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092⚫️国と国民の関係を時代劇で 「おみつのジレンマ」
薄暗い長屋の隅で、おみつは震える手で空に近い財布を見つめていた。
お父っつあんの酒量は一向に減らない。
「お父っつあん、もう借金はやめてよ・・・」
泣いて言ってみたところで、事態はそう単純ではなかった。
お父っつあんが積み上げた借金は、
彼女が病に倒れた時の薬代でもあり、毎月の家賃であり、
雨漏りする屋根の普請代でもあるのだ。
おみつ自身もまた、その借金がもたらした「温もり」に縋って
今日まで露命を繋いできている。
借金なしでは、明日の暮らしすら立ち行かない。
かといって、このままの生活を続ければ、
いずれ生まれる我が子の代まで積り積もった借金が負の遺産となる。
それは火を見るより明らかだった。
「便利で豊かな今日」を手放す勇気はない。
だが、「絶望の明日」を招く心配も脳裏をかすめる。
手を拱いて、解決のための行動を先送りする「おみつのジレンマ」。
「日々のだらりとした豊かさ」に浸ることは、
重いツケに繋がろうとしていた。
この泥沼から抜け出すためには、
長屋の住人、江戸の八百八町、いや社会全体で、
一体どのような苦痛を分かち合わねばならないのだろうか。
おみつとその父親の現状維持は、取り敢えず続くのである。




