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第41話 一方、騎士ウーフェはパーティを募る②

 それからもウーフェは仲間を引き連れようと街の周辺を捜索し続けた。が、悉く空振りを続けて時間だけが無駄に過ぎていく。


 それもそのはずで、現在エイシア・リプレ・ミディの三人はそれぞれ街から遠く離れた場所で単独行動を続けている。会えるはずもない。


「…………仕方ねぇ。時間もないし、ギルドで適当にメンバーを募るか」


 モンスター討伐時は基本パーティで役割分担を行い、危機(リスク)の分散と効率的な戦闘を心掛けるのが定石とされている。「単独(ソロ)でモンスターに挑むなんて命知らずの馬鹿がすること」という世間一般の認識を、例に漏れずこの男も持っていた。


 ウーフェは探し回った足でそのままギルドへと向かい、依頼の掲示板横に併設されているパーティ募集用の掲示板の前に立ち、用意した紙を中央にデカデカと貼り付けた。


 ――――――――――――――――――

 「魔王討伐合同任務 参加者募集」

 

 募集者:パーティ「オルドル」リーダー ウーフェ・グランゼル

 募集人数:3名(前衛職、魔法職、神官職それぞれ1名ずつ)

 条件:Aランク以上のギルド認定証所持者、またはそれに準ずる実力者のみ

 報酬:合同任務の報酬の10%

 ※前金なし、力量不足と判断した場合は容赦なく除外する


 腕に覚えのある者、名を上げたい者、歴史にその名を刻みたい者──その志を持つ者のみ、この俺の元に集え

 ――――――――――――――――――


「――よし、これならすぐに群がってくるだろ」


 なにせ自分の名前に加え、オルドルの名前まで出したのだ。この名を知らない奴は今やこの街にはいない。これだけでも冒険者(バカ)共の目は釘付けになるはずだ。


 そんなことを思いつつ、ウーフェは腕を組みながら少し離れた場所に腰を下ろし、掲示板の内容に気づいて声をかけてくる者が現れるのを涼しい顔して待ち構えた。


「さて……どんな奴が来るかな……」


 鼻先で笑いながらちらちらと掲示板に目をやるウーフェ。


 五分が経ち、貼られた紙を見て通り過ぎる冒険者に心の中で舌打ちをする。


 十分が過ぎ、次第に口元の笑みが消えて苛立ちが眉間に皺を刻み始める。


 やがて三十分が経過し、人が集まっているにも関わらず誰一人として声を掛けてこない現状にウーフェの顔が赤く染まる。


『何でだ……!? 俺の名が、どうして無視される……!?』


 掲示板には別の求人や依頼に集まる冒険者たちが屯している。それなのに誰一人としてウーフェの貼った紙の前で足を止める者はおらず、物の見事に避けられていた。


「……あれ? この紙、もしかして『あの人』の?」


 そんな時、ふと通りかかった若い冒険者の一団が掲示板を見て小声で話し始めた。その声はウーフェの耳にも確かに届いている。


「あぁ、ボコボコにされたんだってな。普段あれだけ威張ってるのに、いざ戦ってみればあっという間に完敗だったらしいぜ」

 

「それでまだ魔王討伐とか言ってんのか……。全く歯が立ってなかったくせに、無謀さだけは一流だな」


「パーティメンバーの募集かけてるってことは、仲間も呆れて全員いなくなったんじゃねぇの? ついていったら死ぬ未来しか見えねぇな、こりゃ」


「あ~あ。俺、オルドルの活躍見て冒険者始めたのに……いつからこんな残念なパーティになったんだよ」


「それはお前の見る目がなかっただけだって。ほら、こんな縁起の悪いもの忘れて、俺たちも依頼受けに行こうぜ」


 若者たちはくしゃくしゃと紙を丸め捨て、笑い話と共にそのまま立ち去る。それを見たウーフェの拳は震え、彼らを鋭く睨みつけた。


「ちょっと待てお前ら――あ?」


 声を荒らげて呼び止めようとするが、ウーフェの怒りなど誰も意に介していなかった。興味のない事柄として処理しているのは明白であり、相手にもされないという事実が一層自尊心に傷をつける。


「……ふざけるな……俺は……俺は、あのオルドルのリーダーなんだぞ……!」


 かつての「オルドル」はその活躍ぶりからギルド内の注目と尊敬を独り占めし、冒険者の多くがパーティへ加入したいと口にする程の影響力を持っていた。……それなのに、三年という汚れた月日がその名を嘲笑と不信の対象と変えてしまった。


 思わず唇を噛むウーフェはくしゃくしゃになった紙を拾ってその手で握り潰し、条件を緩和した上で改めて募集を行うのだった。




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