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夢の中から落っこちて・・・   作者: 東山紗知子
二章 龍宮の養母
24/45

24.閑話 緑館の人々1

人物設定を兼ねたある日の一コマです。時期は19部の辺りです。


緑館の住人は不思議な人が多い。人間以外の種族が出入りする場所でもあり、自分からそうだと認めている人?もいるがそれ以外ははっきり区別がつかない。見た目と年齢が合わない人もいるし、その年齢さえ自己申告だ。


《蒼聖》

通称「銀の聖」 二十台後半に見える整った容姿の男。すらりと背が高く、その切れ長の黒い瞳に全てを見透かされているようで見つめられると思わず懺悔しそうになる。

実際見ようと思えば色々見えるらしい。 ちなみにいつも一つに束ねてある長い黒髪は所謂バッテリーとして力をためておく場所だとか。

職業は術者で主に人間とそれ以外の種族とのトラブルを防ぎ解決するのが仕事だ。そしてその能力は高い評価を受けている。なので常に忙しく世界中を飛び回っている。

好きなものはお酒、特に日本酒。 なんでも力に変換しやすいとかで酒豪の彼にとっては「美味しい水」と一緒らしい。

苦手というか天敵なのは「人間の若い生きている女性」だ。付きまとわれ生霊を飛ばす彼女たちには迷惑している。 下手に祓うと健康被害を与えることになるので加減が難しいらしい。 なるべく接触を避けているんだとか。 美形も大変である。


《宝石屋》

レオンハルト・マチルダ・バルバロ-ザ 青い目で背中まであるブロンドを縦ロールにしている。フリルとレースを愛する三十歳前後の男or女。

周期的に性別が入れ替わる種族らしいが詳細は不明。番が定まれば性別も固定するらしい。

精神思考は男の傾向が強い。女の時はどこに隠していたのかと思うほど立派な胸をもっている。 

職業はアンティークジュエリーの販売。 彼方此方にいる顧客回りと仕入れで不在も多いし、行きと帰りで性別が違うことも多い。 大袈裟な物言いとしぐさで顧客を煙に巻く自称「レディ達の騎士ナイト




昨日戻ってきた蒼聖は一晩休んだだけでまた出かけて行った。 食事時にその話が出ると、女宝石屋ことマチルダがいつものように大袈裟に言い立てた。


「まあ、蒼聖公は相変わらずご多忙ですのね。あれほどの方ならご自身が動かれなくてもよろしいでしょうに、本当に謙虚な方ですわ。どこぞの名ばかりの教祖とは大違いです」


「 だけど今回は蒼さんクラスじゃないと用が足らないんだってさ」


「そうなのですか、それでは致し方ないですわね。 公位を持つ方々はおいそれと動かないでしょうし、まあどうせ、あの方ほどの働きは望めませんしね」 マチルダはため息をついた。 


そんな様子を見て幸羽は、同じ人?とはいえ宝石屋は女のときのほうがおしゃべりな気がするな、などと思う。


「そう言えば前から気になっていたんだけど、何で宝石屋は蒼さんを蒼聖公って呼ぶんだ?」 良太が食べる手を止めて聞く。食べ盛りの男子の茶碗は小どんぶりだ。


「それがあの方の正式名称だからですわ。あの方は『聖』までの修行を修め『公』の位を持っておられるのですよ」


「なんだそれ?」首をかしげる。



「聖ってのは最終段階の修行が終わったってことだよ。 普通は終わらせるどころかその修行を始められるところまで行くのも大変らしいぜ。

そんで、『公』は世界共通の能力者の位だな。『公』は上から二番目で世界に五人しかいねぇ」


「すげぇな、さすが蒼さん。五本指に入る実力かぁ。あっ、でもまだその上がいるのか」


「その上は『皇』で三人いるはずだが今は一つ席が空いたままだな。二人とも宗教団体の教祖様に納まっているぜ」 朗の説明にマチルダがフンと皮肉気に鼻息を鳴らす。


「皆、名ばかりの輩ですわよ。実力はあの方には及びませんわ。その証拠に二方とも修行段階を公表していません。秘匿しているなどと言っていますけど、途中棄権した口ですわよ。

『聖』の修行が可能ならば『皇』の位には就けますもの。 世の中には位を嫌って隠遁している方々も居られますけど、それを含めても世界で五本の指に入るでしょうね。 おそらく、今空いている『皇』の位もあの方がお付きにならないから空位なのかもしれませんことよ」


「そう言えば蒼さん、今のも師匠の遺言があったから仕方なく引き受けたって言っていたもんな。そういうの嫌がる人だし、断るかもね」 歩が納得したようにうなずく。


「ありそうな話だな。それより宝石屋、おまえやけに蒼さんの肩持つじゃねぇか。

まさか惚れてるなんていわねぇよな」  朗が訝しげにマチルダを見る。


「こう見えてわたくしは、あの方を尊敬していますのよ。人間にしておくのは惜しい方だと常々思っていますの。ですが恋心は別物ですわ。わたくしが愛して止まないのは、可憐で健気なレディたちですわ。私の心は全て世の中のレディのためにありますのよ。 その中でも一番身近にいるレディは特別でしてよ」


両手を胸で組み、愛し気に見つめられて幸羽は引きつった笑みを返す。

「えっと、その、ありがとうございます」


「やめなよ。幸羽ちゃんが梅干食べたみたいな顔してるじゃないか」 苦笑いを浮かべて歩が言う。


「まぁ、失礼ね 」 マチルダがすねたように頬を膨らませた。


(同じ顔でも女の姿だからこのしぐさもまだ許せるけど、男のほうだったら…… 不気味すぎるわ)

こっそりとそんなことを思う幸羽だった。








閑話、入れてみたかったんです。話が進まないから逃避しているわけではない。たぶん…

1としましたが次があるかは分かりません。

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