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第1話 テンプレ冒険者

朝方になって宿から男が出て来た。


男は20代後半位で冒険者風のラフな恰好だった。


後ろから2人の女が慌てて追いかける。


「リアム様ぁ~置いてかないでぇ」


「酷いよリアムぅ~あれだけしたのにぃ」


2人はリアムと呼ばれた黒髪の男に追いつくと両サイドから腕を絡めて肩に頭を預けた。


リアムはニヤつきながら平静を装った声を出す。


「まったく君達は人前だというのに参ったなぁ…」


周囲の眼も気にせずリアムは機嫌良く通りを練り歩く。


すれ違う人々はリアム達を見ると当たらないように避けて歩いていたが、20代らしい金髪の男が行く手を塞いで立っていた。


金髪の男は白いシャツに茶色のベストを着ておりズボンのポケットに手を入れてリアムに声を掛けて来た。


「よぉリアム、久しぶりぃ」


「えっと、誰かな?」


「アオルでーす、さっき宿で会ったじゃんか」


「あ…そうだ思い出した。少し宿で喋ったね、…それで何か僕に用でも?」


「いやぁ、リアムに女は似合わないと思って」


リアムが両腕に絡みついている2人の女の顔をチラリと見た。


女達はムッとした顔でアオルを睨んでいる。


「失礼ですぅっ」


「何なのアイツぅ?」


リアムは肩に寄り掛かった女達の頭にキスをしてなだめると、落ち着いた表情をアオルに向ける。


「フフフ、羨ましいかい?」


「いやチーレムなんて見てるだけでキツイっすよ」


「何だと?」


リアムが両腕に絡みついていた女を振りほどいて一歩前に出た。


「チートでイキってるだけの男に女なんか勿体ないって言ってんの」


「おいおいチートだなんて人聞きの悪いことを言わないでくれ、僕は努力で成り上がった冒険者だぞ」


「転生者っしょ?」


アオルの言葉にリアムが反応し顔をしかめた。


「…お前は何者だ?」


「何で聞いてくんのかなぁ、チート使えば?」


「僕は転生者じゃないよ」


「いや転生者丸出しじゃん」


アオルがそう言ってリアムの女2人を指差す。


「何を言ってるんだ!彼女たちも僕も転生者じゃない!それ以上訳の分からない事をほざくなら侮辱罪で正当処罰するぞ!」


リアムが何も無い空間から見事な両刃の剣を取り出し構えた。


「転生者ってすぐキレるし暴力で解決しようとするんだよなぁ、知能の低いモンスターと一緒だよね」


「忠告はしたぞ」


リアムが地面を蹴った。


目にもとまらぬ速さで一気にアオルとの距離を詰め全力で剣を振り降ろす。


「グッ、くそっ」


リアムは額に汗を浮かべ、身体はピタリと止ってしまった。


剣の刃はアオルに片手で掴まれてビクともしなかった。


「どうした、得意のチートを使えよ、周囲の眼なんて気にしてる場合じゃないだろ」


リアムがチラリと後ろを見た。


「そんな、リアム様…」


「どうしちゃったのリアムぅ…」


女2人が信じられない気持ちを表情に出してリアムを見ている。


アオルが少し力を加えると金属が断裂する音がして剣の刃が折れた。


リアムは剣の柄を捨て、両手の掌をアオルに向ける。


瞬時に白い光の文字がサークル状に浮かび上がり、青白い光線を発射した。


眩い光が周囲を覆いアオルに光線が激突するかに思われたが、アオルが人差し指一本で受け流し、光線は上空へと消えていった。


「有り得ないだろっ、お前の方こそ転生者じゃないのか!?」


恐怖で表情が歪むリアムにアオルが答える。


「お前と一緒にするな、俺は調停官だ」


「くそがぁあ」


リアムはそれを聞いた瞬間に猛スピードで逃走を開始した。


「遅ぇなぁ、ちゃんと足二本あります?」


逃げた先にアオルが居た。


リアムは慌ててターンしようとしたがいつの間にかアオルに左手首を掴まれていた。


「ちぃッ」


リアムが必死にアオルの手を攻撃するが何をしても無駄だった。


「観念しなよチーレム転生者」


「…僕をどうする気だ?」


「チート持ってるのに知らないの?」


「情報収集スキルは持ってない」


「転生者はひっ捕らえて地球に送還するルールだから、これ俺達と地球側の要望ね」


「何で地球の連中がそんなこと…」


「異世界転生出来ると知って自殺者爆増しちゃったのよ、こっちも転生者のチートに迷惑してるし」


「お前もチートスキルあるだろ」


「無いね、調停官になると転生者への特攻スキル習得するだけ」


「じゃあなんで僕が転生者だって分かったんだよ」


「だってお前ロリコンじゃん」


そう言ってアオルは遠くに居る2人の美少女を指差したのだった。


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