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第40話 一方、騎士ウーフェはパーティを募る①

 同時刻――ギルド都市カルゼリアでは魔王の存在とその力が知れ渡ったことで街全体が騒然としていた。


 広場には魔王の噂を耳にした者、手配書を手にした者、実際に魔王をその目で見た者たちが一堂に会し、魔王に関するあれこれを話し合っている。


「――おい、聞いたか? 厄災の巣窟から出てきたっていう、魔王の噂。これまたとんでもないのが現れたよな……」

 

「えぇ……。モンスターを従えて、この街を襲おうとしてるんでしょ? 本当に大丈夫かしら……」


「大丈夫だって。ここにはギルドの本部があるんだし、今頃冒険者たちが討伐に動いてるだろうからさ」


「けど……魔王が街に出た時、冒険者はみんなやられちゃったんでしょ?」


「それなら俺見たぜ! 何十人も冒険者が束になって戦ってたけど、これがもう全然ダメでさぁ~。魔王にはまるで歯が立ってなかったわ。正直、見てただけの俺でもビビッて漏らしそうになったし、あの力と邪悪さは本物だね」


「いきなり汚い話するなよ……。で、その後は確か『オルドル』が魔王と戦って撃退したんだっけ? やっぱり他の冒険者とはレベルが違うよな~」


「オルドル……って何?」


「知らないのか? 数年前くらいから活動してる若手のパーティだよ。受けた依頼はほとんど成功させるから凄く評判良かったんだけど、ここ最近あまり活躍を聞いてなかったからさ。久しぶりに名前を聞いてテンション上がったなぁ」


「あぁ、あそこか! 聖女様がいるパーティ! 教会からお墨付きを貰ってるってのはやっぱり安心出来るよな。前に知り合いが森で毒蛇モンスターに噛まれた時とか、聖女様が助けてくれなかったら確実に死んでただろうし、やっぱり頼りになるんだよ」


「森と言えば……南東の森一帯が今、封鎖されてるんですって。火事になって燃えちゃったんだとか」


「……そのことなんだけどさ。ギルド職員が話してるのを偶々聞いちゃったんだけど、あれも魔王の仕業らしいよ」


「えっ!? それ本当!?」


「本当本当。街で魔王が暴れた時に出てた黒い煙みたいなのが森の中でも見つかったんだって。しかも、ピンポイントで火事になってた所ばっかり」


「マジか……。けど、一般人の俺らが出来ることって言えば近寄らないようにすることくらいだし、この件はギルドや冒険者の人らに任せようぜ」


「それもそうだな」


 人々が聞きかじっただけの緊張感で話を弾ませる中、そのすぐ傍を自身の脈打つ速さで取り過ぎる男がいた。


『クソ! こんな大事な時に、何処行きやがったんだあいつら! こういう面倒事をさせるために置いてた駒だろうが……!』


 平静を装いながらも顔からは汗が噴き出し、内心激しい焦燥を渦巻かせるウーフェ。その様は一流パーティのリーダーを務める冒険者とは思えない程心許なく、傷ついた鎧や失った剣を新調したことで却って頼りなさが増していた。


『ギルドマスターに啖呵を切った以上、もう後には引けねぇ……。クズ共に舐められぱなっしってのも気に食わねぇし、とっととあいつ(アトス)を始末して俺の名声を思い出させてやらねぇと……!』


 頭ではそう考えているが、現実はそこまで簡単な話ではない。


 アトスをダンジョンで葬って以降、ウーフェは自分以外の三人だけで倒せるモンスターの依頼しか受けないようにしていた。否、そうせざるを得なかった。


 騎士という職についたこと自体「自分の身だけは絶対に傷つけたくない」という想いが故だったウーフェにとって、仲間の為に命を張って戦うアトスの代わりなど出来るはずがない。更に言えば、これまでピンチの時にアトスが抱えていた「彼なら何とかしてくれる」という仲間からの信頼を受けきるだけの器がこの男にはなかった。

 

 だからこそ彼は「指揮」という名目に隠れることを覚え、自分から戦うという選択を一切しなくなった。


 日が経つにつれて落ちる実力。それを補っていた三人がいないという事態は、彼がこの三年間で初めてする経験なのだ。


「……ダメだ、何処にもいねぇ…………! あの馬鹿共が!」


 街中を駆け回っても姿が見えない三人に苛立ち、ウーフェの口から遂に暴言が飛び出す。


 何故彼がここまで苛立っているのか。


 それは先の単独召集の際、部屋を出る直前にギルドマスターから参加を命じられた第一回「魔王討伐合同任務」――その集合時間まで、既に()()()を切っているからである。

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※本作はカクヨムでも連載しております。

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