第4話 3/3 トーシロー
3/3(火)
よし! 仕事が終わった! 今日は、結婚式に招待している人達にだけ、婚約破棄しちゃったことを説明した。
突き刺さる同情の目……意外と悲劇のヒロインぽくて、悪くない?!
なんてこと、あるか!!
今日の仕事終わりは中学時代の元カレのケンジと久々にご飯に行くことになった。
あんまり気合が入ってるとは思われたくないけど、綺麗になったとは思われたい。
ということで、髪はゆるく首元で結んだまま。
黒スキニーに、とろみシャツでも合わせて行きますか! このシャツだと、デコルテが綺麗に見えて良いんだよね。うんうん。ちなみにヒールも黒で合わせたら、脚が長く見えて良し。
あれ? 意外と私、気合入ってないか? なんて思っていたら、スマホが鳴った。
着信元は、マンションの大家さんだった。
『もう新しい方の入居が決まっていましてね』
なんとかトーシローさんという、彼は、もう妙齢のおじさまだ。
しかし、この人、声がめちゃくちゃ渋くてカッコ良い。
家賃をうっかり滞納したりした時に、かかってくる電話。そこから聴こえる彼の低音ボイスに、きゅんきゅん来ているのは内緒である。
意外と、年上でも大丈夫そう。
はあ、しかし、やっぱり新しい部屋を探さないといけないな。
ただでさえ、三月は忙しいのに。
とか行って、今日は帰ってますけどね……。
そうこうしてたら、待ち合わせのバーにたどり着いた。
久しぶりに会ったケンジは、相変わらず、ちゃらいオーラを発している。
そうだ、こいつ、手当たり次第に女子に話しかけるから、なんか嫌になって別れたんだったけ……。はあ、ユーイチとは大違いだわ。
しばらく一緒に飲んでいたら、ケンジから話がある、と真剣な顔で切り出された。
なに? なになに? この人、突然こういう真面目な顔することもあるから、中学時代はうっかり好きになっちゃったのよね。サッカーしてる時のケンジは、素敵だったわね……。
なんて、思っていたら。
「ダイエットのサプリに関心はないか? お前、痩せてるから、あんまり関係ないかもしれないけど」
「は?」
その後、ケンジはそのサプリメントの良さを延々と私に話し続けた。
「今月のノルマがあるんだ。頼む」
なんかどうも、ネズミ講? マルチ商法? な予感がする。
今、お金ないから無理。
慰謝料もらうだろ。
いや、とにかく無理。
押し問答を繰り広げた後、私達はバーで別れた。
おいおい、そりゃないよ……。
わびしいとは、このことなのだろうか?
よし、気を取り直して、また明日から良い出会いを探すわよ!




