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163その後…ラビリンスでの再会(タツヤ)

 

「タツヤか。久しぶりだな。」


 グローリーホールを抜け、ラビリンスの街へ戻ると、後ろから声をかけられた。

 振り向くが…果て、誰だったか?


「俺だ!グレゴリーだ。そんな、誰だったっけか?みたいな顔すんな。」


 俺も、若くはない。それなりの年だ。最近は人の顔をどうも忘れてしまう。

 確か、グレゴリーは地上を目指していて、地上に辿り着いたとかいう噂を聞いたことがあるな。


「あぁ…、グレゴリーか。」


 そして、グレゴリーの後ろからもう一人赤髪の女性が出てきた。朱音だ。


「タツヤさん、霞さん、お久しぶりです。」(あと妖精さんも…。)


 一応、妖精のほうは人から見えないことにしているが、朱音に見えるのだろう。小声でアリエルに挨拶する。

 朱音はちゃんと覚えていたぞ。女性の顔は忘れないのだ。


「久しぶりだな。グレゴリーは地上を目指していたと聞いたが、朱音がいるということは…、」

「あぁ、そうだ。地上に行くことができたさ。それに、天空未来都市、ノヴァリスにも行けた。朱音やベベルゼルドたちにも会うことができたさ。」

「そうか、良かったな。」

「リアの店で売っている地図だが、あんた、タツヤが作ったのか?」

「あぁ、そうだが。」


 レッドダイヤのおかげで懐は温かくなったが、地図調査も引き続きやっている。

 リアからは収入はもらっているけども、レッドダイヤの収入に比べれば微々たるもの。

 まぁ、趣味だな。

 何かをやってないと本当にヒマすぎて廃人になりかねない。最近はグローリーホールへと向かう地図よりも、地上をへと向かう地図を作っていた。最近は地上を目指す冒険者も多くて、そっちのほうが需要があるんだ。


「まったく、あんたの地図があれば、あんな苦労はしなかったんだがな。俺が出発する前にぜひ作ってほしかったもんだぜ。」

「まぁ、こっちにもいろいろ都合はあるのさ。そんでどうした?」

「たまには、こっちにも戻ってみるかと思ってな。それとな、ノヴァリスから少しいい話があるんだ。」

「いい話?」

「あぁ、交易の話さ。ラビリンスもノヴァリスも互いにあの戦禍を潜り抜けた者が作った街。互いに欲しいものがあるんじゃないかってな。その話をラビリンスの自治政府様に持ってきたのさ。」

「ふーん、そうか。あんたも元気にやっててよかったさ。」

「あんたもな。それによ、嬢ちゃん、今日も綺麗じゃないか。」

「あらやだ。そんな綺麗なんて。」


 と、後ろで霞が体をやたらにくねくねさせていた。


 そんなこんなでグレゴリーや朱音とも久しぶりに会うことができた。


「そんじゃ、俺たちは先に行くぜ。じゃあな。」

「タツヤさん、霞さん、しばらく、ラビリンスにいるのでお茶でもしましょう。」

「あぁ、構わないさ。」


 これが、俺たちの日常。なんて平和な世界だ。

 少し裕福で、平和で、のんびりと時間だけが経過していく。

 ちょっと前まで俺は、例のことがあったせいか、心がだいぶ荒んでいたようだ。

 こうして、改めてみると、本当に今回の転生は恵まれている。

 霞がいる。妖精がいる。グレゴリーに、朱音、ベベルゼルドたちもいる。こんなに恵まれた転生は初めてだろう。


 霞は、自分の想いを寄せていたあの人ではなかった。霞があの人でなくとも、もう一度だけ、一目だけでもいい。一言だけでもいいから、あの人と、もう一度会いたかった。けども、それを抜きにしても、こんなに幸せな世界はない。


 この世界へと転生できて良かった。


 それが正直な自分の感想。人には寿命がある。だから、いずれこの世界から自分は転生するだろう。わかっている。わかっているさ。けども、それを考慮しても、こんなに幸せな毎日が、楽しい。

 毎日が楽しい、なんて感情、転生して初めてだろう


「霞、アリエル、家に帰るか。」

「そうね。」

「そうなのです。」


 隣に霞、肩にアリエルを乗せて、楽しそうに家路に帰る俺たち。

 そう、そのときまでは、なんて幸せなんだと思っていたんだ。

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