魔導書との異常
「ちょっとこれは不幸とかそういう話じゃないわよ! 因果律無視とかどうゆうことよ、『胎児の唄』!」
ライラが『胎児の唄』と呼ばれた黄髪の女性にまくし立てる。
「見てのとおりだよー。私の能力は『狂乱』なのは二人とも知ってるでしょ? それをうまいこと活用すればご覧のとおり魔導書が何人いても無問題!」
彼女は軽い口調でライラに返す。
「それもそうだけど、早くライムを開放しろなんだよ。これ以上私を怒らせるななの……」
グースは心配そうに虚ろな目をした蒼髪の少女を一瞥した後、恐ろしい形相で軽い口調の女性をにらみながら言う。
そんな中僕は何となく、黄髪の女性が元凶でライムと呼ばれている蒼髪の少女は一種の洗脳状態にあるんだろうなぁなどと暢気に考察していた。
「若葉、『子守唄』こうなったらさっさと武力行使で『胎児の唄』を壊すわよ」
「言われなくてもなんだよ…… ライムちゃんを返せなの、この外道!」
二人が意気揚々と戦闘態勢に移行する。
「え、あぁ、ゴーレムはいるかい?」
僕もあわてて戦闘を行うため、ライラに尋ねる。
「火ーちゃんを呼ぶ暇はなさそうだし、私は火ーちゃんの能力を使わせてもらうから、若葉はゴーレムで守備よろしく。猟犬で細かいダメージ入れるから『子守唄』はデカいのお見舞いしてやりなさい!」
「了解したよ」「オッケーなんだよ!」
そういって僕らは各々準備を始める。
「んー、そっちの準備は終わったぁ? まぁ、読み手も『わらべ唄』もついている私に勝てっこないのにねー」
妙に間延びした口調で、嗤いながら黄髪の女性が蒼い髪の少女に向かって指を振る。
「アァァァアア、姉さま、姉さまネエサマネエサマネエサマネエサマ」
その瞬間、少女は頭をカクンカクンと揺らしながら、涎を垂れ流してブツブツと呟き始めた。
「あ、すっかり忘れてたけど、武人はどうする? 魔導書はあなたの相手にはならないけど」
黄髪の女性は蒼い髪の少女の状態を見て満足した後、青年に話しかける。
「大丈夫ですよ、あちらの地味な男は人間なんでしょう? あの方に僕のお相手になってもらいますよ」
ただでさえ細い糸目をさらに細めて彼はそうつぶやく。
「若葉、何ぼーっとしてるの? 今のうちに詠唱始めるわよ!」
ライラが僕に耳打ちしてくる。
いけない、気を引き締めねば……
「う、うん。動け動け土塊よ。人々守る時来たれり。振るえ振るえその力。災い壊す時来たれり。今こそ全てを守り抜け。集え(サモン)泥人形」
「さぁさぁ、ともに歌いましょう? 唄は貴方の目の前にあるのだから。声を枯らしても、血を吐いても、喉が焼き付いても歌い続けましょう? ステージは貴方の目の前にあるのだから。 叶え、童たちの願いよ!」
「鋭角に囲まれし境界より出でて祝福を届ける者どもよ。我は汝らが進むべきを道を作らん。曲線に阻まれし哀れな忠犬どもよ。我は汝らが待望せし門を開かん。今こそ不条理を噛み殺せ。疾駆せよ(スプリント)勤勉なる猟犬ども(ティンダロス)」
3つの詠唱が終わり、住宅街の生活道路に猟犬と重機関銃が3つずつ現れた。
その背後にはゴーレムが一体鎮座している。
そんな光景を見た黄髪の女性は暢気に大胆に不敵に露骨に嗤いながら言う。
「これだけ魔導書の能力で出来たものが並ぶと圧巻だねー せっかくだから、『わらべ唄』も詠唱しとこうか!」
そう言って彼女がもう一度指を振ると、蒼い髪の少女は揺れている頭が止め、別の言葉を呟きだす。
「どうかとどまれ、世にあふれる無数の唄よ。どうか遺れ、世に伝わる数多の唄よ」
それを見たライラとグースが一斉に攻撃を仕掛ける。
「さっさとケリつけるわよ!」
「塵芥にしてやるんだよ…… ブローニング撃てぇぇぇぇ!」
二人の号令とともに、黄髪の女性に弾丸の雨と三匹の猟犬が襲いかかる。
「おお、怖い怖い。今宵開けや禁忌の箱を」
弾丸と猟犬が襲いかかる前に彼女が肩を狭めながら、飄々とつぶやく。
すると、一直線に彼女めがけて進んでいた弾丸と猟犬が速度を落として右へ左へ逸れていく。
開いた口が塞がらないというのはこういう時のためにあるのだろう。
「もうおしまいかなぁ? じゃあ、『わらべ唄』派手に続きをLet's go!」
黄髪の女性が軽い口調で『わらべ唄』と呼ばれた蒼い髪の少女に指示する。
「それが叶わぬ願いならば、時をとどめてしまおうか。止まれ時計の針よ詩とともに」




