第27話 識腐の触の力
「識腐の触……?」
「えぇ。私は生まれつき物の真贋や欠陥、あとは吐いている嘘なんかも何となく分かっちゃうんです。で、そうして弱点を見つけて優先的に腐らせる……それがこの『識腐の触』の力なんです」
ヘルが試しに生えている木の中から一本選び、軽い切り傷をつける。そして無傷の木と傷のついた木、両方を同時に触ると無傷の方がじわりじわりと溶けていくのに対し、傷のついた方は腐蝕の波が木全体に押し寄せ、あっという間に崩壊した。
「……なるほど。それでさっきあいつらと会った時、その識腐の触の力を使って心に植え付けられた嘘を嗅ぎつけた……ってことか」
ただ物を腐食させるだけかと思っていたが、そういえばヘルはこれでもダンジョンのボスモンスターだったのだ。なら、それくらいの力を持っていたとしても別におかしくはない。
「その言い方、なんか犬みたいで少し気になりますけど……まぁ、大体はそんな感じです。ちなみに、前に私のこと『重い』って言おうとしたこと――バレてますからね?」
「あっ」
マズいと思った次の瞬間、ヘルが仰向けになる俺の腹に全体重を掛けて乗っかってきた。
「――さぁ、私の能力を理解した上で再度問いましょうか。まずは手始めに……私のこと、本当に重いと思ってるんですか?」
「おい待て!? 何で急に尋問みたいなこと始まったんだ!?」
「質問に答えてください。さもないと息出来ないようにしますよ?」
「えっ、怖…………別に重いなんて、そんなこと思ってはないけど……」
『あ、いや待てよ……。物理的な重さならヘル一人分くらい軽いとは思うけど、これがもし精神的な重さだったら話変わってくるよな……』
……何で俺は余計なことを考えてしまったのだろうか。深く考えないでいれば真実で通せたはずなのに、嘘の生まれる余地を自ら作り出してしまった。
そしてそれは当然、彼女の力によって感知されてしまい――。
「……なるほど、この期に及んでまだ嘘を吐けると思っているんですね……? さぁ、どこが重いのか言ってみてくださいよ……ッ!」
手に蠢く靄を見てうっすら青筋を浮かべたヘルは少し腰を浮かせると、そのまま体をズドンと降ろし、そのままぐりぐりと俺の腹を抉ってくる。
「ごめんごめんごめん! ちょっとだけ! ちょっと思っただけだから許してッ!!!」
いくら柔らかい尻の辺りで押されているとはいえ、痛いことには変わらないし、何より色々と落ち着かない!
そうして懇願していると落ち着きを取り戻したヘルが再度腰を浮かせ、今度は両手を寝転ぶ俺の顔真横につける。
「……さて、これで嘘を吐いても無意味だと分かりましたよね?」
「くそっ……ズルだろこんなの…………」
このままやられっぱなしで終われない。何か、ヘルをギャフンと言わせる方法は…………いや、待てよ? これってわざわざ嘘を吐く意味ないよな?
「……では、今度こそ答えを聞かせてもらいましょうか? 私のこと、好――」
「――好きだ」
どうせ来るだろうと思っていた質問の答えを、俺は嘘偽りなく口にした。
「………………へ?」
「好きだぞ、ヘル。お前のマイペースなところ見てると元気出てくるし、困ってる時には何だかんだ言っても手を貸してくれるから頼りにしてるし、何より一緒にいるとすごい落ち着く」
「………………へ? へ? へぇっ…………!?」
「……なんてな。嘘への耐性はあっても、本音への耐性はなかったみたいだな」
まさかここまでストレートに返ってくるとは思ってなかったのだろう。色白の顔が茹で上がるのを見て、気が済んだ俺は口元を緩めた。
「さ、悪ふざけはこれくらいにして……あいつらの中にある嘘ってのをどうにかする方法を考えないとな。…………ヘル?」
「…………アトス、積極的になるとあんな感じなんですね……。ちょっと……いえ、かなり意外でした。でも、これはこれでありかも……?」
ヘルがぼそぼそと何かを呟いている。「どうした?」と尋ねるとブンブンと首を横に振りだした。
「いえ、何でもありません……。それより、アトスは仲間たちを元に戻したいんですよね?」
「あぁ、当然だ。……その感じだと、もしかして何か策があるのか?」
「えぇ、アトス――私と契約をしましょう。そうすれば、彼女たちを助けられます」
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