リースの想い
女性陣の男嫌いは直ぐに治りそうもないし、依頼に精を出しますか。フランとマリーの首輪を外す金はまだまだ足りないからな。
「オッサンなんか、割りの良い依頼は無いか?」
「割りの良い依頼か?最近は無いな、お前さん別にそんなに稼がなくても金に困ってないだろ?」
オッサンが不思議そうに聞いてきた。
「ああ、確かに金に困っている訳じゃないんだが、目的の為に金を貯めてるんだよ」
「目的?なんだそりゃ?」
「別に秘密にしてる訳じゃないから言うけど、フランとマリーの隷属の首輪を外してやる約束をしているんだ。だから金が必要なんだよ」
そう言うとオッサンは驚いていた。
「ラスティー首輪を外す金がいくらするのか分かってるのか?大金だぞ」
「知ってるよ、一人あたり金板貨50枚だろ?」
「そうだぞ。二人なら100枚必要なんだぞ。そんな大金は貴族くらいしか用意出来ないぞ。大体今どのくらい貯めてるんだよ」
「今は金板貨20枚くらいだな」
「なっ!そんなに貯めてたのかよ!頑張ってるな。そういえばリース嬢ちゃんの首輪は外さなくて良いのか?」
「俺的には外してやりたいんだが、リース自身がこのままで良いって言うからな」
「そうなのか」
「ああ、ダークエルフが人の街で暮らすのは目立ち過ぎるってさ、奴隷なら珍しいけど、不思議じゃないからって」
「確かにそうだな。ダークエルフが人の街に住んでるのを見たこと無いからな。奴隷なら珍しいってくらいだな。しかし、本当に愛されてるなラスティー」
「何だよ急に?」
「だってそうだろ?普通首輪を外してくれるって奴がいたら迷わず外してもらうぞ」
「?・・・だから街で暮らすのに変に思われない様にするためだろ?」
オッサンが何が言いたいのか分からなかった。
「何だ、ラスティー気づいてないのか?周りから奴隷と見られても構わないからお前と一緒に居たいとリース嬢ちゃんから想われてるんだぞ」
「・・・あっ!」
オッサンが何が言いたいのか漸く分かった。最近はリースがぐいぐいアピールしてくるからそれが普通になっていたが、そうだよな周囲から奴隷と見られてもいいから俺と一緒に居たいと言ってくれたんだよな。俺は胸が暖かくなった。
「やっぱり気づいてなかったんだな。全くこんなに美人から想われてるんだから応えてやれよなラスティー」
オッサンがそう言うと聞いていたリースが俺の腕に抱きついてきた。
「もっと言ってあげてシュナイダーさん」
リースがニッコリ笑ってそう言った。
最近リースは人目も憚らず抱きついてくる。嬉しい事だが人前では恥ずかしい。
「・・・シュナイダー?何の事だ?」
シュナイダーが何の事か分からずリースに聞いてしまった。
「ん?ラスティーがいつもオッサン呼ばわりしてる人の事じゃない」
「・・・えっ・・」
オッサンの名前がシュナイダー?・・・嘘だろ!毎日酒飲んでいて、禿げてるこのオッサンがシュナイダー!
「オッサンそんなカッコいい名前だったのか?」
「何だよラスティー、お前俺の名前覚えてなかったのかよ。初めて会った時、ちゃんと自己紹介しただろ」
確かに自己紹介した様な気はするが、あの時は復讐に失敗してシリウスに来て直ぐの頃だから人の言葉なんか、右から左に聞き流していたからちゃんと覚えていない。
「すまん、覚えてなかったよ」
俺は正直に答えた。
「まあ、あの頃のお前の様子はおかしかったからな、それでも名前くらい覚えてろよな」
ああ、忘れないよ。見た目と名前がこんなに合ってない人は初めてだからな。
「シュナイダーさんラスティーの様子がおかしかったってどういう事?」
「うん?それはなリース嬢ちゃん、出会ったばかりの頃のラスティーはな、生きることがどうでもいいっつうか、自暴自棄だったんだよ」
「ああ、そう言う事ね」
リースは俺がシリウスに来た理由を知っているから何となくどういう状態だったのか想像出来たのだろう。
「リース嬢ちゃんは理由を知ってるのか?」
「ええ、ちょっとね」
「そうか、ラスティーがまともになったのは、フラン嬢ちゃん達を連れてきた辺りだな」
そうだな。それまでの2ヶ月は本当にどうでも良かったからな。あの二人を助けるって目的が出来てからだな、まともに生きる事を考え始めたのは。
俺とリースはオッサンもといシュナイダーと別れた。勿論呼び方は変えていない、いつも通りオッサンのままだ。
「結局割りの良い依頼は出されてなかったな」
「急いでも仕方ない事だわ、まあ私はフラン達が首輪を外せば、ラスティーの奴隷は私が唯一になるから少し嬉しいけどね」
俺の奴隷であることを喜ぶのはちょっと違う気がするんだがな。
「前から聞きたかったんだがリース、俺なんかの何処が良いんだ?俺はお前の様な美人に想ってもらう様なまともな人間じゃないぞ」
「何処って全部よ!」
「全部って言ってもな、俺は学はないし、物事は大体拳で解決するような奴だぞ」
「ラスティーは私の恩人だわ!」
「それはそうだが、時期が違えばリースを助けなかったかも知れない人間だぞ。ただ恩人だからって理由なら止めとけ」
そうだ、フラン達を助ける前だったら、リースを助けなかったかも知れない、いや助けない可能性の方が高かっただろう。
「それでも貴方は私を助けてくれた!貴方のお蔭で今も生きてる!それに母さんの仇もとって、ううん仇を私にとらせてくれた!こんな首輪をしてても何不自由なく暮らせているのは貴方だからよラスティー!最初は少し怖かった」
「怖かった?」
「そう。誰かの奴隷になるのが少し怖かったの。フランやマリーは酷い扱いを受けていなそうだったけど、それでも奴隷として何か命令されるんじゃないか、無理矢理エッチな事されるじゃないかって少し怖かったの。でも貴方はエッチな事は勿論、命令一つして来なかった。それだけじゃない、私のお願いやしたいことを何でも聞いてくれた。凄く優しくて私はラスティーの事どんどん好きになったわ。それが理由じゃいけない?」
「いけなくは無いが、俺は全うな人生を送って来ていない。そんな人間を好きになっても幸せには成れないかも知れないぞ」
俺は家族を殺した奴等を殺す為だけに生きてきた様な人間だ。
「今貴方と居ることが私の幸せなのよ。確かに他の人から見れば私は助けてくれた人を好きになったチョロい女に見えるかも知れない!でもそれはいけない事?ダークエルフが人間に恋するのはいけない事?」
「そんな事は・・・」
「私は・・・私はラスティーの言うことなら何でも聞いて応えてあげるつもり・・・だけど!私のこの想いだけは否定させない!」
リースは涙を流して想いを告げた。その姿を見た俺はなんて馬鹿な事を言ったんだろうと後悔した。
泣いてるリースを優しく抱き締めた。
「悪かった、ごめんよリース、リースの想いを踏みにじる様な事を言って」
暫くするとリースは泣き止んでくれた。ギルドの冒険者から見られていたが、俺が悪いんだから仕方ない。
「女の子を泣かすなんて最低よラスティー」
「流石にラスティーさんが悪いですよ」
フランとマリーに怒られた。
そうだな、こんな俺を好いてくれている子の想いを否定しようとするなんて馬鹿な事をしたな。その日は依頼を受けれるような状態ではなかったので家に帰り頭を冷やす事にした。




