黒纏う犬編
ストーリー、キャラ名大幅に変更致します。
お手数おかけ致します。
ザザー
激しく雨が降りしきる神社の拝殿で一匹の黒い犬と幼い少年が賽銭箱の前で雨宿りするかのように寄り添い座っていた。
雨水が社の屋根で防ぎ。幼い少年の頭は安心したかのように寄り添う黒い犬に預けている。しかし幼い少年は何一つ身動きをしていなかった。口元からでる息遣いの呼吸音さえも幼い少年は一切発してはいなかった。幼い少年の体温は雨水に濡れたかのように酷く冷たかった。
ザザーー パラパラ
く~ん
雨水が無情に流れる境内で寄り添う黒い犬は哀しげに鳴き声を上げる。
二度と目覚めない主人である少年の身を離れることなく黒い犬は自らの黒い毛皮の身を寄せて寄り添い続ける
表情が変わることのない幼い少年の口元だけはほのかに上につり上がり笑顔を宿していた。
くぉ~ん くぉ~ん
黒い犬の哀しげな咆哮が神が住まう社に響き渡る。
何度も何度も懇願するかのように黒い犬は嘆き呻き願い吠え続けた。
············
黒の中に白はありますか?
闇の中に光はありますか?
例えそれがまやかしでも幻でも··
僕はそうありたいと願う···
黒纏う犬編
1 神転生
ふっと意識が吹き返す。
波が押し上げるように我に返る。
『浪矢様、無事転生が完了しました。』
異世界の案内人であるラーシアの声が頭に響く。
「ここは···。」
浪矢は状況を把握する為に辺りを見回す。
果実の生えた樹や畑が広がっていた。
田舎と呼べるかもしれないがどこか違和感を感じた。
自分の身なりを確認すると見たこともというよりは異世界では見たことのない服装をしていた。白装束なのだが垂れ下がるような感じて昔の日本の古墳時代の格好のようで上が衣、下が袴、革靴等まるで神話に出てくるヤマトタケルのような格好であった。
コスプレにしては雰囲気が徹底的なんだが···。
「ミュル?ミュルはいるか?。珠は···珠はどうでもいいな···。」
とりあえず浪矢は仲間を呼んでみた。
ミュルミュル
ミュルは浮遊しながら俺の頭上に降りてきて白い胴体を駆使して首に巻き付く。
珠もふわふわと飛んで後からついて現れる。
「主人っ!。私にたいしてだけ辛辣ではありませんか!?。」
ぷんぷん
ぷかぷかと珠は空中を浮遊しながら湯気のような煙を発して憤慨していた。
「珠は特に心配する要素がないだろうに。それよりもジュネは何処だ?。」
珠を無視し一緒にきた異世界の少女を捜す。
ラーシアの力が無くても自らの力で転生が可能な少女。世界の大半を崩壊させ。闇に堕ちた元女神であり邪神。正式名はジュネフェリア。前の異世界で司祭に転生し。なんやかんやで彼女の司祭となった。クリエイス回収後そのまま異世界の旅に同行することになり。一緒に転生の旅をしている。因みに彼女の世界の創造神であり父親から彼女にもしものことがあったら俺は八つ裂きなって殺され。尚且つ俺の世界が滅ぼされることになっている。異世界の親バカ神様なんて本当ハタ迷惑な話だ。ジュネはクリエイス回収を完了しても俺についていくと言い出したので父親である創造神は目の敵のように睨み付けながら渋々送り出したのだ。
「ここだよ。ろうや。」
紫、バイオレット、ラベンダー色の独特の髪と瞳をした少女が声をかける。
ラベンダー色の薄紅が塗られたような唇が魅惑的に微笑を浮かべる。外見上可愛らしい少女に見えるか彼女は深淵の底で三千年もずっと泣き続けていたせいで目元の下瞼にはひどい隈と目皺ができている。性格は可愛らしくは見えるが彼女は俺に関することになると相手を潰したり。その世界を滅ぼそうとする。通称ヤンデレ女神なのである。
ジュネの格好も何処か和風というか天女仙女をおもわせる着物を着ていた。
「ジュネも無事転生できたようだな。」
「うん、ここ私の世界と少し似ている。」
「そうなのか?。じゃあここにも神が普通にいるってことか?。」
ジュネはラベンダー色の髪を揺らし否定する。
「違う。私とろうやこの世界では神だよ。お揃い♥️。」
ジュネは頬を染め嬉しそうに笑顔を向ける。
ただ目の皺と隈のせいで不気味な笑みにしか見えないんだけれど···。
それにしてもまさか神に転生するとは前の世界では司祭に転生して遣える神の選ぶ形だったけれど。今度は神そのものになるとは。なんだか転生のバリエーションがおかしいことになっている。
「あ、いたいた。矢座霧乃君、闇月乃姫、桃華咲耶姫様がお呼びよ。皆既に集合しているんだから。」
独特に髪を結んでいる見知らぬ和風の着物を着た少女が声をかける。
どうやらこの世界での俺の名は矢座霧乃君でジュネが闇月乃姫という名らしい。何処か日本の古事記に出てきそうな名だなあ。天照や須佐乃という名があってもおかしくはない。
「解った···。」
矢座霧乃君(浪矢)と闇月乃姫は髪を結んだ和風の少女についていく。
桜のような華が咲き乱れる樹林の広場につく。そこには和服や着物、羽衣等を着た背丈のまばらで人間に見えないマスコットというか妖怪のようなキャラが沢山囲むように集まっていた。
「お連れしました。桃華咲耶姫様。」
「ご苦労様です。」
囲むように集まる中心にピンクの髪を結んだ羽衣を羽織る着物を着た美しい女性がお礼を言う。
矢座霧(浪矢)はピンク色の髪を輪のように結んだ羽衣の着物の女性に見とれる。
わあ~本当だあ~。特に胸の辺りにでっかい二つの桃がたわわに実っている~。
折り重なった着物の胸辺りからみえる二つの豊かな桃サイズ位の谷間と膨らみをじっ~と矢座霧(浪矢)は強く凝視する。
ツンツン
隣で闇月乃姫が袖を引っ張る。
「ろうやろうや、ろうやのその魅了されたその瞳潰そうか?。それともろうやを惑わすあの女のけしからん二つの桃を潰そうか?。」
下瞼にひどい隈と皺さらけ出し。闇月乃姫が隣で物騒なことを言い出す。
「ちょ、止めてよ!ジュネ!。本気で、本当に、勘弁してくれ!。」
(ジュネ)はシャレの通じない言葉にギョッと矢座霧乃君(浪矢)は顔をしかめ青ざめる。
ジュネは邪神故にシャレは通じないのだ。ヤンデレ属性もあるので更に厄介である。
「矢座霧乃君、闇月乃姫、貴方達も神としてもう少し自覚を持ちましょう。貴方方はまだ下級神ではあります。ですが日々精進すればいずれ上級神になることも夢ではありません。」
二人がふざけていると誤解した桃花咲耶姫乃命は和やかに叱咤する。
「はい、すみません···。」
矢座霧(老人)は深く謝罪する。
隣では闇月乃姫が不機嫌なまま桃華咲耶姫の桃並み胸を親の敵のように睨んでいた。
「日出弥様がお隠れになられてからはや数万年。私達神々は日出弥様のご意志を継ぎ。下界に住まう人々の想いを紡ぎ願いを叶えることを生業としてきました。」
『どうやらその日出弥様がこの世界の始まりの世界のようです。』
ラーシアのの説明の声が頭に響く。
「貴方達は生まれたばかりの神であり。下級神、言わば半人前と言えます。我々神々は人々の想いを紡ぎ叶えることで神格をあげていきます。或いは貴方方の誰かが位の高い上級神に遣え。奉公することで神格をあげることも可能です。各々のやりたいようにし。人々の想いを紡ぎ立派な神とお成りください。」
「は~い。」
周りにいた色んなタイプの神々が元気よく返事をする。
「それではこれより貴方方こ門出を祝い。私が舞いを披露致しましょう。」
周りのマスコットや妖怪のような色んなタイプの神々がテンションを上げて騒ぎだす。
桜のような大樹の前で桃華咲耶姫乃は美しい舞いを披露し始める。
それは美しい舞いであった。
扇子を器用に扱い。桜色の花びら舞い散る幻想的な場所で細身の身体をくねらせ見事な舞いを披露する。
しかし矢座霧乃君(浪矢)は桃華咲耶姫乃の美しい舞いよりも
どうしても着物の胸辺りに隠れる二つの大きな桃に瞳がいってしまっていた。
この異世界にはブラジャーのような抑えつけるものがないようで着物に隠れる二つ大きな桃が舞いを行う度にぷるんぷるんと激しく揺れる。
「嗚呼~何か···良い眺めだ···。」
うっとりと矢座霧乃君(浪矢)は顔を綻ばせる。
舞いを楽しむ筈なのに矢座霧乃君(浪矢)だけは別の意味で至福を感じていた。
「ろうや!やっぱりあの女神の桃!潰ス!!。」
「ちょ、駄目だって、ジュネ!!。」
闇月乃姫の猟奇的な行動を浪矢は何とか抑える。
幼き神々の門出が一段落終える。
周囲にいたマスコットや妖怪のような神々は下界という人間のいる世界に次々と降りていった。
どうやら自分たちがいる土地は遥か天の上空を浮いた浮遊大陸のようなものでここから下界の人間達の営みを観ることができるようだ。人間達から視界には入らないようであちら側とこちら側に見えない境界線が敷かれているようだ。
殆どの妖怪やマスコット的な神々は下界に降り。俺とジュネだけがまだ下界に降りずに取り残された状態でとどまっていた。
下界に降りるのは構わないがまだこの世界でのクリエイスの情報を掴んでいないのだ。情報を掴めないまま実際クリエイスが天界にありましたとなればシャレにならない。
「それにしても残念ですねえ。闇月乃姫、貴女ほどの神格があれば何処か上級の神に遣えるだけで直ぐに上級神になるのも夢ではなかったでしょうに···。」
桃華咲耶姫はかも残念そうな顔で闇月乃姫にたいして言葉を発する。
桃華咲耶姫乃命の会話からするにどうやらジュネは生まれつき神格というものが高いらしい。当然も当然だろう。ジュネは他の異世界の創造神の末の娘であり。実質女神であり邪神である。
創造神の末娘の神である神に神格が高い言われてもそれは当たり前な事なのである。
当の闇月乃姫は桃華咲耶姫のでっかい桃並みの胸の膨らみを親の敵の如く睨み返していた。
「私には神格なんてものはいらない。矢座霧乃君に(ろうや)だけいればいい。」
不機嫌に闇月乃姫は言葉を返す。
ジュネにとって神格などどうでもいいことなのだろう。寧ろ神格やうらやまれたり敬愛されたりすることはジュネにとって嫌なことであり辛いことなのだ。世界の大半を崩壊させ邪神に成り果て深淵の闇の底で三千年も泣き崩れた原因をつくった根本的な理由が神格という他者から上位に特別視されることだったからだ。ずっと深淵の闇の底で永遠の深い哀しみに泣き崩れていたところ偶然通りかかった俺が命懸けの説得で連れ出したのがジュネと俺のなりそめであった。ジュネは邪神になるまえはそれは美しく可愛いらしい誰からも好かれる美しい女神であったのだが。それが仇となり不幸を招いたのだ
神格や上級、下級神というこの世界の独特の神の理にジュネは何処か想う所があるのだろう。
ラーシア、クリエイスの反応は解るか?。
とりあえずラーシアから何かクリエイスの情報がないか確認することにした。
『浪矢様、どうやらその下界の方にクリエイスの反応があります。動いているようなのでなにものかが所持していると思われます。』
そうか····
矢座霧乃君(浪矢)は頷く。
どうやら下界に降りても問題ないようだな。神格を上げることには興味はないがクリエイスを回収するにも下界に降りることが必要のようだ。
「それでは桃華咲耶姫様行って参ります。」
矢座霧乃君(浪矢)丁寧な物腰で別れの挨拶をする。
「ええ、貴方方に日出弥様のお導きがありますように。」
桃華咲耶姫乃命がニッコリ微笑み。隣の闇月乃姫が不機嫌に隈と目皺を帯びたギラついた瞳で睨んでいる。
浮遊大陸の絶壁の前にたつ。大陸との区切りのある場所で人間達が住む山々と畑の風景が見渡せる。
ここから落ちたら死なないかなあ?。他の神々は普通に飛んでいったけど。正直自分が神に転生したとしてもどんな能力かどんなことができるか把握できていないのだが。
一応俺自身は神なのだろうが。まだ半人前の下級神のようだし。
「ろうや、大丈夫だよ。落ちても問題ないから。」
隣で闇月乃姫は屈託のない笑顔で安心させる。
珠はぷかぷかと頭上で浮遊し。ミュルは俺の首にマフラーように巻き付き癒しを与えてくれる。
「解った。それじゃ行こうか?。!。人々がいる下界へ。」
俺とジュネは勇気を振り絞り飛び降りた。
上空から下に覆う雲を次々と猛スピードで突き抜けていく。
あっという間に天空の空から地上の畑へと降り立つ。
矢座霧乃君(浪矢)は周りの景色を確認する。
今の所人っ子一人いないのどかな田舎の畑の景色があった。
遠くに家々も確認できる。
特に古いという感じではなく俺のいた世界の現代の建物と殆ど似通っていた。どうやら下界の人間達の住む世界は俺のいた世界の時代とさほど変わらないらしい。違いがあるとすれば神々がいることだけだろう。だが俺の世界、日本にももしかしたら見えないだけで八百万の神々がいて人間達を隠れながら見守っているのかもしれない。俺達のように····。
「ジュネ、俺達は人間からしたら見えるのか?。見えないのか?。それと正体とか明かしたりとかどうなんだ?。」
この世界での神と人間達の間にどれ程の距離感があるのか浪矢は解らなかった。ジュネがいた神が存在する異世界では普通に司祭と呼ばれる人間がいて加護を受ける神を選ぶ形になっていた。
「ここの神と人間の距離は特に近い訳じゃない。正体明かすことも稀にあるけど。殆ど干渉することなく遠くから見守っている形。」
「そうか····。」
ここの異世界の神と人間との距離関係はそれほど近くないようだ。
『浪矢様、近くにクリエイスの反応があります。今から行けば間に合います。
突然頭にラーシアの声が響く。
「本当か!?。さい先いいな。このまま直ぐにクリエイス回収出来るならこの異世界とも直ぐにおさらばだ!。」
浪矢は歓喜する。
こんなにも早くクリエイスが見つかるとは思わなかったからだ。
何処の異世界でもクリエイス回収に難敵がたちはだかったり。境遇の障害などあったりしてクリエイス回収が上手く事が進まないのが大半だった。それがこんなにも早く見つかるなんて。
『浪矢様、今から私がその場所を案内します。』
「頼む!。」
ラーシアの声の案内に矢座霧乃君(浪矢)と闇月乃姫は畑の農道を駆け出す。
『その農道を左角を曲がります。』
浪矢とジュネは地に足を蹴り疾走する。
神なのだから飛べばいいのだろうがやり方を知らないので今は走ることだけ集中する。
『そこの民家が連なる路を進み右側にみえる石垣の長い階段を登ります。』
ラーシアの声の指示に浪矢達は懸命に走り長い石垣の階段を全力で上る。
階段の長かった。この作りからして先にあるのは神が奉る神社であることを察した。
登る石垣の階段の先が区切りがみえ頂上にたち鳥居を潜る。
ひゅ~ バキッ
「なっ···。」
突如目に入ったのは予想外な光景であった。
黒い炎を纏った黒くて巨大な犬が得体の知れない歪な形をした黒い不確定なものと戦っていたのだ。
黒い炎を纏った巨大な黒い犬は何か文字のようものを浮かびあがらせ得体の知れない歪な黒い塊に放っていた。