前へ目次 次へ PR 80/84 096⚫️面会希望 ’ユキカゼ’が帰還した。 その勇姿を、岸壁の片隅から一人の男がじっと見つめている。 肺を焼く酸の大気の中、呼吸マスクさえ着けず。 ただ静かに、すべてを包み込むような、柔らかな微笑みを浮かべて。 その傍らには、寄り添うように一人の女性が立っていた。 荒ぶる風に吹かれながらも、二人の周囲だけは凪のように穏やかだ。 彼らが会いたいと願う人物が いま、あの艦の中にいるのである。 「では、行きましょう、リノ。」 男は呟くように言うと、歩き始めた。