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偶然にも俺の思想と新樹の疑問が重なる。新樹は継ぎ足して、
「おこがましいかもしれないけど……真相を知る権利が、少なくともいづみちゃんにはあるはずだよ」
しおらしくあり、力強さを感じる。オーラを見なくともわかった。
「手がかりにつながるか不明瞭だが、気がかりに思ってることがあるんだ」
俺は新樹に、久三野は興奮状態になると、真ピンクのオーラになることを冒頭に。一度変わると歯止めが利かなくなるほどの威力を、閉じこもらせていることを伝えた。
「その事件と久三野の精神の暴走が、まったくの無関係とは俺は思えないんだ」
上原さんに危害や刺激が加わろうとすると、久三野のオーラに変化が表れる。俺が上原さんと接近しているだけで、鬼の形相を浮かべていた。
きっとあれには、「引き金」が存在していて、あの日もなにかしらの反動で、「引き金」が作動したんだ。
あくまで持論でしかない。そこに根拠も、証拠さえない。俺の勝手なこじつけだ。
そこに新樹が、「私は、そうは思わないよ」と口にする。
まるで俺の幻想が孕んだ思考回路は、忌むもので、しかるべき報いを受ける手筈だったのを、すんでのところで止められたようだった。
「私、引っかかるんだ。久三野くんのお母さんが亡くなった、というところが。もし仮に州の言うように『精神的』な抑制が利かなくなったとしても、いづみちゃんの話を聞くかぎりじゃ、久三野くんはそんな人に思えないんだよね」
じつに新樹らしい思想で、理想論だった。後ろに手をついて、俺に首を傾げながら、「違うかな?」と微笑む。
さらに新樹は続けた。
「もし私のお母さんやお父さん、もちろん州やコウもだけど、身近な人が死んじゃったら悲しいし、自暴自棄になるかも。久三野くんが同じかどうかわからないけど、絶対、いづみちゃんを傷つけるつもりはなかったはずだよ」
木っ端微塵の完敗だった。新樹の言葉に、俺はなにも訊き返さず、押し黙ってしまった。唯一、「そうだ」と口から飛びでてきた。思いだしたように俺は、ポケットから一枚の紙切れを新樹に差しだす。「はいこれ」
「なにこれ?」
「上原さんから預かったんだ。多分、メアドと電話番号だと思うけど、新樹と話したいって言ってた」
俺が渡すと、紙切れを広げた。中身を読んで、新樹は少しはにかみながら、「なんだろ。楽しみだなぁ」と自分の携帯を取りだした。
「そこで、頼むがある」
懐につけこむわけじゃないが、俺にはひとつある考えがあった。
「もちろんいいけど、なに?」
「上原さんに明日、十三時に学校付近の広場に来てほしいんだ。できれば――あのときの格好で」
「なんで? 州のことだから、考えがあっての頼みだとは、わかってるんだけど」
「明日、久三野とケンカする」
そう伝えると、新樹は飛びつくように俺にのしかかってきた。
「なんで!? なんで……なんで、州が久三野くんと…………」
さっき聞いた「なんで」とどうしてこうも、意味に違いがあるのだろう。新樹は、俺に詰め寄ったのはいいものの、なんで、以外の質問が浮かばなかったようだ。
「久三野と上原さんを鉢合わせるためだ。こうでもしないと二人は永遠に、わだかまりを抱えたまま、時が流れる……そう思わざるを得なかったんだ。いいんだよ、俺が一人犠牲になって、『きっかけ』を作ることができるのなら、こんなにもおいしい立場はない」
「…………。うん。わかった。私からいづみちゃんに伝えておくよ。でも……」
「でも?」
「いや、なんでもないよ。さて、そろそろ遅いし、お開きにしようかな」
新樹は、立ち上がって、思いっきり背伸びをする。へそが見えて、俺はどぎまぎしてしまう。
「じゃあ、俺も帰るよ」
「うん。また明日ね」
「ああ」
手を振って、さよなら。門から出て、俺も明日を確立させるため、ある人にお願いの電話をする。
『あ、州。こんな遅い時間になに?』
「コウ、ちょっとな。頼まれ事があるんだけど、いいか?」
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次回、ついに州が二人の結末に動きだします。
友城にい




