朱い着物を着た少女は顔を伏せたまま微動だにしない。

ぶつぶつ呟いていた口が段々と声量が上がる。


「私は無理私は無理私は無理私は無理私は無理私は無理私は無理私は無理私は無理私は無理私は無理私は無理。」

「···子女思兼神シメヤカネ様?。」


声をかけた青年も子女思兼神の様子がおかしいことに気付く。


「私は駄目だ私は駄目だ私は駄目だ私は駄目だ私は駄目だ私は駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ。駄目駄目駄目駄目駄目駄目目駄目駄目だめだめめだめだ。」

「子女思兼神···様··。」


子女思兼神シメヤカネの呂律がおかしくなっていることに声をかけた青年は大いに狼狽する。


「ギィえええええええええええっっっ!!!。」


ぶわああああーーーー

宙に浮いていた朱い着物を着たシメヤカネが奇声を上げるとシメヤカネの小さい身体からどす黒い何かが吹き上げる。


《危ないっ!!。》


闇照は咄嗟に飛び出し青年の襟首の衣服を咥え宙賭けて離れる。


「ギィええええええええ!!!ああ嗚嗚嗚呼嗚呼あああ~~~嗚呼嗚呼あああ~~~~!!」


声にもならない断末魔の咆哮が社が建つ境内中に木霊した。

宙に浮いていた子女思兼神シメヤカネの身体から歪などす黒い文字が浮かび上がる。


「何だ···あの黒い文字は?。」


まるで悪魔憑き、エクソシストのような映画を垣間見ている状況に矢座霧乃君(浪矢)はただただ言葉を失い絶句する。


「あれは···『うつ』だな。」

うつ?。」


いつの間にか蚤童子は俺の肩に乗っかっていた。


うつとは最も人間達の上位にある穢れの一つだ。人間社会では病気になるほど社会問題になっているときいている。。子女思兼神という女神様も人間の鬱という穢れに宛てられしまったんだろう。学問という神故に最も人間の穢れ『うつ』に関わりやすいからなあ。受験に浮かればよいが受からなければ人間達が発する絶望というなの鬱は相当なものだぞ。そんな鬱に間近で宛てられ。穢れに身を宿せば穢れ神になっておかしくはない。」


蚤童子は深刻な表情で語る。


「そんな·····。」


闇照に襟首を咥えわれ救いだされた青年の顔が真っ青になる。


「お願いです!。子女思兼神シメヤカネ様をお救いください!。貴方方あなたがたも神様なのでしょう?。お願いします!。」


青年は悲痛な顔で何度何度も深々とお辞儀をしお願いする。


「あの方だけなんです···あの方だけが····。私のような何度も大学に落ちて。親からも見限られたこの私を何度も励まして応援してくれてたんです。どうか子女思兼神をお救い下さい!。お願いします!!。」

「·······。」

「·······。」

「·······。」

《·········。》


目の前で必死に懇願する青年の姿に闇照の黒毛を帯びた犬顔は眉が上がる。


《あい解った····その願い承った!。》


闇照は吠えるように承諾する。

青年の顔はぱあっと明るく変わる。


《矢座霧乃君、闇月乃姫準備せよ。これより穢れ祓いを執り行う。》

「はい!。」

「うん···。」


闇照に控えるように俺と闇月乃姫はが身構える。

目の前には狂乱状態の子女思兼神シメヤカネが鬱というどす黒い文字とともに宙に滞在していた。

闇照から穢れ祓いに必要な道具を持たされていた。穢れを清める塩と穢れから守る魔除けの石、翡翠。神願術は会得していないが支援位はできる筈だ。

闇照な低い唸り声を発するとゆっくりと子女思兼神シメヤカネがいる場所まで脚を踏みしめていく。。

闇照は黒い炎を纏う犬身が子女思兼神シメヤカネほぼ目の前へと立ち塞がった。


「無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にた~~~~~~いいい!!!。キィええええええええええええ!!!!」


奇声を発するとともにどす黒い霞が子女思兼神シメヤカネ小さな身体から吹き出す。

闇照は怯むことなく地面に爪をつきたて身構えた。



       穢れ神『うつ

       子女思兼神シメヤカネ

       いざ、神浄じんじょうに·····

        参るっ!!


ドドンっ!!

何処からか太鼓の音が轟いた。








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