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婚約者を庇って呪いで猫になりました~なかなか快適な猫ライフです~  作者: 燈華
番外編

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見合いに臨んだフェラルードの心情

無事にお見合いが終わった。


王太子の婚約者と側近を決めるお茶会から帰ってきた時はまさか彼女とお見合いをするとことになるとは思っていなかった。

ちょっと気になっただけだ。

それをうっかりと家族の前で口にしてしまっただけだった。


それなのに驚くほど短時間でグーリエ家とリラージュ嬢の調査を終えて正式に見合いの打診をした。

少し彼女のことを話しただけだったはずなのに。


見合いの打診をしておいた、と事後承諾で言われた時には本当に驚いた。

全くそんなことは考えていなかったからだ。

いや、全くと言ってしまったら嘘になるかも、しれない。

少なくとも彼女にもう一度会いたいとは思っていた。

だから素直に応じた。


こんなに早く見合いの打診が出来たのはグーリエ家とリラージュ嬢に何ら後ろ暗いことも瑕疵もなかったからだろう。

それどころか思いの(ほか)リラージュ嬢は優秀だったとか。

両親は思わぬ拾い物かもしれないと顔が綻んでいた。

それも、意外だった。


だがそれほど優秀な令嬢なら他の家が目をつけていてもおかしくはなかった。

見合いに応じてくれるかもわからない。

既に他の家と婚約話が進められていてもおかしくはないのだ。

実際元々その予定だった者たちは婚約を結び始めていた。


だが幸いなことに見合いの打診に対しては了承の返事をもらえた。

特定の相手がいなかったのか、何人かお見合いをして決めようとしていたのかはわからない。

だが見合いを受けてくれたことだけは間違いない。


つまりは、彼女と話せるのだ。

そのことが自分で思っているよりは嬉しかったことを覚えている。


見合いへの準備を進めていくうちにふと彼女ならあそこが気に入るかもしれないと思った。

そう考えたら居ても立ってもいられず母が妹のために調えた"絵本の四阿"をお茶会の場として使いたい、と申し出た。

フェラルードの恋のためなら、と母も妹も快く、若干面白がって、許可してくれた。


恋、ではないと思う。

ただ、気になっただけだ。

一度話してみたい、そう思っただけだ。

そう、それだけなのだ。






そして迎えた当日。

意外と緊張してグーリエ伯爵夫妻とリラージュ嬢を迎えた。


今日のリラージュ嬢はきちんと淑女の仮面を被っていた。

よくよく言い含められているのだろう。


両親といる間はずっと品のいい淑女の仮面を被って当たり障りのない会話に終始していた。

社交界でもきっとうまくやるだろう。

そうわかってほっとしていいはずなのに物足りなかった。


そうでなければ見合いだけで終わってしまう。

社交界でうまくやれないようなら両親はさすがに認めないだろう。

それもわかっているのに。


彼女の素の表情が見たい。

そう思ってしまった。

このような場所では見られるはずもないのに。


あの王宮のお茶会の後、彼女が弟や友人に見せていた笑顔が忘れられなかった。

友人と話していてもつい彼女を視線で追っていた。


彼女には全く気づかれた様子はなかった。

フェラルードには興味はなかったのだろう。

あのお茶会でも挨拶を交わした後はほとんど話していない。

爵位や容姿では彼女の気は引けなかったということだ。


もし彼女が爵位や容姿に惹かれるようなら、フェラルードは彼女に興味を持つことはなかった。

なかなかうまくいかないものだ。


そんなことを考えながら表面上は穏やかに会話を重ねていた。

このような場で素を見せないのはフェラルードも同じ。

だから素を見せてほしいという願いは矛盾しているのだ。


そのことはわかっていても望んでしまう心はどうにもならなかった。

こんなに自分の心が儘ならない経験は初めてだった。

だがそれを表に出さないだけの分別は残っていた。


双方の両親の(もと)での顔合わせは順調にいった。

そして二人で庭を散策してきなさい、と庭へと出された。


リラージュ嬢をエスコートしてゆっくりと庭を歩いた。

リラージュ嬢の歩幅は小さい。

それに合わせるのは苦ではなかった。

エスコートのためにと見せかけてずっと彼女を見ていた。


基本的に彼女は淑女の仮面を被っていた。

本当によくよく言い含められているようだ。

何となくだがあの弟にのような気がする。


だけど被っている淑女の仮面が時々外れる。

それを見るのが楽しかった。

仮面が外れたことに気づいて慌てて被り直す様も。


頃合いを見てお茶の準備をさせた四阿へと誘った。

彼女の好きだと言ったマカロンもきちんと用意してもらった。

彼女の好きなものだと伝えたら料理人が張り切ってくれた。


お菓子を前にして目を輝かせている姿は可愛かった。

令嬢にそのような感情を持つのも初めてだ。


あの"絵本の四阿"も喜んでくれた。

彼女もあの絵本の愛読者だったらしい。

人気の絵本だったからそれも不思議ではない。

妹のフィアニカもいまだに読むこともあると言っているくらい令嬢に人気の絵本だ。


四阿を使わせてほしいと頼んで本当によかった。

お陰でリラージュ嬢の心もほどけたと思う。

それまでよりずっと心を開いて接してくれたと思う。

……お菓子の力かも知れないが。


テーブルいっぱいに並べられたお菓子を見て彼女は目をきらきらとさせていた。

本当にお菓子が好きなのだろう。

気づけば自然と微笑みが浮かんでいた。


普段はお菓子などほとんど食べないのに彼女と一緒だと美味しく感じられた。

いくらでも食べられそうな気がした。

彼女が美味しそうに食べているからだろう。


だがそれだけではない。

何より美味しそうにお菓子を食べている姿を見ているのが楽しかった。

ずっと見ていたいと思った。


だから気づいたら告げていた。

「婚約者になってほしい」

と。


本来なら両親と話し合ってから判断しないとならないことだった。

それが頭から抜けていた。

どれだけ浮かれていたのだろう?


だけどリラージュ嬢は冷静だった。

ここでは約束できない、ときっぱりと告げられた。


それには密かに落ち込んだ。

だが続いた言葉に簡単に浮上する。


「私自身は前向きに考えさせていただきますね」


思わず微笑んでしまった。

どれだけ嬉しかったか彼女にはきっとわからないだろう。

自分でも驚いたくらいなのだ。


それはいい。

今はこれからのことだ。


リラージュ嬢はまだまだ未熟な部分もあるが能力は十分にありそうだった。

フェラルードを前にして浮わついた様子もなかった。

これなら大丈夫だろう。


あとは、両親を説得するだけだ。


読んでいただき、ありがとうございました。

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