039⚫️命あずけます
「可変吸気ダクトを展開!」
「イエス、マム!」
光学迷彩が解かれる。
継ぎ目の無い艦側面に、細い線のようなスリットが次々と開いて行く。
風が吸い込まれ、内部で圧縮されていく低い唸りが艦内に伝わる。
「モード移行、準備完了!」
技術長のシロー・K・ユキムラの声が響く。
船体表面が、ふっと青白く光り始めた。
境界層プラズマ整流膜が展開され、
空気との摩擦を滑らせる薄い光の膜が艦を包む。
「慣性制御フィン、起動します!」
艦の重心が’ふわり’と変わった。
巨大なクジラが、羽根のように軽くなったかのようだ。
クルーたちは、重力が一瞬だけ揺らぐのを感じた。
「・・・飛ぶぞ。」
マチルダの低い声が、発令所の空気を引き締める。
次の瞬間・・・
ゴォォォォ・・・ッ・・・。
圧縮空気が後方へ噴射され、’ユキカゼ’の巨体が海面から浮き上がる。
海水が船底を離れ、白い飛沫が渦を巻く。
’ユキカゼ’が完全に海面を離れた瞬間、
プラズマ膜が陽を反射して青白い尾を引いた。
「急速上昇中。姿勢制御グリーン。」
大気を切る音はほとんどない。
ただ、軽やかに共鳴する音が、音楽のように船体を包む。
海から空へ。
まるで世界線そのものを乗り換えるように、静かに急上昇していく。
〈見えた!着艦する!〉バーバラの陽気な声が受信された。
「見えた!着艦する!」
「空中着艦なんて、無茶ですよ!・・・でも、やるんですよね?」
「おっ、ボビー、わかってきたじゃないか?いいねえ!じゃあ、目をつぶってろよ!」
「えっ、やっぱり!かなり危ないんじゃないですか?」
「もちろん、着艦なんて、はじめてだあ!命はあずかったぁ〜!超、おもしろい〜!」




