第43話 一方、騎士ウーフェはパーティを募る④
「…………ウーフェだ。オルドルのリーダーで、騎士をしてる……」
三人の自己紹介を聞き終え、ウーフェも渋々名前と役職を述べる。
――クスクス……クスクス……。
自らの名を口にするだけだと言うのに、周囲の人間の笑い声が妙にウーフェの耳に障る。出処の分からない羞恥が否応なく神経を逆撫でしてくる。
「……自己紹介はこれで全員終わりましたね。それでは、この四人で噂の魔王討伐に参加する訳ですが……」
ドローランが眼鏡の縁を指先でくいと持ち上げ、他の三人の様子を窺う。
「魔王って、一体どんなのだろうね~。噂だと、普通の人の十倍デッカい大男だって聞いたけど~?」
ヒメが近くの樽椅子にポスンと飛び乗り、足をブラブラとさせながら知っている情報を口に出す。
「私は全身から邪気を放ち、見るだけで気を失ってしまうような怪物だと聞きましたが……まぁ、これらは流石に面白半分で誇張されたものでしょう。サツキさんは何か知ってますか?」
「…………何も。強いなら倒す――それだけ」
サツキは淡々と呟き、直ぐに窓辺の景色へと視線を戻した。
「そうですか。まぁ、考えは人それぞれですからね。私も報酬さえ貰えれば、文句はないので」
「へぇ~メガネくん、意外とがめついんだね~。そんなにお金ばっか集めてどうするの~?」
「……別に、老後の為ですよ」
「え〜? ほんとかな〜? ホントはエッなお店とか興味あるんじゃないの〜? メガネくん、童貞っぽいし〜♡」
「……まだ会って間もないというのに、随分と失礼な方ですね貴方……。決してそんな低俗なものが理由ではありませんよ。ただ、本当に金が入り用なだけです。……そういう貴方はどうなんですか?」
「アタシ? アタシは別にお金なんて興味――」
――ガタンッ!!!
会話に花が咲こうとする中、ウーフェが靴底で床の木材を強く鳴らした。
「お前ら! 関係ねぇ話してないで、さっさと行くぞ! 集合時間が迫ってんだよ!」
居心地の悪くなったウーフェは声を荒げ、一人先に集合場所へと向かう。
「……おじさん、感じ悪〜。何イライラしてるんだろ?」
「……とにかく、私たちも行きましょう」
「…………」
そうして三人は一抹の不安を覚えながら、自分たちの雇用主である男の後を追うのであった。
* * *
第一回「魔王討伐合同任務」。その概要は「Aランク級冒険者をリーダーとするパーティ四つからなる少数精鋭の部隊で魔王の出没した『南東の森』と『ニブルヘイム周辺地域』を調査し、魔王の拠点、もしくは発生源となった場所を明らかにする」というもの。
目的はあくまで討伐ではなく調査。来る本命のため、出来るだけ人的被害を最小限にしようというギルド側の采配だった。
以上の説明を受けたウーフェたちは同じく魔王討伐合同任務を受けた他のパーティと簡単な顔合わせを行った後、まずは第一の調査地点である「南東の森」を目指しながらそれぞれ移動を始める――。
「グズグズするなお前ら! とっととあの野郎を見つけて始末するぞ!」
「ちょっ! おじさん! ペースはや〜い!」
「……やけに感情的になっていますが、目的はあくまで調査ですよ。あまり突出した行動は――」
「いいから黙ってついてこい!」
『見てろ……! ここで手柄を立てて、舐め腐った連中に俺の力を思い知らせてやる……!』
ウーフェは周囲の制止する声に一切聞く耳を持たず、自分の歩幅でひたすら森の奥へと向かう。
そうして一人突き進んだ先で待ち構えていたのは、全長五メートルを超える威容を誇る大蛇。全身は蛇本来の柔軟な曲線を持ちながらも鱗一枚一枚が金属のように鈍く光り、刃を防ぐ盾としての機能を果たしている。
「……鋼鱗蛇、Bランクのモンスターか」
『この程度なら俺一人でも余裕で倒せるな。……ちょうどいい。まずは後ろの三人に、俺の実力を見せつけてやるとするか』
ウーフェは大金をはたいて揃えた剣盾を取り出して構え、驕りを手に嵌めたまま獲物に向かって走り出した。
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