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「・・・、本心?」
「ええ!ええっ!!!!」
ぎゅうっと掴まれた裾。
真っ赤なシャロン王女が力強く何度も頷く。
「本心ですわ!だってずっと貴方を見ていたから。
初めは友好国の貴国の事を学んだ時、王太子領で行われた水害対策に興味を持った事がきっかけでした。」
「・・・」
ビックリして固まった私に、目を伏せ祈るように静かに語りだした彼女。
「我が国の水害被害に困っている地域の為にお力添え頂けないかと送った親書に自らの手で真摯にお返事頂けたお手紙になんて素敵な方なのだろうと思いましたの。」
そうシャロン王女とは一時期、水害対策案と専門家の派遣について手紙のやり取りをしていた。
そこから脱線し様々なやり取りをしたことも記憶に新しい。
「我が国の災害の支援にも、自国のように真剣に取り組んで頂いて王族の鑑だと尊敬した事が始まりです。何度か我が国の国賓としてお越しいただいた時だって、どっかの王子たちとは違いいつだって紳士的で!!かっこよくて!!」
「・・・、シャロン王女殿下、それ以上はやめて頂きたい。
――――その、自分に都合の良い勘違いをしてしまいそうだ。」
段々ヒートアップしてきたのか、まるであの婚約破棄事件の時のこぶしを掲げて熱弁していた時のような話し方になってきている王女をそっと制す。
裾を握る手までが赤くなっているので、力を籠めすぎて痛くなっていないか心配になる。
「か!勘違いなさって!!だって勘違いじゃないのです!!」
「―――っ!!」
「ずっと、ずっとお会いした事のない時からずっと・・・っ!!
私が初の公務を貴方のお誕生夜会にしたのは、貴方に会いたかったからです。
婚約者がいるのなら仕方がないと諦めたかったけど、諦めきれず仕事にかこつけて会いに来てしまったのです!!」
シャロン王女が掴んできた裾を離し、今度はその細く小さな両手で私の肉団子のような大きな手を包み込むように握った。
「シャ、シャロン王女っ!!?」
「―――だって、わたくしはずっとアレクシス王太子殿下の事をお慕い申し上げていたのですからっ!!」
キラキラと輝く潤んだ菫色の瞳に嘘はない。
「―――こんな、こんな肉の塊のような容姿の私でいいのですか。」
「ええ!!どんな姿でも私にとってはとても頼もしくかっこよく映りますわ。」
「貴女まで、馬鹿にされてしまうかも知れません。」
「いいえ、これからは馬鹿になどされないのです!!
誰がなんと言ったって私がアレクシス王太子殿下はカッコいいと論破して見せますわ!!」
―――嗚呼、なんて夢みたいだ。
ずっとずっとこんな私では。と思っていた。
夜会で聞いた彼女の言葉にどれだけ救われたか。
改めて出会って、改めてあの日自覚した。
この気持ちを認めていいよと言われた気がした。
「―――シャロン王女殿下、私も貴女の事が好きだ。」
彼女に握られていない方の手で彼女の両手を握る。
嗚呼、やっと。
「―――アレクシス王太子殿下、大好きです!!」
花が綻ぶ様な笑顔でそうシャロン王女がそう言った。
ボワンッッ!!!!!