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俺は輝きに喰われた。〜憧れて上京した俺が、モデルの世界に足を踏み入れた話〜  作者: 黒井ツナギ
田舎

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#01 第一章 田舎

「夏休みで原宿は多くの人で賑わっています。」「今週の東京の天気は快晴で、お出かけ日和になりそうです。」「今週の特集は最近できたばかの…」

テレビのチャンネルを切り替えるが、どの番組も東京の話だ。

「東京の話ばっかり。東京行きたいー。」

外では蝉の鳴き声が聞こえる。夏休みだというのに、特にテレビを見る以外にすることがない。

「テレビばっかり見てないで、夏休みの宿題おわったの?算数まだやってないって言ってなかった?」

母の声が一階から聞こえた。

「まだー。あとでやるー。」

階段を上がってくる音がする。

ドアを開ける音がした。

「後で宿題やるから。」

全く母の顔を見ずに言った。

「はーぁー。」

「…美味しそう、このスイーツ。なんでこんな田舎に来たんだろう。わたしも東京で暮らしたいわ。この汚い家出て、もっと綺麗な家で暮らしたい。」

これは嫁いできた、母がよく言う口癖だ。


俺は、東北の緑の田んぼや畑の多い田舎出身。東京などの都会と比べると雲泥の差だった。土地が余っているため、無駄に広い駐車場を構えた地元寄り添い方のスーパーや本屋、コンビニ、ドラッグストアしかない。車は一人一台が当たり前。どこに行くにも、車がなければ不便な田舎である。

夏休み前の学校でも

「東京いいよなー、色々ショッピングしてみたいー」

「今度私、東京行くんだー。お土産みんなにかってきてあげるね。」

「今、〇〇っていうのが流行ってるみたいなの。だから私も行きたいなー。」

などと話していたクラスメイト。

正直羨ましいと思った。


俺は中学生になり、同じ町にある中学校は、同級生が入れ替わるわけもなく、小学校からのエスカレーター。小学校で80人程度いた同級生も、数人程が他の町に行ったり別の学校に行ったり。周りにそこまで大きな変化はなかった。

変わったことといえば俺だった。

小学校ではよく先生に指導されていた俺。

中学校に入学した途端、厨二病という病にかかったのか、少し真面目で優等生のような雰囲気になりたい年頃で、性格がガラっと変化した。授業中は静かに、真面目に話を聞き、終わりのチャイムがなると、毎回先生の所へ質問に行って気に入られようとしていた。

実際のところは、授業を真面目に聞いているふりで、内申点や先生からどうみられているか。それしか頭になかった。

次第に、クラスメイトから「どうしたんだお前」といったイジリをされ始めるようになった。

だが徐々に、「ホネ」「のっぽ」「ブサイク」といった外見のイジリへとエスカレートし、無視や授業中の嫌がらせも酷くなっていった。

そして、どんどん俺自身も冷静さを保てなくなっていった。

だが、俺自身はいじめが収まって欲しいと全く思わなかった。ちょっとでも大ごとになって虐めた側が制裁されればいいと思うばかりで、大袈裟な態度を取ったりするようになった。案の定先生の目にも留まり加害者は生徒指導。

これで他の奴らを蹴落とせる。そればかり考えるようになっていった。


最近の家での会話は、

「学校で何かあった?」

「いや、何もないよ。なんで?全然楽しかった。でも少し疲れたかなー」

といった、学校での出来事が親にバレているのかバレていないのか微妙な感じ。

しかしある時、家に電話が来た。先生からだ。

「ちょっと、輝くん。電話親御さんに変わってもらえるかな?」

そう言われ、たまたま家にいた母に変わった。

声は明るさを保とうとするが、母の顔が徐々に曇り始めるのがわかった。

夜、父が帰ってきて俺の部屋に来た。

「おい、お前いじめられてるのか?誰がやったんだ?今から殴り込みに行くからそいつの名前と住所を教えろ。」

母から聞いたのだろう。普段から怖くて厳しかった父だがその日は特に怒鳴り声をあげていた。

しかし、その時それに恐怖を覚えたとかではなく、俺はとても変な感覚に襲われた。

俺の世界が崩壊してると言うような感覚。

学校と家とでは別世界のような感覚で過ごしていたが、家というクリーンな空間に学校という黒くて汚い世界が境界線を超えて侵入してくるような感覚。陰陽で完全に分離していた境目が灰色になって混ぜられはじめたような感覚だった。

そして、今まで忘れかけていた感覚が少し戻ってきた。

小学校の時から時々あった感覚。普段、家族で車に乗って町から市内のショッピングモールに出かける道のり。そこを課外学習のバスに乗って同じ道のりや風景を見た時と同じ嫌悪感だった。

その一件があった後もいじめは収まることはなかった。

しかし唯一変わったのは、表沙汰になるようなことはもうやめようと。もう家族というクリーンな空間が汚されないように。

次第に家でも学校でも湧き出る感情を抑えた。無理やり代わりの感情を作った。

そして、俺は表向きの真面目キャラに同期するように勉強もした。

そして誰もこの件に関して知っている人がいないであろう、町から少し離れた、割と賑わっている街の普通科の高校に進学した。

校舎は割と新しく、生徒数も多かった。小中学時代とは違い、全てがキラキラしているように見えた。

今まで見たことも触れたことのない生物を見るような感覚で、それはとても新鮮だった。初めて、学校という存在が綺麗だと思った。

高校では友達も多くできた。中学生時代にはできなかった学校帰りの買い食いをして、新たにできた友人と帰りのコンビニ前でのたむろも新鮮さをさらに得た。

しかし、なぜだろう。表面に触れ合う感覚はあるのに、中まで浸透してこない感覚が湧いてくる。話していることも本心からではなく相手に合わせているような感覚。本当に心の底から楽しめていない感覚だ。

本当は相手が見てる俺は俺ではない。仮面を被った俺。これ以上自分が何にも侵されないようにするためにも。

そして、小中学で一緒だった数少ない地元の友達は、遊ぶ暇もなくなり、すっかり連絡を取らなくなった。


高校生の中盤になるとみんな進路希望という用紙を出すことになった。

将来を見据えてこれから生きないといけないんだぞというこの世の圧みたいなものを感じる。まだ子供な俺たちを見放すような感覚。

高校を卒業して進学するのかそれとも就職するのか。

俺はどうしたいのか真剣に考えた。

昔から東京というキラキラした世界に憧れていた。その記憶を思い出した。

特にやりたいことなんてない。とにかく東京に出たい。

だからとりあえず就職でも大学進学でもどっちだっていい。未定にして出した。模試でもすべて関東圏の大学をマーク。全く何をやっているかも分からない大学。とにかく東京の地名が付く大学を手当たり次第に8個マークした。

学期末テストでも高校を卒業できればなんでもいいやと思っていたので、最低限赤点を取らない範囲で最低限は勉強していた。もちろん勉強なんてそんなにやっていなかったので模試なんてどれもE判定で良くてC判定だった。


高校三年生になり、受験シーズンが近くなっていた。

その頃には、俺はとりあえず、就職希望に丸をつけていた。

周りは焦りを感じており、

「行きたい大学の模試判定、いい感じ。」「俺は推薦もらえたらいいな。」

といった会話が目立つようになっていた。クラスメイトからも将来どうするのかを聞かれることが増えたが、「就職かなー。」と適当に答えた。

家で父に聞かれる。

「お前進路どうするんだ」

「特にない」

というと、父は焦りを感じていた。

「お金は出すから大学にだけは進学しろ」

「なんで大学進学?」

「お前、今の時代大学行かないといい会社就職できないから」

と、よくある返し文句がきた。

何度かそういった会話をした。

進路決めも皆終盤になっていた。就職が決まった人、進路が決まった人もいた。俺もとりあえずといった感じで、なんとか東京方面の大学の推薦をもらえた。

家族から離れて一人で暮らすこと。東京では何しようといったそんな妄想が膨らむ。だって昔から行きたかった東京だから。

黒井ツナギです。

読んでいただきありがとうございます。

第一章を公開いたしました。カクヨムの方では第一章を分けてそれぞれに題名をつけていますが、『田舎』というタイトルにしてまとめてみました。

第二章からは少しずつ主人公の変化していく姿を楽しめるかと思います。

今後もぜひ応援の方よろしくお願いいたします。

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