036⚫️空気を読む
「撃てえ!」
めずらしくマチルダが大声をあげた。
’見えない艦’の甲板の射出孔が開き、
シュルシュルと音を立てて空へ舞い上がるもの・・花火だ。
青空に、美しい幾何模様がぱあっと広がる。
赤、青、黄色・・・海面にも色が映える。
だが、普通の潜水艦にとって、それは’魔法の一撃’だった。
「提督!機関停止!電磁パルスを受けた模様!」
「進めません!潜れません!魚雷も撃てませ〜ん!」
「艦内空調もダウン!ハッチを開放しなければ二酸化炭素濃度が限界に達します!」
「くっ、何をされた?!・・・あの花火か!だからチップはいいのを入れろと何度も上に言ったんだ、ワシは!通信はどうだ?!」
「大丈夫です提督!この設備は真空管仕様ですから!」
「真空管?我が軍はそこまで予算がないのかあ?!」
「提督!五隻の僚艦から入電!’ワレ、イマダ健在ナリ!’」
「再使用の旧型タイプです!チップではなく真空管搭載艦です!」
「よーし!五隻に指令だ!ありったけの魚雷をお見舞いしてやれ、と!」
「しかし提督、どこに撃ちます? 目標が見えません!」
「だから、だいたい、あのへんだ!あのへん!」
「提督から指令!’アノヘンヲ撃テ!’です!」
「艦長、どうします? あのへんって、どのへんでしょう?」
「うーん、命令だからな。しょうがない。闇夜の魚雷も数撃ちゃ当たる。だいたいでいいから撃ちまくれ! こらあ!マニュアル読んでないで、空気を読め!」
‘モービィーディック号’が魚雷を発射した。




