AM08:10 男
今朝も朝食は食べていない。
悪いことだと頭では、
理解しているつもりだが。
ギリギリの時間まで、
食欲よりも睡眠欲を優先したい。
歯磨きついでに寝癖を直し、
顔を洗いワイシャツに袖を通す。
クリーニングの有り難迷惑な
タグを掻っ切るのもお手の物だ。
夢から覚めて、
朝の一連の動作を行い、
無意識にいつもの駅に向かう。
途中すれ違う人の表情や、
何か楽しげな会話をしている内容すら、
自分の目にも耳にも入らない。
電車を待っているついでに、
携帯片手に今朝のニュースを流し読む。
特に興味もないのだが、
社会で生きていくためには
最低限の情報収集は必要なのだ、
と自分に言い聞かせ続けた結果の習慣。
ふと濃い目のコーヒーを
飲みたい衝動に駆られるが。
自販機に目を向けるだけで、
何事もなかったように
向かいのホームをぼんやりと眺める。
近隣の学校や病院の構内看板が、
やたら目にうるさい。
どれも同じような内容で、
今の自分には然程響いてこない。
そう、いつもと同じ。
何かが起きる訳でもないし、
何かが起きる予兆すらない。
今日1日の流れも、
あらかた予想ができるし、
業務上のイレギュラーな出来事も
今の僕には大した問題ではない。
そんな事を考えていると、
携帯の振動がメール受信を伝える。
「クリスマスに大切な人へ、
贈り物を贈りませんか?」
ああ、もう今年も終わりか。
どこかの小洒落た広告メールに、
今年の終わりを告げられる。
ただそんな些細な事も、
今の僕には大した問題ではない。




