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混血のバイト  作者: ルト
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赤と西と幼い恐れ

人妖町の中心にそびえる桜の周りには桜を取り囲むようにして墓地がある。

墓地は東西南北に分かれており、それぞれに呼び名が付いている。

西は【水子霊園】その名の通り種の違いなど関係なく若くして亡くなった子供達が睡っている。



早朝4時、【水子霊園】にコウジは鉄の鉈を持ちながら立っていた。

コウジの耳にはインカムからの仲間たちの準備ができたことの報告を伝える声が入ってくる。

コウジは口を開き準備完了を告げようとしたのだが。


『コウジ君、そこ【水子霊園】は特に危険だと思われる場所だから、何かあればすぐにさがって私と交代すること、いいね?』


個別の回線での店長からの本気の心配、そんなことは店長と知り合ってからの数年間ただの一度もなかった。

それが意味することは

そう思っているとコウジは自然と口角が上がっていった。

店長が本気で心配するような相手が現れるかもしれないのだ、もちろんコウジのような男が嫌がるわけはない。


「準備完了」


そう呟くように、けれどはっきりとコウジはマイクに言葉を発した。


『じゃあ、作戦開始』


という言葉と同時にコウジは駆け出した。

墓石の合間を縫ってコウジは走っていく、奥の桜に向けて、ただひたすらに。

すると何百という蕾がほぼ同時に咲き乱れた。

何百体の内数十体のナニカはコウジの周りに現れ攻撃を仕掛けてきた。

コウジは鉈を一閃させ目の前の半透明なスライムのようなナニカの核を切り裂くと他のナニカからの攻撃をバク宙をすることで避けた。

すると避けた先の上空に黒雲が発生しているのを見るとすかさずコウジは鉈を真上に投げた。

黒雲から発生した雷は真っ直ぐに鉈へ命中した。

落ちてきた黒焦げの鉈を黒雲に向けてコウジは投げる。

力を込めて投げられた鉈は風どころか空気を切り裂きながら黒雲の中にある核を切り裂いて、更に勢いを落とさず遠くに飛んで行った。

動きを止めた何十体のナニカをざっくりと見たコウジは


「へぇ、子供の怖いものって感じだな」


辺りには自然災害のようなナニカや包丁などの刃物を持った昔や今のホラー映画で出てくるようなナニカ、素直に怪物のナニカなどが居た。


「嫌だねぇ、子供は捻くれてないからやけに強力なんだよ…な!」


と己を鼓舞するように叫ぶとコウジは目の前の巨獣のナニカに飛び蹴りを食らわせると他には目もくれず桜目掛けて走り出した。

残されたナニカのうち半数はコウジを追い、半数は墓地の外側へと向かっていった。

コウジは走りながら時折そこら辺に落ちている小石を拾うと的確に追ってくるナニカの感覚器官を潰して行き、墓地を抜けて桜の根元へと着く頃には更にナニカの数を半数にまで減らしていたが


「ハァ…ハァ…」


そこにたどり着く頃には流石のコウジも息を切らしていた。

それも当然と言えば当然だ、ナニカの姿形は一体一体全く違うというのにそのナニカの感覚器官を正確に探り当てた上で、大小様々なサイズの小石をぶつける、止まっているならまだしも走りながらで。


「あぁ面倒だ、他の奴らはまだ来てなさそうだし、やってやるか」


するとコウジはまだ大量にある小石を構える。

ナニカの核を具体的にはナニカが無意識的に守ろうとしている部位を見る。

先ずは手前の人型のナニカに狙いを定めた。

剛速球とでも言うような勢いで放たれた小石は正確にナニカの核を破壊した。


「さて、何体が相手だ?」


そう言い小石を構えるコウジの目が捉えたのは、他のナニカが溶けて一体化する様子だった。

一体化して液体のようなカタチになったナニカを桜の根が吸収したかと思うと桜の木の幹から人型の凸が出来たと思うと姿をまるでコウジの鏡映しのように変化して、木から離れ落ちるとゆっくりと立ち上がった。


「なんだ、気持ち悪い奴だな」


そのコウジの言葉には誰も返すはずがなかった、普通のナニカ相手であったのなら。


「キモチワルイトカイウナヨ」


コウジの眼の前に立つ木の男がギシギシと木が擦れる音を鳴らしながら喋った。


「驚いたな、ナニカって喋れるんだな」


「オレハ、トクベヅダカラナ」


面白いじゃないか、そう呟くとコウジは残りの小石を全て木の男に投げつける。


「アブナイナ」


普通のナニカであれば抵抗なく体をえぐられていたと言ってもいい程の威力を秘めた小石は全て木の男の手によって受け止められた。

それからそのナニカに変化が起こった。


「ナニしてクレテルンダ、オレをホカノヤツとイッショニシタノか?」


木の男の体が木というよりも生物のような温かみのある肌に、声の不自然さもなくなっていき。


「オレの邪魔をするな、ゴミめ」


完全に人の姿へと変化した。


「おもしれぇ、いい勝負ができそうだ」


絶対的な力を秘めた相手を前にしてもなお、そう呟くコウジの口元には笑みが浮かんでいた。

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