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一話  人形はこの世界で暗躍する。

強い光がだんだん消えて、目の前には大きな空間と椅子しかなかった。


またここからスタートか。メトロポリス王国からのスタートは4度目だ。


今までの世界やり直しで、世界観が大きく変わったことはない。小輔は記憶をなくして、エリカあたりとの出会いのシチュエーションが変わっているだけだ。

おそらく小輔は今頃、転移したと思い込んでエリカと出会っているあたりだろう。


エレベーターを降りながら、メトロポリス王国を観察して考える。


まずは整理をしよう。自分ができることと、この異世界から目覚めさせる方法のルートについてを。


ビルの窓を見ると、また自分の顔は人形のカラクリでできていた。この顔はあまり好きではない。少し不気味だ。嫌いな物は壊すか殺す。腰にある2本の剣のうち一歩を抜き、頭に刺した。


グチュッ


気持ち悪い音を立てて即死し、意識を徐々に回復させながら、当たり前のように立ち上がる。


目の前にいた女性が代わりに頭から血しぶきを上げながら死んでいた。


呪いは健在だ。そしてこの世界の創造主と同じ人間なので、死ぬことはないチートを手に入れている。自殺は直径30メートル以内にいる人間が代わりに死ぬ。いない場合、この世界のランダムで選ばれた人間が死ぬ。他殺も同様に、代わりに人が死ぬ。

俺はアプローチの仕方を間違えていた。前回は、兄の峰 降死を再現して説得を試みたが効果はなかった。ならどうする。現実世界でもあいつは、エリカに片思いをしながら仕事をしていた。


そして事故で彼女を失い、勝手に夢の異世界に閉じこもっている。


冷静に考えたら気持ちが悪いな。まぁ、俺自身のことでもあるんだけど。


2回目の世界の時に俺はわかったことがある。この世界を壊せば夢から覚めるということだ。


文字通り2回目の世界線では、俺はファング王国とチバ王国を戦争させて両方をぶち壊した。その影響で小輔自身の記憶が蘇り、一瞬現実の意識が回復した。


にしても、この3回の異世界で俺はいつも不遇に終わっていた。だんだんイライラしてきた。俺だって事故は苦しいのに、あいつだけ良い思いに浸るためにエリカとイチャイチャしたり、仲間と冒険をしているご都合主義の世界なんて許せないなぁ。


メトロポリス王国の港を歩いていると、目の前の少年がゲーム機に夢中になっていた。某有名ゲームの序盤、姫を城に誘拐するシーンだ。 


わかった!


これだ!!


俺のこの世界でのムーブは、悪役として君臨してエリカを誘拐し、閉じ込めながら世界を裏から操る。小輔がいい感じに苦戦し、精神的に成長できるくらいの山場を用意し、あいつにこの世界の国を順番に壊してもらう。最後にエリカを救うためにメトロポリス王国に来た時に、この国も破壊する。


この世界を壊せば夢から覚めるはずだ。

決めた。俺は悪役だ。四天王も作り、雑魚の軍団も作る。全ての国のトップを俺の軍団の者にする。そして倒してもらい、エリカの居場所のヒントをちょっとずつ与える。


国も必ず腐敗させておこう。どうせ苦しむのは夢の世界の住人だ。関係ない。腐敗していれば、国を壊してもあの小輔ですら罪悪感を抱かないだろ。


太川ホワイトデー……あいつだ。3回目の世界で異常な強さを持っていた。

まずあいつを四天王にして仲間にしよう。目標は決まった。

「今回こそ上手くやってやる」

人形使いは気持ちの悪い笑顔を浮かべると、メトロポリス王国の地下へと向かった。


地下へと続く階段を降りた。いつ見ても酷い環境だな。まぁ小輔が創った世界だからな、文句を言っても仕方がない。


前回の世界では俺は太川ホワイトデーと敵対してしまった。色々試行錯誤をする時にあいつが邪魔だったんだ。だが、今回は味方にする。


太川ホワイトデーの家に着いた。そこはボロボロの石造りの家だった。


ジロジロと中を覗き込んだが、誰もいない。

「お前、誰だよ!?」


後ろから急に、腹の底から響くような力強い声で問いかけられた。


振り向くと、そこには少し小柄でピンクの髪をした、外国人のような顔立ちの男が立っていた。


太川ホワイトデーだ!!


思わずガッツポーズをしながら、いきなり握手を求めて手を握ってしまった。


太川は咄嗟の握手に驚き、反射的に俺の手を強く握り返すと同時に、反対の拳で容赦のない重いパンチを繰り出してきた。


俺はそのまま直撃を食らい、豪快にぶっ倒れた。

(これは……説得するのが余計に難しくなったぞ)

心の中で冷や汗をかきながら、俺は地面に転がった。

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