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天狐の目覚め

 クロの毛並みを撫でながら堪能しているとフランに声をかけられた。


「ラスティー、その子飼うつもりなの?」


「ん?勿論そのつもりだぞ」


 ラスティーは何を当たり前な事をと即答した。


「その子魔獣よ」


「魔獣?何だそれ魔物と違うのか?」


【魔獣】通常の魔物と違い、魔力を持ち魔法を操る存在。人間のように詠唱が必要なく魔法名のみの言霊で魔法を発現出来る、非常に強い個体で、希少性の高さから幻想種に数えられる。


 と、フランはラスティーに説明した。


「ふ~ん、クロお前珍しいやつだったんだな」


 ラスティーはクロを抱き上げてクロを見た。


「そう言われても私自分の事よく知らないし」


 クロは少し困惑していた。


「で?魔獣だと、何か問題があるのか?」


 ラスティーの質問にフランは呆れた顔をした。


「貴方ねぇ、魔物を街で飼うのも問題なのに魔獣よ!」


「そんな事言ったって、こんなに可愛くて、喋れる賢いやつだぞ」


「それは何故か今貴方に凄い懐いてるからでしょ!出会った時はいきなり襲われたでしょ!忘れたの?」


 フランはラスティーの呑気さにイライラしていた。


「どうしたフラン?プリプリ怒って、カルシウムが足りないのか?」


 ラスティーの見当違いの言葉にフランの怒りが増す。


「誰のせいよ!誰の!貴方がさっきまで戦ってた相手に飼うだの何だの言って和んでるからでしょ!」


「‥‥済まん‥‥つい念願のペットが飼えると思って」


 ラスティーが素直に謝るとフランは溜め息をついた。


「はぁ、どうするのよ名前までつけちゃって街で飼うのは難しいわよ」


「‥‥‥どうしても無理なのか?」


 ラスティーとクロが不安そうにフランを見る。


「どうしてもって言われてもねぇ、マリー何か良い方法ある?」


 ラスティーとクロの視線がマリーに集まる。


「‥‥そうですねぇ、従魔登録するしかないと思いますが」


「従魔登録?」


「はい、奴隷の魔物版ですね。従魔登録すれば主に逆らえませんから危険生物扱いはされない筈です。魔獣と従魔登録する事は異例でしょうけど」


 マリーが従魔登録を進言するとラスティーは渋い顔をした。


「従魔登録かぁ‥‥なあクロ俺と従魔の誓い出来るか?そうすると俺の命令に逆らえなくなっちゃうんだってさ」


 クロがラスティーを見上げると口を開いた。


「酷いこと言わない?」


「勿論!というかクロに命令なんてしないよ、だけどもし万が一俺が命令したらそれに逆らえなくなるんだよ。クロは俺が信じられるか?」


 クロはラスティーをじっと見つめる。


「‥‥‥うん!信じる!」


「そっか!良し!気は進まないが従魔登録しよう。いや~危なく街に住めなくなるとこだったな」


『そこまでして飼うつもりだったの?』


「ん?そりゃ名前までつけたんだから当然だろ」


『え~、その場合私達は?』


「お前らは街に住めば良いだろ、俺がクロを飼いたいのにお前らを付き合わせるつもりはないよ」


 ラスティーがそう言うとリースが口を挟んだ。


「何言ってるのよ!ラスティーが居るところが私の居るところなんだから私もついていくわよ!」


「お、おう」


「それで、クロの事はいいとして、天狐はどうするのよ」


 フランに言われ、今だ目を覚まさず地に横たわる天狐に目をやる。


(そうだった肝心のあの人の事を忘れていた)


「ラスティー説明して、貴方の様子がおかしかったのはクロの幻術だけじゃ無いんでしょ、貴方は天狐の姿を見ておかしくなった」


「まあな、いずれにしても天狐が目を覚まさないと俺にも説明出来ないな」


 ラスティーが横たわる天狐の直ぐ近くに腰をおろし、心配そうに見つめると天狐は、目を覚ました。


「起きたか、話をききっ!」


 ラスティーが目を覚ました天狐に話しかけると、言葉の途中で天狐は、ラスティーに手を伸ばし、ラスティーの頬を慈しむ様に撫でた。


「なっ!何を‥‥んぐっ!」


 困惑するラスティーを天狐は引き寄せ、その豊満な胸に顔を押し付け抱きしめた。ラスティーを含め皆、呆気にとられて言葉も出なかった。


「懐かしい、人の子よ。貴方はあまりにも懐かしいあの子に似ています。その魔力はまるであの子の成長した姿のよう」


 天狐の美しくも優しい声が響いた。


 漸く抱きしめから解放されたラスティーは少し顔を赤くして、息を整えた。


「懐かしいか、それは一体いつの事を言ってるんだ?」


 ラスティーがそう言うと天狐は、フッと笑みをこぼし語った。


「遠い遠い昔の事です、何せ私が産まれる前の事ですから」


 産まれる前と言われ、フラン達は意味が分からず困惑した。ラスティーを除いて。


「前世の記憶があるのか?」


「良く分かりましたね、人の子よ」


 天狐は、少し驚いた。


「質問していいか?」


「何です、答えられる事なら答えましょう」


 意を決してラスティーは質問した。


「‥‥‥ソニアと言う名前に心当たりはあるか?」


「!!‥‥何故貴方がその名前を知っているのですか?」


 ラスティーの質問に天狐は驚き、目を見開いた。


「その様子だと知ってるみたいだな」


「ええ、当然知っています。私の前世の‥‥この世界に来る前の私の名前ですから」


 それを聞いてラスティーは確信し、目を滲ませた。


「じゃあ‥‥ラスティーという名前は?」


「!!‥‥知っているに決まってるじゃないですか、私の前世の唯一の心残りにして最愛の息子の名前です。貴方は一体‥‥」


「そっか‥‥やっぱりか‥‥‥‥母さん」


「!!‥‥今何と言いましたか?母さん?」


 天狐は、困惑して理解が追い付かない。


「ああ、そう言ったよ」


「貴方は自身がラスティーだというのですか?」


「ああ、そうだよ」


 天狐は、ラスティーを見つめ、容姿、魔力、気の流れを見て最期は雰囲気から彼が、嘘をついてないことを納得してラスティーを抱きしめた。


「あぁ‥‥ラスティー!‥‥ラスティー!私の子。まさか転生してこんなに時が経つのに最愛の息子のにまた出会えるなんて奇跡です」


 天狐は、抱きしめる力を強くする。


「く、苦しいよ母さん」


「ごめんなさい。あまりにも嬉しくて、あの人とは大違いね。やっぱり持つべきものは、息子だわ」


「あの人?」


「気にしなくて良いのよ、貴方の元父親の事ですから、どうでもいいことです」


(いや、結構気になる事なんだが!)


 ラスティーが気になって聞くと、天狐は然もどうでもいい話のように教えてくれた。何でも遥か昔、二人はこの世界に転生すると、母さんは天狐の幼体に、父さんは人間に転生したらしいんだが、成長した二人は出会い、母さんは父さんに気付き声をかけたが、父さんは記憶は曖昧で母さんの事を覚えておらず、冒険者をしていた父さんは、ハーレム王になることを夢見て生きている若者で、母さんの事もその豊満な胸を見て是非ハーレムに入れようとしたらしいんだが、怒った母さんに張り手をくらわされて、それきりらしい。風の噂でその若者は実力にそぐわない依頼を受けて若くして亡くなったそうだ。


(残念な人だと思っていたが、ここまで残念な人だとは‥‥)


「全く酷い話です。ラスティーもあの人の事は忘れなさい。‥‥おっといけませんね、今は何と言う名前何ですか?ラスティー」


「?‥‥どう言うこと?」


 ラスティーは天狐が何を言ってるのか分からなかった。


「ですから転生してこの世界に来たのなら今の貴方の名前があるでしょう?」


(ああ、そう言うことか、それで話が噛み合わなかったのか)


「母さん俺は転生してなんかいないよ」


「どう言うことですか?」


「そのままの意味さ、俺はこの世界に転移して来たんだ。だから勿論今も名前はラスティーだよ」


「うっ!嘘です!一体あれから‥‥あれからどれだけの時が経ったと思ってるんですか!千年ですよ!私が転生してから千年という長い年月が経っているんですよ!」


(千年も経ってたのか、よく俺の事を覚えていたな)


「この世界シリウスと俺達がいた×××は時の流れが違うんだよ、母さん、母さんにとって千年でも、俺にとっては十年の月日だよ」


 ラスティーが説明すると天狐は目に涙を滲ませていた。


「では‥‥では、貴方は転生したのではなく‥‥昔私がお腹を痛めて産んだあの子だというのね」


「そうだよ母さん」


 天狐は感極まって再びラスティーを抱きしめた。


「ラスティー!私のラスティー!あぁ!今一度あの子を抱き締める日が来るなんて、嬉しさでどうにかなりそうです」


「俺も嬉しいよ、まさか母さんにもう一度会えるなんて思わなかった」


 本当の事を言えばフランが転生して、この世界に来たと聞いた時に物凄く確率は低くてももしかしたら両親に会える可能性があるとは思っていた。しかし、時の流れが違うこの世界で出会える訳ないと諦めて考えないようにしていた。


「ラスティー、教えて下さい。私が死んでから十年でしたか?貴方がどう生きてきたのかを、それに貴方のその髪と目の色はどうしたんですか?」


 天狐の疑問は最もだ。ラスティーの髪と目は生前ソニアが知っている時と、違うのだから。


(そうだな昔を思い出すのが嫌で忘れていたな、説明するならそこからかな。この髪と目の事はフラン達も知らない)


「ああ、説明するよ。何があったのかを」





















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