183やはり歴史は繰り返す(ダン)
それからというもの何年という月日が流れた。
うん?
以前も似たようなことを話したことがあるような気がしたが、気のせいだろうか。仮に以前、同じ話をしたとしても、ほとんど同じ内容だからこの節は読み飛ばしてもいいだろう。
何年っていう月日、私には短い期間に感じてしまうが、人間社会を変えるには十分な期間だろう。そのあと、何が起きたと思う?
いろいろあったんだが、まず、RGF社について語るとしようか。
RGF社はここラビリンスでの資源開発会社最大手、大迷宮での鉱石の採掘や、エネルギー生成の事業を営む一方で、グローリーホールの開発を進めていた。けども、グローリーホールは巨大な垂直の底なしの穴。しかも、岩盤は固く、工事は一向に進んでいなかった。
そのグローリーホールに自ら飛び込む愚かな冒険者は過去に何人もいた。戻ってきた人間なんて、誰もいなかった。
けども、戻ってきた人間が現れたんだ。
タツヤと霞だ。それだけじゃない。それを契機に、穴に自ら飛び込んで死んだと思われていたベベルゼルドたちも戻ってきた。
そこから、にわかに噂が流れてきた。グローリーホールの底にはレッドダイヤが大量にある、てな。
そして、元RGF社の社畜社員のあの朱音でさえも、戻ってきた。これが決め手になった。
それまでRGF社がグローリーホールの開発を進めていたが、ついにRGF社が本気になったのだ。
RGF社はグローリーホールの開発に対して、とにかく大量の資金をかき集め、集中投資させた。
さらにちょうど気運のいいことに、一部の人間が地上に辿り着いた。そして、ノヴァリスという機械技術の先進している街と交易が始まったのだ。
RGF社は大量の資金を費やし、ノヴァリスから先進的な機械を大量に購入した。そして、それをすべてグローリーホールの開発に費やした。
あっという間だった。あっという間に、あの攻略不能とまで言われていたグローリーホールの底へとRGF社は到達してしまった。
それからは、大きな発見の連続だった。大穴のそこにある城、場所によって変化する重力、さらに続く奥へと続く大穴。だが、なによりも大穴の底には貴重で高価なレッドダイヤが大量にあったんだ。
とにかく、RGF社は、ざくざくとレッドダイヤを採掘してはラビリンスで大量に売りまくり、ノヴァリスへと湯水のごとく輸出した。
結果、何が起きたか?
レッドダイヤの価値が大幅に低下した。これが、経済の大混乱を引き起こしたのだった。
それまでのレッドダイヤは札束を何枚集めても買える代物ではなかったが、これが、紙切れ同然になった。
ダイヤを持っていたやつからすれば、阿鼻叫喚であったろう。
それまでラビリンスはな、冒険者たちは自身の力でランク付けされていた。そのランク付けも怪しいところはあったが、これに加えて、貧富の差がランクに加わった。
金を持っているやつこそが高ランク、金こそが正義、というよくわからん状況になった。
これが貧富の差を生んだ。
そして、貧しい者は貧しく、ラビリンスの街中にスラム街が出来た。
富める者は富み、豪邸やタワーマンションの最上階などに居座り、高みの見物をしていた。
そして、次にノヴァリスだ。
ノヴァリスは機械の町。先進的な技術を開発し、空を飛ぶ機械や、縦横無尽に移動する列車など、これまでもスゴイ機械を開発してきた。一方、ラビリンスはというと、鉱物の町。大迷宮の地下にはレアな鉱物があって、これで発展してきた街だ。
二つの街が出会えば、どうなるか。そこには交易というものが出来る。最初は互いにメリットがあり、最初はこれがうまくいった。互いに発展し、互いに良好な関係ができた。最初はな。
でもな、ラビリンスの冒険者は、魔術を使えるか、使えないかで人を判断する。魔術の使える奴と魔術を使えない奴には大きな溝があり、魔術の使える奴らが大きな顔をしていた。
一方で、魔術というのは、気を使うわけだが、地球の地下深くになるほど気は集まりやすく、地上で魔術を使える奴などほぼいない。
当然、ノヴァリスの民には魔術を使える者なんてまずいなかった。
だから、ラビリンスのデカい顔をしているCランク以上の冒険者たちは、ノヴァリスの住人に対して、デカい態度を取るようになった。
これがラビリンスとノヴァリスとの間に徐々に亀裂を生むようになったんだ。
そして、ある日、事件は起きる。
あるラビリンスの冒険者が、ノヴァリスの優秀な技術者をバカにした。魔術も使えないカスってな。
バカにされたノヴァリスの技術者たちは、報復でラビリンスへ高ランク冒険者たちに攻撃した。攻撃って言っても、最初は、殺傷能力の低いただのロケット花火をイタズラで撃ち込んだだけのようだった。
けども、攻撃を受けたラビリンスの冒険者たちは、報復として今度はノヴァリスの住人に魔術を撃ち込んだ。けども、地上では魔術はほとんど発動しない。発動したところで、線香花火程度の威力しかない。
それを今度はノヴァリスの住人たちは嘲笑った。その程度のお遊びで魔法使いごっこでもしているのと。
これが徐々に深刻な対立を呼ぶようになったんだ。
ラビリンスには、一応は自治政府があり、攻撃を止めるように言っているが、誰も言うことなんて聞かないさ。
ラビリンスの冒険者とノヴァリスの人間とで罵り合いが始まり、互いが互いを攻撃する。攻撃すれば、互いに報復を繰り返し、徐々におふざけでは済まされない状況になっていった。
それが、この結果だ。
見てくれ。この風景を。
ここは、リアとタツヤに教えてもらったラビリンスの一望できる秘密の場所。
昔は、頭上には提灯虫と人工の太陽の光の灯りが、足元からはラビリンスの街並みの灯りが、この大迷宮を照らしていたんだ。その光景は、美しいとも、幻想的とも、一言では言い尽くせないような美しすぎる風景だったんだ。
それがどうだ。提灯虫はいるが数は激減した。人工太陽は破壊され、消滅した。足元を見れば、まるで真っ暗で、破壊しつくされた廃墟のような街並みが一望できる。
時おり、レッドダイヤで大儲けした奴らの豪邸やタワーマンションも見えるが、多少の損傷はあるものの、いまだ健在だ。富豪たちは自分たちの家を守るために、独自にバリケードを設置したそうだ。
戦争だ。
まったく笑ってしまうよ。戦禍から逃げのびた人たちが作った新しい街のはずだというのに、結局、戦争だ。結局、自分たちで再び戦禍を生み出してしまうんだ。皮肉なもんだ。
人間というのはどうして、どうしてこうも争いが好きなんだろうか。




