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夢の中から落っこちて・・・   作者: 東山紗知子
二章 龍宮の養母
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26.蒼聖と龍宮の使者

裏事情をよく知る二人の話し合いです

いつの間にか夜も明け、明るくなってきた頃使者たちは館を帰ることになり蒼聖が見送りに立った。


「この度は当方に不適切な言動があり申し訳ありませんでした。 ご承知のように彼女は異世界から来て間もない上に一般人です。

この世界についても、まだ何も知らないといっていいくらいなのです。ですから、彼女の無礼は私が代わって謝罪します」 蒼聖が頭を下げる。


「いやいや、事情を知っている我々の配慮が足りなかったようだ。 こちらこそ申し訳なかった。 しかし良い方をルダ・マームにお選びになられたものだ。

流石は王妃様、お目が高い。余計な知識などなくとも、あの様に立派に殿下を育み下さった。

あの方がどれ程殿下に心を砕いて下さったか、殿下のみならずあの殻(カリス)を見れば一目瞭然でしょう」 老紳士が感慨深い様子で言うのに蒼聖は訝し気に返す。


「殻ですか?」


「左様、蒼聖公でも存じておらぬようですな。まあ我が国でも知る者は限られておるから当然ですが。 我が国の女人が子を産むとその卵の殻は母親の体内に吸収される。 

しかしながら人間であるルダ・マームの場合は吸収されずに幻物質として体内に残る事になる。 その殻(カリス)に玉(ラウム)への思いが宿っておるのです」


「はぁ、成程。残留思念ですか」 蒼聖は納得して頷いた。


「私は陛下が御生まれになった時もお仕えしておったので、陛下のルダ・マームにもお会いしたことがある。あの方の殻には崇拝と畏敬の念がこもっていて陛下を敬い大切に育てられたことが感じとれた。

陛下の妹君であった方のルダ・マームの殻もやはり敬う気持ちが強く出ていた様に記憶している。

だが、幸羽殿の殻はそれとは違いますな。 あの殻からは愛しいという優しい気持ちが伝わってくる。 まさに慈愛というべき想いでしょうな。 側にいると私まで癒されるようだ」 瑪瑙(めのう)が感嘆する。


「下手に教育など受けなかったのが良かったのかもしれませんね。彼女は我が子のように玉に話しかけ接していましたから」 蒼聖の言葉に瑪瑙が嬉しそうに目を細める。


「そうでしたか、それをお耳に入れれば王妃様もさぞ喜ばれることであろう。

ご身分故、お手元でお育てできないことを気に病んでおいでなのだ。

何とかできないものかと思ったのだが、慣例というものは中々変えることは難しい」 次第に目を伏せ小さなため息をついた。


「それにしても、幸羽様は随分と綺麗な魂をお持ちの方ですな。 初めてお会いした時は内心驚きましたぞ。

選外のましてや異世界の者だと聞き及んで、何故そのような女人をと疑問だったが、あの様では選ばれて当然ですな。 

実は私はもう隠居する身なのだが、どうにも気になって後継を差し置いてここに参ったのです。 幸い次代は我が子でわがままが通りましてな。 私の方が王の血が濃いので判別にはよろしかろうと思ったのです。

だがお会いしてみれば思いがけず素晴らしい方で安堵いたした。 選んだ王妃様の選択が正しかったということでしょう」


「選んだのは王妃様だけではないようですよ。 彼女の話では、受け渡しの際には玉の方から身体に飛び込んできたと言っていました」 笑いながら蒼聖が話す。


「なんと、それでは殿下もお望みの女人だったのですな。ますます結構ですな」 驚いたように目を見開いた瑪瑙がふと言葉を止め暫し思案した。


「もしや殻には中の殿下方の思いも宿るのやもしれませんな。 幸羽殿の殻を熟視していると何やら心が躍るというか浮き立つというか、そのような気持ちも感じるのだが少々違和感があるのだ。

だが他の者の思念だとすれば納得がいく。これも他の殻にはなかったことですな」


「殿下が中にいた頃上機嫌でしたから、そうかもしれませんね」


「新しい所見ですな。次代に申し次いで置くとしましょう」 蒼聖と瑪瑙は頷き合った。

そして長々としてしまった立ち話を終え使者たちは帰って行った。







蒼聖が戻ると、居間では早速もらった菓子でお茶を飲んでいた。 徹夜明けの所為か妙に盛り上がっている。


「あっ、蒼さん、お見送り済みました? ご苦労様でした。お茶飲みます?」 王子を抱いている幸羽の代わりに冨貴恵がお茶をいれる。 


「あっちのお菓子も結構イケルよ。ちょっと甘めだけど」 良太が揚げ菓子のようなものをつまんでいる。


「俺は酒かつまみなんかの方が良かったな」 「幸羽ちゃんへのお土産なんだから酒はないだろ」


蒼聖が皆を眺めていると、あくびをしている良太のシャツの背中に太郎がお菓子の包み紙を入れている。


「あれっ、太郎! お前何してくれてんの。こらっ!」 太郎はすぐ逃げて行った。

良太がゴソゴソと紙を取り出そうとしているのを見て歩がからかった。


「何か太郎のご機嫌を損ねたんだね」 


「心当たりないな、オレなんかしたかな」


「たぶん、良太君が太郎ちゃんの気に入ったお菓子の最後の一個を食べたからよ」 幸羽が笑う。


「えーっ、そんな事かよ。ああ、いや食べ物の恨みは恐ろしいからなぁ。バイト代入ったらなんかおごってやるか」



ワイワイと賑やかだ。 入れてもらったお茶を飲みながら蒼聖は、幸羽の腕の中の王子に目を向けた。 機嫌がよさそうに周りの者を目で追っている。

どうやらすでに視力はあるようだ。 


 引き続き、緑館に王子が滞在するので護衛期間が延長になってしまった。

蒼聖は仕事の予定が狂ったなと思いながら、この穏やかな場所に長く居られることを喜んでいる自分がいるのを感じていた。

骨休めもたまにはいいかもしれない。予約の取れない売れっ子?術者は笑みをこぼした。











瑪瑙さんはこれで隠居するのでもう出番はない予定です。今後は息子が龍宮の代表になります。


サブタイトルを付けるのが辛くなってきました。読むときはサブタイトルがある方が好きなんですけど…

ナンバーにしておけばよかった。  

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