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エピローグ

「ねぇ、州。あのときの宿題、憶えてる?」

「あのときってあれか。同じ木から実ったいちご、だっけ」


 よく考えれば、いちごは木からならないんだよな。


「そう。私の言いたいこと。わかった?」

「う~ん。わからん。降参だ。教えてくれ」


 あれから、数週間。俺と新樹の関係は、相も変わらず平坦としている。新樹はあれから、現実味のある夢を無事に見なくなったらしい。

今日は行きつけにもなりつつある、木曜日にしか来ないクレープ屋さんでクレープを買って、ベンチに腰かけて話をしていた。

 リラは例のごとく、クレープを買って、俺の部屋で味わっている。


「もー。もう少し真剣に考えてよ」

「そんなこと言われてもな……」


 新樹はやはり新樹で。茶髪のショートボブ。ぱっちりとした目。端整な顔立ちと言えよう、その顔が笑みに変わった瞬間は、どんな人であろうと一瞬で虜になる。

まさに新樹を象徴したような白い靄のようなオーラがかかっていて、『呑気』をそのまま表していた。

 でも俺は、こう呼んでいる。


「幸せか、新樹」

「急にどうしたの? んー、うん。幸せだよ。州といれて」


 新樹は、考えつつも笑顔で答える。それに少し戸惑ってしまった。


「答えは、同じ木でもね。ひとつの種から成長した木って、考えちゃあダメなんだよ。これはね。いろんな解釈があるんだ。これは私なりに州に言った解釈のひとつ。それが――」


 新樹はクレープを食べ終わり、口元を拭うと、俺の前に立った。


「同じ木から実ったとしたら、それはもちろん州のいう『双子』の解釈でいいんだよ。でもね。私は違ったんだ。たとえ、同じ木から生ったとしても、一年まてば、それは別人になっちゃうんじゃないかなって。どう、この解釈」


 とんだ無理強いのある解釈だった。それでも俺は、納得しまう。新樹らしいから。


「いいんじゃないか」


 俺は、クレープをかじる。


「あ、ほっぺにクリームついたよ。拭いてあげる。ほら、こっち向いてぇ」


 ハンカチを取りだして、俺の頬に付着したクリームを拭い取る。

 クリームを取り終わり、よし、とハンカチをしまった。

 上空を見上げる新樹が、控えるような声で俺に、


「ねえ、州。もうすぐ、夏が終わって、秋が到来するね」

「なんだ。自分の名前にかけてるのか」

「いいね。秋と新樹、何度だって、私の季節が来るよ」


 歩いていく新樹を、俺は目で追う。

 新樹は、とことこ五歩ほど進んで背中に手を回した。くるりと振り返り、前かがみで恥ずかしそうに、頬を赤らめた表情で、


「私ね。州に、伝えたいことがあるんだ。私、州のこと――」



     ☆



「それって私、すごくあんしんできるってことだよ! それで――州くんがおちこんでいる私にこう言うの。『ぼくがそばにいてやる』って。どお?」

「なんだそれ。ぼくはシンデレラのおうじさまかなにかか?」


 ――こうして、ぼくと色海新樹は、


「ともだち」になった――。



                                                おわり


完結です。

物語として、完璧な終わりじゃないのがダメなんでしょうね。僕個人の感想を述べさせてもらえるとすれば、考えの末に思い描いたエンドなのでこれ以上も以下もない感じです。

さて。

ここまで読んでくださった方皆様に感謝の言葉を。

感想や評価、なんでも思ったこと教えてください。

「これ言ってもいいのかな」と我慢せず、直球でかまいません。言葉をください。お願いします。

それでは、ありがとうございました。


友城にい

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