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第14話 驚愕の邂逅

 ちょうど真下が土道だったこともあり、何とか致命傷で済んだらしい冒険者。頭から地面に突っ込んで真夏の虫のように体をひくつかせている。


「ほら、手を放してやったぞ。これでいいか?」


「な、何が『手を放してやった』だ! こんな乱暴しやがって!」

 

「金目当てで襲いかかってきたお前らがそれを言うな。というか、今のは乱暴じゃなくて助けてやったんだ。礼の一つくらいしろよ」


 あのまま放置してたら確実に怒り心頭のヘルに跡形もなく溶かされていた。命と比べれば、これくらいのダメージは大したことないはすだ。


「た、助けただと……!? 舐めたことぬかしやがって……!」


「調子に乗るのも大概にしろよ!」


 今の一撃で彼らの警戒心に火が付いたらしい。各自武器を手にし、戦闘態勢を取る。


「……分かった、そんなに闘いたいなら相手してやる。来い」


 俺は武器を手に構え、同じく戦闘態勢を取るヘルに耳打ちする。


「いいか? 今回ばかりは好きにやっていいが、殺したりはするなよ? 溶かすのも皮か、せいぜい肉までにしとけ」


「骨はダメですか……分かりました。さっきのに免じて、多少は手加減します」


「よし、偉い。後で好きなだけ撫でてやる」


「......言いましたね? 最低でも三時間は付き合ってもらいますよ?」


「ちゃんと約束守ったら、な」


 そうして俺たちは二手に分かれ、騒ぎを聞きつけた他の冒険者たちとの乱戦が始まった。


「おらぁぁぁぁぁっ!!!」


 一番体格のいい男が怒号と共に鉄製のハンマーを振りかざして襲い掛かる。男の背丈に見合う鉄塊は当たればただでは済まないだろう。まぁ、当たればの話だが。


「ふんっ!」


 ――スパッ!


「――ぐわぁっ……!」


 筋肉を目いっぱい膨らませ、青筋を立てる両腕を軽く斬りつけると男の手からたちまち力が抜け、振りかぶったハンマーの重さに耐えきれずその場に崩れ落ちた。


「流石に比べるのは酷だと思うけど、パワーも打たれ強さも黒枯龍(あいつ)の方が百倍上だな」


 剣先についた僅かな血を払うと、背後から追加で二人の冒険者が左右同時に斬りかかってきた。二人の攻撃を正面から受け止め、まとめて大剣で振り払う。


「――がぁっ!?」


「――ぐえっ!?」


 衝撃を受け止めきれず、壁まで吹き飛ばされる二人。手を離した剣は遥か遠くの茂みへと飛んでいく。


「くそっ、数で押せば――ぐっ!」


 身を返して柄で肘打ち。突っ込んでくる武器を蹴り上げて回し蹴り。剣身を使って思い切り頭を殴打。


 立て続けに襲い掛かっては地面へ倒れ伏す冒険者たちを見ていると、これまで俺が戦ってきた相手が如何に規格外だったのかを痛感する。


 倒れる冒険者を見下ろしながら剣を向けると、残党となった者たちの顔が次第に恐怖で染まっていく。


「お、おかしい……こいつ、ただ逃げ回ってただけじゃ……!」


「今の一瞬で十人はやられたぞ……。しかも息切れ一つしないって、どうなってんだよこいつ……!」


 こんなので息切れなんかしてたら、あの地獄を生き抜けるわけないだろ。……本当に舐められてるんだな、俺って。


 ここは一つ、それっぽい雰囲気を出して戦意喪失でも狙ってみるか。


「……ふん。()()を狩るつもりなら、相応の覚悟を胸に刻んでから挑んでこい。さもなければ、こいつらの二の舞だぞ」


 ……やばい、言ってるこっちが恥ずかしくなってきた。だが恥をかいた分の効果はあったようで、冒険者たちが気圧されているのが手の震えや引き気味の足から読み取れる。


 あと一押しということで、今度は倒れる冒険者の一人を踏みつけ、大剣の刃を頬に沿わせてみる。そして血を流した剣を振り上げ、その赤を赤色を冒険者に見せつけてやると残党たちは震えた足で後退りをし始めた。


「ひっ……! こいつ、マジの本物だったのかよ……!」


「どうする……!? あっちもヤバそうだし、俺たちだけじゃどうしようも……!」

 

 あっち?


 すっかり任せきっていたヘルの方を見るとあちらも好戦的な奴らはほとんど片付けた後らしく、今は自分を化け物呼ばわりしていた火球使いの冒険者の顔を優しく丁寧に溶かしていた。


「――これで終わりですか? ほら、さっきまでの威勢はどうしたんですか?」


「ひぎゃあぁっ!!? 熱いっ! 熱いぃっ!!!」


 ちゃんと言いつけは守っているらしいが、皮と肉だけが徐々に徐々に削られていく様は却って見ている側に鮮烈な恐怖を植え付けている。


「クソっ……! 結局どっちも化け物じゃねぇか!」


「これで500万とかどう考えても割に合わねぇだろ! ギルドの奴ら、俺らをコケにしやがって……!」


 勝てないと悟ったのか、遂にはギルドに憎悪(ヘイト)を向け始める冒険者たち。キレたいのはこっちの方なんだよなぁ……。


「なぁ、もういいだろ? いい加減諦めて道を――」


 開けろ、と言おうとしたその時、たじろぐ冒険者たちを掻き分けて新たなパーティが姿を現した。それも、一番記憶に残っているパーティが。


「下がれ! お前らのような雑魚じゃ相手するのは無理だ! こいつは、俺たちが倒す!」


「な…………!?」


 俺たちを倒すと豪語する金髪の騎士と、付き従う三人の女性。一目見た瞬間、()()()()だとすぐに分かった。


 こうして実に三年ぶりとなる俺と仲間たちとの邂逅は感嘆ではなく、驚愕を以てして訪れたのだった。



 

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